ダイバーシティセンター

下地ローレンス吉孝氏講演会「人種・身体性・『日本人』-『混血』『ハーフ』の社会史から」が開催されました

2019年07月23日

講師の下地ローレンス吉孝氏

 2019年7月9日(火)5限に、多摩キャンパス5号館5201教室で、下地ローレンス吉孝氏の講演会「人種・身体性・『日本人』-『混血』『ハーフ』の社会史から」が開催されました。

 この講演会は、総合政策学部准教授の横山陸が担当する「特殊講義(倫理学)」の授業の一環として行われたもので、本学のダイバーシティ推進の取り組みとも深く関わるテーマを取り上げています。当日は通常の受講生以外にも学内外から参加者が集まり、60名を超える聴衆が熱心に講義に耳を傾けました。

 下地氏は、2018年に出版された著書『「混血」と「日本人」-ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』(青土社)をはじめ、戦後日本社会の「混血」「ハーフ」言説についての研究をされている社会学者です。

 講演は、統計に基づく日本社会における「外国人」人口の推移の紹介と、「国際児」に関するデータ不足の指摘から始まり、そこから氏の研究の核となる「日本人」「外国人」概念の複雑さと問題性が示されました。続いて、日本の戦後社会における「混血」「ハーフ」の社会史をたどることで、現在私たちの社会に流通している「ハーフ」のイメージが作られてきた過程と、その底流として存在し続ける「単一人種」の観念についての説明がありました。

 こうした理論的な枠組への理解を促した上で、下地氏がこれまで取り組んできた「ハーフ」の人々へのインタビューから、現在の日本における「ハーフ」の日常について、様々な具体的な事例が紹介されました。繰り返し「日本人ではない」と見なされて不躾な質問を浴びせられることや、警察の職務質問のターゲットにされることなど、多くの「ハーフ」の人たちが、共通する経験を語っています。

 日本社会が生み出す「ハーフ」の社会的困難は、今までの社会史と、社会制度や人々の思考の枠組と深く結びついています。「多様性」を「これから実現するもの」ではなく「すでにあるけれども、気づかれていないもの」として捉え、ジェンダー・セクシュアリティや障がいなどの領域とも交差させながら、「他者」への想像力を養うこと。本来は「すでに・常に」多様であり続けてきた日本社会を生きる私たち一人一人が、「日本人とは?」「日本社会とは?」と考え続けることが大切であるというメッセージでご講演が結ばれました。

 講演後の質疑応答では、学生からたくさんの質問の手が上がり、日本と海外の状況の比較を問う質問や、身体の美の規範に関するもの、スポーツと人種など、多岐にわたる質問に直接お答えいただく貴重な学びの機会となりました。