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広い領域の動きを知覚する能力は発達にしたがって低下する --視覚の抑制メカニズムの発達過程を解明

2019年09月06日

概 要


 私たち大人では、広い領域の動きの方が、狭い領域の動きよりも知覚し難いことが知られています(図1参照)。一見直観に反するかもしれませんが、これは周辺抑制※1という視覚神経細胞が持つ抑制メカニズムを反映した知覚現象であると考えられています。一方、この抑制機能は老化によって低下するため、その結果、高齢者では、広い領域の動きを若年者よりもむしろよく知覚できることが知られています。
 
 今回、中央大学の中島悠介機構助教、山口真美教授と日本女子大学の金沢創教授は、乳児においてこの現象を調べ、生後6ヶ月未満の小さい赤ちゃんでは、老人と同じように、広い領域の動きを知覚するのが得意であることを明らかにしました。そして、生後6ヶ月以降になるとこの能力が失われ、成人と同じように、狭い領域の動きの知覚が得意になっていくことがわかりました。この結果は、周辺抑制の神経メカニズムが生後6ヶ月頃に獲得されることを示しており、これまで知られていなかった視覚抑制メカニズムの初期発達過程が明らかになりました。
 
 周辺抑制の機能は、自閉症患者においても低下していることが示されており、本研究の知見は、発達、老化に加えて、自閉症の脳の発達メカニズムの新たな側面の解明につながることが期待されます。
 
 本研究成果は、2019年9月5日に、米国科学雑誌『Current Biology』に掲載されました(日本時間9月6日オンライン版掲載)。

【研究者】
中島 悠介    中央大学研究開発機構 機構助教・日本学術振興会 特別研究員PD
山口 真美    中央大学文学部 心理学専攻 教授
金沢 創     日本女子大学人間社会学部 心理学科 教授

【発表雑誌】 
Current Biology<論文タイトル> Development of center-surround suppression in infant motion processing
<著者> Yusuke Nakashima, Masami K. Yamaguchi, & So Kanazawa

【研究内容】以下のPDFよりご確認いただけます

      プレスリリース全文

<研究に関するお問合せ>
中島 悠介(ナカシマ ユウスケ) 
中央大学研究開発機構 機構助教・日本学術振興会 特別研究員PD
TEL / FAX: 042-674-3843
E-mail: ynakashima214◎gmail.com (◎を@にかえて送信してください。)

<広報に関するお問合せ>
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