広報・広聴活動
中央大学文学研究科博士後期課程・飯村周平の共同研究の成果「「高1クライシス」のもう一つの側面―高校移行期に生じる生徒のポジティブな発達的変化―」が
研究雑誌「Journal of Youth and Adolescence」に掲載されます
2018年02月16日
中央大学文学研究科博士後期課程に在籍する飯村周平(日本学術振興会特別研究員,文学部教授・都筑学研究室所属)と米国オークランド大学・宅香菜子Associate Professorとの共同研究の成果が、思春期・青年期の発達心理学領域において影響力の高い研究雑誌「Journal of Youth and Adolescence」に掲載される予定です。また、オンライン版では2月14日付で公開されました。
共同研究の概要
高校進学にともなう環境変化などによって、不安や抑うつの増加といった心理適応上の問題が生じる生徒がいます。この問題は「高1クライシス」と呼ばれることがあり、本邦の教育政策は中学校卒業から高校入学のギャップを少なくするよう中高一貫校の設置を推進しています。しかし、新しい学校環境への適応が求められる高校移行期は、生徒の発達にとって本当にネガティブな時期なのでしょうか?
本研究では、高校移行期での心理的奮闘をとおして、中学校のときよりも良好な対人関係を築いたり、ストレスに対処する内面の強さを獲得したり、将来の展望をよりはっきり見出したりするようなポジティブな発達(成長)を遂げる生徒の特徴を明らかにしました。
縦断データの分析結果から、ポジティブな発達を遂げた生徒は、高校移行期の5月において、①高校進学に関連したネガティブな思考が生じている、②高校進学が自分にどのような意味があるかなどの建設的な思考が生じている、③周りの人からサポートが得られると実感している、といった特徴が確認されました。また、ポジティブな発達には、2つの側面―進学経験をふり返り自身の成長を知覚する側面(知覚された成長)と進学前後での実際の変化としての側面(実際の成長)―があり、本研究の結果から、高校進学を自分自身にとっての重大な転換点であると評価した生徒は、2つの側面が対応する傾向があること(正の相関)が確認されました。
中高一貫校を設置し、高校移行の機会を減らすことが、本当に生徒にとっての望ましい発達につながるのでしょうか?本研究の結果によれば、ある生徒にとっては必ずしもそうとは限らないようです。私たちの研究は、国内外で初めて、高校進学にともなうポジティブな発達の性質を精緻化し、そのメカニズムを実証的に示しました。中高一貫校を推進する本邦の教育政策に対して、高校移行にともなうポジティブな発達という新たな視点による議論の機会を開くことが期待されます。
論文情報
■ Iimura, S. & Taku, K. (2018). Positive Developmental Changes after Transition to High School: Is Retrospective Growth Correlated with Measured Changes in Current Status of Personal Growth? Journal of Youth and Adolescence, doi: 10.1007/s10964-018-0816-7
■ URL: https://link.springer.com/article/10.1007/s10964-018-0816-7
■ 飯村周平Web page: https://sites.google.com/view/iimurashuhei/top
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