ダイバーシティセンター
活動報告書(2024年度)
運営委員長挨拶
中央大学ダイバーシティセンターは開設から早くも5年が経ちました。障害や病気に関わる障害領域、性別・性に関わるジェンダー・セクシュアリティ領域、文化や民族の多様性に関わるグローバル領域の三つを軸とする取り組みが少しずつ学内に浸透し、多くの人や組織と目線を揃えてともに働く機会が年々増え続けています。
2024年度は、学生への個別相談・支援や居場所づくり、教職員への研修、啓発イベントの実施などに加えて、「障害学生支援のためのハンドブック(学生版)」「障害学生支援のためのガイドブック(教職員版)」を作成しました。本センターのコーディネーターが中心となり、学内で支援に携わる多くの方々と協議を重ねてまとめた包括的な指針となっており、今後教育の現場で活用されていくことを期待しています。また、教職員のための環境整備の大きな一歩として、「中央大学パートナーシップ制度に関する規程」を制定することもできました。
現在、本センターには、専門コーディネーターが計7名(障害領域3名、ジェンダー・セクシュアリティ領域3名、グローバル領域1名)在籍し、多くの職員・教員と日々協力しながらそれぞれの経験や知見を活かして取り組みを進めています。今後もさらに学内外の組織とも連携を深め、本学の多様な構成員がそれぞれ尊重され活躍できるように、環境整備を続けていく所存です。
学内外で本センターの活動に心を寄せてくださる皆さまに、またわたしたちの活動をご寄付や助成金等を含むさまざまな形で支えてきてくださった皆さまに、改めて御礼申し上げます。本学におけるDEIの取り組みはようやく端緒についたところです。これからも粘り強く一歩ずつ、歩みを止めず、ともに進んでいただけるよう、お願いいたします。
(長島佐恵子)
個別相談・個別支援
障害(身体障害・内部障害・難病など)がある、性的マイノリティである、外国に(も)ルーツがあるなどの事情により様々な困難に直面している学生のみなさんや、そうした学生に対応する教職員からの相談を受け付けました。
障害領域
のべ2,337件(うち面談148件)(2024年3月〜2025年2月)
相談事例
- 視覚や聴覚に障害があり、情報保障を利用したい(学生)
- 肢体や体幹に障害があり、専用の机や椅子を使用したい(学生)
- 災害時に、障害のある学生も安全に避難できるよう、個別避難計画をつくりたい(学生・教職員)
ジェンダー・セクシュアリティ領域
のべ1,196件(うち面談168件)(2024年3月〜2025年2月)
相談事例
- 登録上の性別と生活上の性別が異なるが、授業内で男女別になる場面があり、周囲の人にトランスジェンダーであると気づかれるのではないかとヒヤヒヤした。(学生)
- 就職活動、インターン、教育実習、留学などに際して、自分の性のあり方と関連して不安なことがあるが、どうすればよいだろうか(学生)
- インクルーシブな授業づくりや合宿の計画について相談したい(教職員)
グローバル領域
のべ91件(うち面談20件)(2024年3月〜2025年2月)
相談事例
- 通称名を利用したい(学生)
- 大学で友達ができず、孤立している(学生)
- 多言語での情報発信について相談したい(教職員)
居場所づくり
多摩キャンパスではダイバーシティスクエア(Dスクエア)を運営しています。開室時間は月曜日~金曜日の授業実施日の10:30~14:30です。2024年度はのべ151日開室して、のべ354人が利用しました。
利用事例
- 一人でのんびりしたい(学生)
- コーディネーターと話がしたい(学生)
- 電源とWi-Fiがあるところで課題をしたい(学生)
- Dスクエアにある資料を見たい(学生・教職員)
- 授業の一環として学生と一緒に訪問したい(教職員)
啓発
様々なイベントを開催したほか、学生や教職員に対して授業や研修を実施しました。また、学外のイベントへの参加や、他大学との交流も活発でした。
イベント
Chuo Diversity Weeks 2024
ダイバーシティ推進をテーマに現代社会の諸問題について理解を深める機会として、年1回開催している大型イベントです。今回のテーマは「ともにあるためにできること」。11月に障害者と法律に関する講演会、アロマンティック・アセクシュアルに関する講演会、レイシャル・プロファイリングや公共訴訟に関する講演会など4つのイベントを実施して、学内外からのべ約250名が参加しました。
Chuo Diversity Weeks 2024
人権問題講演会
人権擁護を目的とする人権教育を推進するため、1985年から毎年開催しているイベントです。昨年度と今年度はダイバーシティセンターが企画を担当しました。6月にろう×LGBTQを題材とした映画「虹色の朝が来るまで」の上映と、今井ミカ監督による講演を実施して、学内外から約200名が参加しました。
Dcafé
カフェのように気軽に来られて、ほっとできる場所として企画しているイベントです。お菓子や飲み物でくつろぎながら、ダイバーシティセンターの活動について紹介しました。お菓子は、アレルギー、ヴィーガン、ハラルなどに対応したものも用意しました。5月に多摩キャンパス、6月に後楽園キャンパスで開催したイベントには、のべ約20人の学生が参加しました。
手話っと交流会
手話とろう文化にふれながら、お互いに「それって何?」と知り合うイベントです。5月に茗荷谷キャンパスで松田崚さん、7月に市ヶ谷田町キャンパスで伊藤ホサナさん、12月に後楽園キャンパスでさとりさんと、それぞれろう者の講師を招いて開催しました。イベントには、のべ約50人の学生と教職員が参加しました。
授業・研修
学生・生徒対象
新入生オリエンテーション(全学部で対面またはオンデマンド)、教職課程オリエンテーション(文系・理系)、授業(経済学部・理工学部・文学部・国際経営学部)、オープンキャンパス、附属生ウェルカムイベント など
教職員対象
新任教員研修、新入職員研修、教授会(全学部・全研究科)、研修(理工学部)、FD・SD講演会(全学) など
その他
東京レインボープライド2024、AHEAD JAPAN、明星大学UDセンター研修 など
環境整備
誰もがすごしやすいキャンパスづくりに継続的に取り組んでいます。
障害領域
・SA(スチューデント・アシスタント)の活動
SAは、授業やスクーリングでノートテイクや授業資料のテキストデータ化を必要とする障害等のある学生に、情報保障や移動のサポートをおこなう学生のことです。障害領域のコーディネーターが、定期的にノートテイク講習会や交流会を実施して、SAの育成にあたりました。なお、ノートテイク講習会にはのべ80名が参加しました。
・障害学生支援のためのハンドブック(学生版)、障害学生支援のためのガイドブック(教職員版)
障害や慢性疾患のある学生が学修の際に直面する困難事例、相談窓口、合理的配慮の手続等、支援についての情報を、学生版と教職員版にわけてまとめました。個々の学生を尊重し、ユニバーサルな学修環境とインクルーシブなキャンパスの実現をめざし、2025年度に公開・配布予定です。
障害学生支援のためのハンドブック(学生版)
障害学生支援のためのガイドブック(教職員版)
ジェンダー・セクシュアリティ領域
・コーディネーターの増員
4月に新しいコーディネーターが1名着任しました。
・生理用品の無料配布
生理がある人への支援の一環として、2022年度から多摩キャンパスの一部の女子トイレと多機能トイレに無料で利用できる生理用品を設置しています。2023年度に全キャンパスに拡大、2024年度は各キャンパスの設置場所を増設しました。
生理用品の無料配布
・学生のためのジェンダー・セクシュアリティに関するハンドブック
「学生のためのジェンダー・セクシュアリティに関するハンドブック」の第2版を公開しました。
学生のためのジェンダー・セクシュアリティに関するハンドブック
・中央大学パートナーシップ制度に関する規程
教職員の「中央大学パートナーシップ制度に関する規程」を制定しました。この制度によって、事実婚や同性パートナー等、婚姻関係と同様の事情・状態にある相手との関係を、婚姻の届出をしたものに相当する関係とみなし、諸制度が適用されるようになります。
中央大学パートナーシップ制度に関する規程
グローバル領域
・コーディネーターの着任
4月に新しいコーディネーターが1名着任して、より専門的な相談に対応できるようになりました。
・情報の多言語化
ダイバーシティセンターから発信する情報の多言語化を進めています。2024年度は、一部の情報を中国語(簡体字・繁体字)で公開したほか、2023年度に公開した「中央大学ダイバーシティ推進のためのアンケート2023調査報告書」を英語に翻訳しました。2025年度の公開を予定しています。