「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
商学研究科 商学専攻の伊東 鳴美(いとう なるみ)さん(博士前期課程2年)が、日本管理会計学会で発表を行いました。
日本管理会計学会年次全国大会は、管理会計研究の発展と普及を目的とし、関連分野における最新の研究成果を共有・議論するイベントです。今年度は甲南大学岡本キャンパスで開催され、企業会計や経営戦略、サステナビリティ会計など、管理会計や関連分野における多岐にわたるテーマが扱われました。
本記事では、発表内容の紹介や発表にあたってのメッセージをお届けします。
発表の概要について
発表テーマ:研究開発税制が国内企業のR&D投資戦略に与える影響
-税制設計がR&D支出に及ぼす影響の実証的整理-
研究開発税制は、日本企業のイノベーション活動を支える重要な制度の一つです。近年、国際的な競争環境が激化するなかで、企業が持続的に研究開発へ投資できる環境づくりは、国の経済成長や産業競争力強化に直結しています。国外では活動の拠点選択にも影響を与えると考えられている重要な制度であり、日本においてもその効果を高めることがますます重要になっています。そのため本研究では、国内の研究開発税制に着目し、企業の投資行動に与える影響を明らかにすることを目的としました。
本研究では、国内企業を対象にしたパネルデータ分析を行い、研究開発税制が実際の投資行動にどのような影響を与えているのかを検証しました。研究開発税制の効果を測るために、研究開発投資が税制によってどの程度優遇されているかを示す「B-index」という指標に着目しました。B-indexは、数値が低いほど企業への税制優遇が大きいことを意味します。分析の結果、統計的に有意な負の効果が確認され、税負担が重い企業ほど研究開発投資を控える傾向があることが明らかになりました。
すなわち、企業のイノベーションを後押しするためには、研究開発税制の設計が極めて重要であることが実証的に裏付けられたと考えています。
発表にあたって
今回の学会発表を通じて、研究の成果を広く共有するとともに、多くの先生方や研究者の方々から建設的なご意見を頂く貴重な経験を得ることが出来ました。
特に、客観的な視点から現在の研究の方向性が社会に意義を持つものであるかという点で確認できたため、今後の研究を進めるうえで大きな励みとなったと実感しております。
この経験を糧により一層研究を深め、社会に還元できる成果を発揮していきたいです。