2025年6月27日(金)、中川ゼミでは国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎先生をゲストにお招きし、この日のキーワードである「耳学耳習」についてお話を伺いました。世界を視覚だけで理解するのではなく、全感覚を総動員して理解するのが「耳学耳習」だという広瀬先生の言葉を受け、私たちはその学びの大切さについて考える機会を共有しました。
また講義の中で、広瀬先生が受けた就職のほろ苦い思い出や、琵琶法師や瞽女といった目の見えない人が創り上げてきた文化について、ときにユーモアを交えながらお話くださったのも印象的でした。瞽女は室町時代に発祥したとされ、瞽女唄は農民にとっての娯楽であり、その文化は300年間も続きました。広瀬先生はその事実について、「農民が瞽女に対して目が見えないからかわいそう、助けてあげなければという上からの視点を持っていたらこの文化は300年も続いてこなかった」と断言されます。ここから私は、瞽女唄が伝承されてきたのは憐憫や温情主義からでは決してなく、戦乱や飢饉と隣り合わせに生活していた人々が文化価値を求めていたからだということを知りました。同時にそれは、日頃のゼミで学んでいる、支援のあり方、多様性や多文化共生の重要性を振り返る契機にもなりました。
ゼミ生にとってこの日は、異文化に対するまなざしについて深く考えさせられた一日となりました。私は情報が氾濫し、より早く、効率的に理解するために過度に視覚が重視される現代社会において、「目が見えない世界の文化」を楽しむ態度、モノを触り、時間かけて理解することの大切さを改めて思いました。そしてそこに、障害者を「かわいそう」とする「上から目線」への猛省と、尾ひれのついたマイナスイメージを払拭できる可能性を感じました。
中川ゼミでは、文献講読や海外実態調査を通じて、意見交換をし、学びを深めています。今回の講義では、私たちが経験したことのない異文化を当事者の方から学ぶ貴重な機会となりました。今後のゼミ活動や研究に、今回の経験を活かしていきたいと思います。
(執筆:文学部人文社会学科 学びのパスポートプログラム社会文化系2年 井出雄都)
広瀬浩二郎先生(前列中央)と