大学院

【究める vol.157】在学生の声 小笹 礼史さん(経済学研究科 博士後期課程)

2025年06月09日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。今回は「在学生の声」として経済学研究科の小笹 礼史さんへのインタビューをお届けします。大学院でのご自身の研究をはじめ、進学した理由や大学院での研究活動・課外活動など、大学院の様子が伝わる様々なエピソードが載っています。

小笹 礼史(おざさ れいし)さん

研究科:経済学研究科
専 攻:経済学専攻
課 程:博士後期課程1年

大学院でのご自身の研究について教えてください

私は、資本主義経済において構造的に生じ、さらには、新自由主義的な政策によってより一層深刻化している格差問題、貧困問題を、ベーシックインカムという普遍主義的な貨幣給付が、いかに克服しうるかを研究しています。日本において、コロナ禍に実施された「特別定額給付金」は、全国民に一律で給付されるという点で、まさしく、ベーシックインカム的な性質を持つ政策でした。このような給付が非常時のみの措置にとどまるのではなく、定期的かつ恒常的に行われる場合、どのような社会的影響が生じるのか、とりわけ、生存権の保障、労働の在り方、そして人間の行動に対してどのような影響を与えるのかを明らかにしたいと考えています。

大学院へ進学した理由と、中央大学大学院を進学先に選んだ理由を教えてください

学部のゼミ活動で、研究テーマである「ベーシックインカム」について学ぶ機会がありましたが、この制度が、今後の社会構造や社会保障制度のあり方に大きな影響を与える可能性があると考えており、その重要性を強く認識したからです。また、一つのテーマを理論的かつ実証的に深く掘り下げ、自らの手で明確な成果を出したいと思い、進学を決意しました。

 

中央大学大学院に進学したのは、学部時代のゼミを通じて、現指導教授が専門とされている研究分野に強い関心を抱くようになり、学部から継続してご指導いただきながら、より専門的に研究に取り組みたいと考えたからです。また、学部時代には、ある程度の成績を収めており、「特別選考入試」を受験することができたのも、中央大学に進学した理由です。

博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください

博士前期課程の2年間では、当初立てた問いに対して、自分自身が納得のいく結論にたどり着くことができなかったからです。研究を進める中で、新たなアプローチや視点に数多く出会い、問いそのものの奥深さや広がりを実感しました。こうした経験から、「やるならとことん追求したい」という思いが強まり、博士後期課程への進学を決意しました。

大学院の授業はどのように行われていますか。学部との違いや特徴を教えてください

大学院の授業は、基本的に講義形式ではなく、ゼミ形式で行われます。あらかじめ文献やテーマが提示され、それについて各担当者が調査・整理し、発表を行います。発表後は、担当者以外の受講者が質問を投げかけ、全体で議論を深めていくという流れです。

 

学部との大きな違いは、こうしたゼミ形式の授業が中心である点にあります。また、受講者数が少人数であることが多く、マンツーマンになる場合もあるため、発言の機会が非常に多く、担当されている教授との関わりもより密接になります。

 

なお、博士後期課程の授業も基本的にはゼミ形式で行われるため、博士前期課程との授業形態に大きな違いは感じません。

実際に履修した授業について、印象に残っていることを教えてください

私が特に印象に残っている授業は、やや特殊なケースになりますが、「ポリティカル・エコノミー」です。というのも、この授業は学部4年次に履修したもので、中央大学の制度を利用し、大学院の授業を先取りしていました。

授業の内容は、経済のみならず教育やAIについてなど、幅広いテーマに関する論文や新聞記事をもとに意見を交換し、議論を行うというゼミ形式を中心としつつ、テキストに沿った講義形式の側面も併せ持つものでした。

 

大学院の授業スタイルを学部生の段階で体験でき、また、大学院生の先輩方と授業を通して交流できたことは、自分にとって非常に大きな経験でした。大学院での授業の具体的なイメージを持つことができたことで、進学後の生活への移行もスムーズに進めることができました。

中央大学大学院に進学してよかったことについて

幸いなことに、私の所属する研究室には博士後期課程の先輩方が在籍しており、日常的に気軽に相談できる環境が整っていました。修士論文の内容にとどまらず、ゼミでの発表資料の作成方法や研究のスケジュール管理など、具体的かつ実践的なアドバイスをいただくことができ、大変心強く感じました。

授業以外の時間はどのように過ごしていますか

1年次は、単位取得のために多くの授業を履修していたことから、その準備(文献の読み込みや発表資料の作成)が日々の中心的な作業となっていました。2年次には、修士論文の執筆に本格的に取り組み始め、まずは9月に実施される中間報告会に向けて準備を進めました。

 

学外の活動としては、先輩が所属する学会が主催するイベントに参加させていただき、他大学の学生や、専門分野が大きく異なる学生と交流する貴重な機会を得ました。

 

また、アルバイトは学部時代から継続しており、週に3日ほど勤務していました。

大学院進学を目指すみなさんへ

フィールドワークで訪れた韓国・慶州

まだ何の実績もない私が言えることは限られていますが、それでも一つのテーマに関心を持ち、「それをどのように捉え、どのように考えていくか」といった思考のプロセスを経て結論に至るまでの過程は、非常にやりがいのあるものだと感じています。

単位取得や部活動・サークル活動、アルバイトに追われる学部生時代とは異なり、大学院では比較的落ち着いた環境の中で、研究を通して自分自身と向き合う時間を持つことができます。その時間は、自分の関心や価値観を見つめ直す上で、とても有意義なものです。もし、日々の生活の中で、大小関わらず疑問や興味を持つものがあるならば、それを数年間かけて掘り下げ、研究という形で向き合ってみるというのも、一つの選択肢ではないでしょうか。