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【ACC21・経済学部】特別公開授業 「国際協力論」(林 光洋)
「フィリピンの路上で暮らす若者に雇用と未来を~ストリートチルドレン・ゼロに向けたACC21の挑戦」
2019年07月05日

▲ACC21代表理事 伊藤道雄氏(右)、広報担当 辻本紀子氏(左)
この特別公開授業には、経済学部の学生はもとより、国際協力や途上国の現状等に興味のある他学部の学生も多数出席しました。中には理工学部の学生もおり、今回のテーマへの関心の高さがうかがえます。
現在、ACC21は「2030年までにフィリピンのストリートチルドレンをゼロにする」という高い目標を掲げて活動を進めています。今回の授業では、「フィリピンのストリートチルドレン」の現状やACC21の取組みを中心にフィリピンの国内事情も含めながら紹介してもらいました。
まず、国際協力やそれらを担う人材の資質、ACC21の組織の概要等について伊藤氏が講義しました。続いて、ストリートチルドレンの現状とACC21が実際に行っている支援活動について、辻本氏が具体的に解説しました。これまで約40年、アジアを中心に国際協力に熱い思いを抱いて携わってきた伊藤氏、そして学生時代から国際協力に関心を寄せ現場で活動する辻本氏が、それぞれの視点と具体例を織り交ぜながら講義されました。
ストリートチルドレンの現状~フィリピン・マニラの場合

▲ゴミを拾って日々を過ごすストリートチルドレン (提供:ACC21)
フィリピンのマニラ首都圏(人口:約1,288万人/2015年)には、ストリートチルドレンと呼ばれる路上で生活する子ども・若者が約5万~7万5,000人いるというデータ(2012年調査)があり、その数は増え続けています。
彼らは食事も満足にとれず、物乞いをしたりゴミの中から食べ物をあさったり、中には空腹を紛らわすためにシンナーを吸う子どももいます。出生届すら出ていない場合もあり、未就学や中途退学だったり、その多くは十分な教育を受けていません。さらに彼らの中には、虐待や性的搾取の被害に遭ったり、薬物に手を出したりする若者もいるほか、10代で若くして子どもをもつ女性も多いといいます。
彼らは食事も満足にとれず、物乞いをしたりゴミの中から食べ物をあさったり、中には空腹を紛らわすためにシンナーを吸う子どももいます。出生届すら出ていない場合もあり、未就学や中途退学だったり、その多くは十分な教育を受けていません。さらに彼らの中には、虐待や性的搾取の被害に遭ったり、薬物に手を出したりする若者もいるほか、10代で若くして子どもをもつ女性も多いといいます。
ストリートチルドレンは3種類に分類される
・家族と一緒にスラムで暮らし、日中路上で働いたり、物乞いをする。
・家族と共に地方から都会に出てきたが、仕事も住むところもなく家族で路上生活をする。
・家族に捨てられたり虐待から逃れるために、家族とは離れ、子どもだけで路上生活をする。
・家族と一緒にスラムで暮らし、日中路上で働いたり、物乞いをする。
・家族と共に地方から都会に出てきたが、仕事も住むところもなく家族で路上生活をする。
・家族に捨てられたり虐待から逃れるために、家族とは離れ、子どもだけで路上生活をする。

▲若くして子どもを出産した少女 (提供:ACC21)
そのようなストリートチルドレンは、不衛生な環境の中で、栄養不足の状態で暮らしているため、病気にかかるリスクが高いといえます。しかし彼らは、出生証明書がなく健康保険に加入できなかったり、公的なサービスの知識が乏しかったりするために適切な治療を受けられません。また、若くしての出産は、母体の健康リスクを高めるだけでなく、妊娠・出産・子育てによって教育を受ける機会を奪われたりもします。
ストリートチルドレンが減らないのはなぜ?
・十分な教育を受けていないために、仕事に就くためのスキルがない。
・路上で育ち、若くして出産する。生まれた子どもたちもまた路上で暮らすようになる。
・地方の貧しい人々が仕事を求めて都市部に流入し続けている。
・政府の支援制度が不十分である。
上記のようなさまざまな要因が複雑に絡み合い、貧困の連鎖が続くために、マニラのストリートチルドレンは減少するどころか、増加が続いています。
・路上で育ち、若くして出産する。生まれた子どもたちもまた路上で暮らすようになる。
・地方の貧しい人々が仕事を求めて都市部に流入し続けている。
・政府の支援制度が不十分である。
上記のようなさまざまな要因が複雑に絡み合い、貧困の連鎖が続くために、マニラのストリートチルドレンは減少するどころか、増加が続いています。
ACC21が取り組む「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」

▲理容の職業技術訓練を受ける若者たち(提供:ACC21)
ACC21では、ストリートチルドレンへの自立支援を通じて、ひとりでも多くの路上生活をする子どもや若者たちの数を減らすことを目指しています。フィリピンのNGO、チャイルドホープやマニラ市人材開発センターと協力し、「ライフスキル」や「職業技術」を学ぶ機会を提供する取り組みを2018年にスタート。1年間に30人を支援しています。
幼少期から路上で暮らした若者たちには、「何かをやり遂げた経験=成功体験」がありません。まずは「ライフスキルトレーニング」を実施し、自立のための心構えや目標の立て方、対人関係等の研修をします。そして、職業技術訓練、就職へと進んでいきます。
2018年度に始まったこのプロジェクトでは、初めの半期に12人の若者が修了して、就職やフリーランスで仕事を始めることができました。彼らの中には、子育てをしながら、家族の生活を支えるために夜間のアルバイトも並行して行い、必死の努力をして修了した者もいます。
国際社会全体で取り組んでいる「SDGs=持続可能な開発目標」に貢献するため、その基本理念『誰一人取り残さない』の実現に合わせ、 ACC21は、「2030年にストリートチルドレン・ゼロ」を目指しています。 1年間に30人という数は「ゼロ」を目指すには微々たるものかもしれませんが、この取組みの成果が、共に活動するアジアのNGO仲間に拡がり、その多くの団体で取り組んでいくことを期待しています。また、プロジェクトを卒業した若者たちが後輩たちを育てていくことで、より多くのフィリピンの若者が自立するチャンスにつながることを目指して活動を継続しています。
伊藤氏がACC21にかける思いとは

▲幼少期から路上で過ごした若者たちは、「自立支援プロジェクト」を修了し、自信をつけて社会で歩み始めました(提供:ACC21)
ACC21の代表、伊藤氏がアジアの途上国支援に関わるようになったのは、40年前のこと。フィリピンの首都マニラでのストリートチルドレンとの出会いでした。「お金をくれ」と寄ってきた子どもにコインを渡すと、足りないとポケットに手を突っ込んでくる。その手を払ったときの彼らの形相に衝撃を受けたそうです。
その出来事以来、人間としての尊厳を失う生活を強いられている人々と子どもたちを救いたいという強い思いを持ち続け、「アジアの人々が共に生き、支え合う、世界に開かれた、公正で平和な社会」づくりをビジョンに、2005年にACC21を立ち上げました。
伊藤氏と志を同じくするアジアの仲間たちの協力のもと、現在ではフィリピン、スリランカ、カンボジア、タイをはじめとするアジア12カ国の100以上の現地NGOとのネットワークを作り上げ、協働で多岐に渡るプロジェクトを実行し、アジアにおける貧困の削減に取り組んでいます。
<経済学部・FLP国際協力プログラム 林光洋ゼミ>
フィリピン・フィールド調査に向けた計画発表会

▲発表を終えた学生らに講評をするACC21の伊藤氏と辻本氏
続く4限目には、経済学部とFLP国際協力プログラムの林光洋ゼミにACC21の伊藤氏と辻本氏をお迎えし、フィリピン・マニラでのフィールド調査を含む研究計画の発表会が行われました。
この発表会には、林ゼミの3年生を中心に、4年生、そして2年生も参加。林ゼミの3年生の学生たちから、フィリピン・マニラおよびその周辺地域におけるフィールド調査について、研究のテーマ、仮説、調査方法や目標などの報告が行われました。学生らは、防災、教育、保健医療、BOPビジネス分野の4班に分かれて 、各班が検討を重ねて作成してきた研究計画書をもとに発表しました。
ACC21 が「路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト」を展開していることもあり、伊藤氏と辻本氏は林ゼミの学生たちがフィールド調査の対象とするフィリピンについて精通しています。4班の発表内容に対して、インタビューする相手に寄り添うことの必要性、回答を引き出しやすい質問を作成することの重要性等、調査方法や対象の選び方、インタビュー先に至るまで、具体的な情報、多くの貴重なコメントやアドバイスを提供していただきました。また、ゼミの4年生の先輩は、昨年の現地調査の経験を踏まえた助言を述べてくれました。
この授業により、学生たちの視野がより広がり、現地調査の実施に向け、計画の見直しや修正すべき点など、大きなヒントを得る機会となりました。