
石川 敏也
2016年10月1日から31日までの1か月間、アメリカ合衆国ハワイ州立大学マノア校数学科(University of Hawaii at Manoa, Department of Mathematics)のDaisuke Takagi, Assistant Professorの元に留学いたしました。同校は、1907年に設置された生徒数約14,500人・留学生数1,240名の国際的に著名な研究大学であり、学部、大学院、および専門職学位を提供しています。
同校に留学先が決定した理由は、Daisuke Takagi先生が担当教官の中村教授の知り合いであることと、私に形状記憶合金アクチュエータの技術のアドバンテージがあったことだと考えます。私の研究テーマは、「巻フィルムチューブ式形状記憶合金人工筋肉アクチュエータの開発」で、形状記憶合金を使い人間の筋肉にそっくりな形状と柔軟性と性能を持つ人工筋肉の実現が目的であります。形状記憶合金とは、変形してもある温度以上になると元の形に戻る金属のことで、チタン・ニッケル合金が一般的です。人工筋肉とは、これが有ればアンドロイドでもサイボーグでも作ることが可能になるアクチュエータ(駆動装置)のことです。Takagi先生のラボでは水中生物のケンミジンコ(Copepod)の動きを数学的に解析し、その理論実証のための小型ロボットの研究が行われており、その駆動に形状記憶合金の利用が検討されていたのでタイムリーでした。
留学先決定の最重要項目として、担当教官のコネクションと本人の特技が挙げられます。これから留学をしようとお考えの方は、自分には何ができ自分の留学先にはどのような貢献ができるのか、しっかり把握しておかれると良いと思います。これが留学先に自己アピールするときの重要な武器になります。この自己アピールが上手く行くとスムーズに留学の手続きが進み留学先の先生から招聘状(Invitation letter)が届きます。この招聘状は、留学計画書・留学先情報・経費算出書・誓約書と共に留学手続きの必須提出物の1つでありますので、ご留意ください。
Takagi先生のラボでは、日本から持参した形状記憶合金などの部品を使ってゼミの皆と英語でコミュニケーションをとりながらCopepod robotを製作しました。結局のところロボットは少ししか動きませんでしたが、想像以上に皆と意思疎通が良くできたことに驚きました。自分では、とても上手い英語を話せている自信はなく、相手の言葉も良くわからないのですが、意志だけは伝わるあの感覚は大変興味深いものでした。重要なことは、相手の発言が良くわからないときは何度も質問を繰り返し、自分に理解できるキーワードを見つけることだと思います。ハワイ大の数学科の教室で自分の研究について発表し質疑応答で困ったとき、この方法で乗り切りました。ここは臆せず何度でも質問を重ねる度胸を身に着けることでしょう。

マウナケア山頂で、すばる望遠鏡より高く飛んできました。
最後に、この留学の機会を提供していただいた中央大学に感謝申し上げます。生涯、心に残る良い思い出になりました。ありがとうございました。