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グローバル・パーソンメッセージ vol.052 浅羽 政良さん

「実は、大学4年生になるまで、
国際協力やグローバルに興味はありませんでした」と
笑顔を覗かせた浅羽氏。
転機となったのは、4年生最後の休みに出かけた
アフリカの孤児院へのひとり旅だった。
「この子たちのためなら、人生をかけられる」
自分の生きる目的はこれだと感じる衝撃を受け、
大手メーカーを退社した。
この夏、青年海外協力隊として、アフリカへと再び旅立つ。

雪印メグミルクに就職。営業成績を伸ばすため大切にしていた“信頼”

 「開発途上国向けに、製品を展開できたら……」。そんな思いを胸に、2012年に雪印メグミルクに入社しました。海外事業に関わる職種を希望していましたが、新入社員はまず日本で経験を積むのが基本。自分の場合は、仙台での営業職からスタートしました。純粋に、この仕事が楽しかったです。
 小売店に自社製品を置いてもらう取引をするなかで、協調性と交渉力が身につきました。心がけていたのは、信頼を得ること。どんなに「とてもいい商品なので買ってください」とPRしても、「この人は信用できないな」と思われたら取引してもらえません。どの場面でも言えることですが、親しくなることは大切です。あとは、他社の営業さんがやっていないようなことをすること。僕はデータ整理が得意だったので、小売店の購買層データをグラフ化して販売の傾向や改善点をお伝えしたり、バイヤーさんが困っていることをお手伝いしたりしていました。
 僕は商品を盛んに売り込むタイプではありませんでしたが、「浅羽はやってくれている」と思ってもらえたことが売り上げに作用したと感じます。直近で商品が売れなくても、信頼を得ていれば結果的に販売に繋がっていました。入社当初は上手くいかないこともありましたが、徐々に営業成績が上がり楽しかったです。

日本との文化の違いに衝撃。「自分にできることは何か」と考え始める

↑ ラオスでは、ゼミで現地調査を行った

 就職時に開発途上国への製品展開を視野に入れたのは、大学3年生の時に林光洋ゼミに所属していた影響でした。ラオスで2週間ほどの現地調査を行い、伝統的織物の商業化やローカルマーケットでの事例を研究しました。このほか、開発経済学と言って、世界の貧困国が豊かに発展するための理論を学んでいました。海外に興味があったわけではなくゼミでの経験から、就職活動の面接では「開発途上国に商品を売りたい」と話していました。しかし、採用は頂けましたがラオスでの経験だけでは“薄っぺらい”と感じたんです。アフリカ市場を見に行くと言う名目で、入社直前の大学4年3月に、アフリカへバックパックの旅に出ました。宿や現地交通手段は確保せず、往復航空券だけ取って2週間ほどのひとり旅。ケニアの首都・ナイロビからアフリカに入り、ウガンダの首都・カンパラ方面にある孤児院へ向かいました。
 

↑ ウガンダ・カンパラ方面にある孤児院にて

 


 この孤児院は事前にインターネットで目星を付けていて、ウガンダに着いてから近くにいた現地の人に携帯電話を借りてボランティアを申し込みました。
 ここでの体験は、「衝撃」のひと言です。AIDSなどで親を亡くした子どもたちに英語や算数を教えましたが、日本だったら教育を受けることは当たり前なのに、ここにいた子どもたちは教えてもらえることに涙して喜んでくれたんです。自分の価値観が180度変わり、そうした子たちに何かできないか、という思いが強くなりました。就職が決まっていたので日本に戻りましたが、仕事をしていた3年半、何かできないかなと考えていました。

 

国際協力への道を本格化させた、国際協力機構(JICA)の説明会

 営業の仕事は学べること、成長できることが多く、とても面白かったのですが、JICAボランティアの説明会に行くきっかけがあり、会社を辞めて青年海外協力隊に参加することを決めました。仙台の支店に勤めていた時、同年代の友人が説明会に誘ってくれたんです。その人も、僕と同じく「開発途上国の子どもたちのために何かできないか」と考えていた人。一緒に説明会に参加し、2014年の秋に青年海外協力隊へ応募しました。このとき友人は合格し、2016年の1月からルワンダに派遣されています。僕は補欠になり結果的に参加できなかったので、2015年春に再応募。8月に合格できました。
 合格に向けて優位に働いたのは、社会人経験とTOEICのスコアでしょうか。もともと社会人経験が必要とされている職種は多いです。これだと、大学生や新卒では応募できません。TOEICのスコアは現在800点以上あります。でも、初めてTOEICを受験した時は270点。ここは努力した部分だと思います。社会人になってから、海外事業に近づくために勉強しました。1日1、2時間、TOEICの過去問題を解く。何度か解いていくと、点数が低いセクションが分かり、苦手なセクションはその部分に特化したテキストを使って勉強し、スコアを上げていきました。

仲間意識を育むことが、現地での活動を成功に導く!

 派遣先のウガンダでは、コミュニティ開発を行います。稲作など、農業全般の支援を予定します。青年海外協力隊の事前研修では、栃木にあるアジア農村指導者養成専門学校「アジア学院」で20日間ほど農業を学びました。途上国での農業リーダーを育てるという学習内容ですが、僕たちが現地で支援するのは何十年と農業を生業としている人たち。突然、日本人が来て指導しても、普通なら「農業もやったことないのに……」と感じると思います。ですから、教えると言うよりも、一緒にやる、教えてもらうくらいのスタンスでいいのかなって思っています。
 JICAの担当者の方からもお話しがありましたが、僕の場合は農作物の作り方よりも、農作物をいかに売るか、販売ルートの開拓や販売方法のヒントを現地の人たちと一緒に見つけていくのがメインになりそうです。今までの営業の仕事が活きてくると思います。
  ここでも言えることですが、まずは信頼関係を作ることが大事なはず。寝食を共にして、村の生活スタイルに馴染んで、仲良くなる。あとは現地語です。ウガンダで英語は公用語ですが、貧困層の人たちや子どもたちは英語が話せないと言われています。

↑ 大学生時代のアフリカでのひとり旅の様子

ルガンダ語という現地語が話せれば、そうした人たちからも様々な意見が聞けますし、仲間意識も強くなります。
 ウガンダに派遣後、1ヵ月間の現地語研修もあります。TOEICのスコアがあるのと英語が話せるのとはまた別だと思うので、今は英語の勉強に集中しています。グローバルに活動するためには、英語が大事ですから。あとは、好奇心。在学中に「幅広く学べるし、経験にもなる」という部分に惹かれ参加した林光洋ゼミの、開発経済学や現地調査の内容が今、活きています。ウガンダでの国際協力の経験も、将来の仕事に活かしていきたいですね。
 在学時代は実学的に英語を学ぶといいと思いますが、社会人になった時に後悔がないよう、たくさん遊んだり、勉強したりするといいです。もちろん、旅をするのもいいと思いますよ!

■プロフィール■

青年海外協力隊 コミュニティ開発
浅羽 政良(あさば まさよし)さん

1990年生まれ、神奈川県出身。
中央大学経済学部国際経済学科に在学中はファカルティリンケージ・プログラム(FLP)を受講。林光洋ゼミで開発経済学を学んだほか、他学部のゼミを受講し見地を広めた。2012年に卒業し、雪印メグミルク株式会社に入社。仙台にて営業職を経験後、2015年12月末で退社。2016年6月より2年間、青年海外協力隊としてウガンダにて国際協力を行う。