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経済学部「国際協力論」(林光洋担当)にてJICAの橘様による公開特別授業を実施しました
2025年08月18日


JICA海外協力隊の経験から学ぶ 国際協力とその先のキャリア

林ゼミからはこれまでに6人の卒業生が協力隊に参加しています
2025年6月17日(火)、多摩キャンパス7号館の教室で、経済学部「国際協力論」(林光洋 担当)の公開特別授業を開催しました。講師には、JICA(独立行政法人 国際協力機構)のガバナンス・平和構築部長であり、本学経済学部OBでもある橘 秀治さんをお迎えし、「JICAの役割と途上国における開発協力事業」をテーマにご講演いただきました。
講義は随所にクイズが盛り込まれ、開発途上国の現状や国際社会が直面する複合的危機、そして国際協力の仕事の意義について、実体験を交えながらわかりやすく紹介されました。学生たちにとって、国際協力への理解を深め、自らの進路を考える貴重な機会となりました。
JICAの役割と途上国における開発協力事業
JICA・国際協力とは何かを知る
講義はまず、「国際協力とは何か」という問いから始まりました。国際協力は、国際社会全体の平和・安定・発展を目的に、開発途上国・地域の人々を支援する取り組みです。その実施機関であるJICAは、日本の政府開発援助(ODA)を担い、開発途上国の「人造り、国創り」に取り組んでいます。
JICAは各国の状況に応じたオーダーメイドの国際協力を行い、「課題解決のプロデューサー」として活動しています。
活動の基盤には、「人間の安全保障」や「質の高い成長」の理念があり、そのビジョンとして「信頼で世界をつなぐ」を掲げています。
複合的危機について考えてみる
橘さんは、青年海外協力隊(現在のJICA海外協力隊)の隊員としてインドネシアの南スラウェシ州で市場調査を行った経験を紹介しました。現地の人々と協働する中で、橘さん自身も、また多くの隊員も「助けに行ったつもりが、助けられた」、「教えに行ったのに教えられることの方が多かった」と語っています。
さらに、気候変動や感染症、紛争、インフレといった課題が連鎖する「複合的危機」について説明がありました。特に開発途上国の貧困層への影響は深刻であり、人間一人ひとりの尊厳を守る「人間の安全保障」の理念に基づく取り組みの重要性が強調されました。
ここで橘さんは "A friend in need is a friend indeed"(困った時の友は真の友だ)という言葉を引用し、国際協力におけるこのような姿勢の大切さを伝えました。
国際協力の仕事について知る

橘さんは、アフリカの基礎教育を担当した経験も紹介しました。ニジェール、エチオピア、ザンビアなどでの学校建設や理数科教育、教員養成の取り組みは、学習機会の不足に対応し、基礎的な学力の不足を補い、貧困や健康格差の改善を目指す点で、子どもたちの将来に直結する重要な課題です。
また、「みんなの学校プロジェクト」では、当初、「Education for all(みんなに教育を)」を掲げていましたが、橘さんは、「学校に行けることは大切だけど、それで満足してよいのか?」と学びの質を高める必要性に気づき、「Learning for all(みんなに学びを)」へと発展させた過程を語りました。
さらに、青年海外協力隊の事務局長として取り組んだ「グローカル・プログラム」や起業支援の「BLUE」、OBOG隊員を称える「社会還元表彰」、寄附による「応援基金」など、協力隊事業を発展させる施策も紹介されました。
帰国隊員の多くは、その経験を活かしてJICA職員やJICA専門家、国連職員、現職復帰、起業家など幅広い分野で活躍しており、多様なキャリアパスが開けていることも示されました。
橘さんの著書『JICA海外協力隊から社会起業家へ ――共感で社会を変えるGLOCAL INNOVATORs』では、協力隊の経験を経て社会起業家として活躍する人々の姿が紹介されています。
学生の皆さんへ
講義の最後には、2050年に世界人口の約3分の2を占めるとされる「グローバル・サウス」との協力関係の重要性について触れられました。
途上国の現場で課題を発見し、多様性を受け入れ、協働しながら社会課題の解決を目指すJICAの活動は、まさにこれからの社会を担う人材像につながるものです。
JICAは、「Prosperity(豊かさ)」、「People(人々)」、「Peace(平和)」、「Planet(地球)」の4つの視点から、20分野の「JICAグローバル・アジェンダ」を策定しています。
最後に橘さんは学生たちに向けて、「皆さんの目の前にはさまざまな可能性が広がっています。ぜひ自分にできることを見つけていってください」とメッセージを送りました。

クイズを交えながら講義する橘さん

協力隊経験も活かして国内外で起業するOBOGを紹介

講義後、個別に質問する学生たち
学生の声
参加学生の感想(終了後のアンケートより)
●橘さんご自身が何を考え、どのように行動されたのか、経験に基づくお話を伺うことができ、大変興味深かったです。アカデミックな面だけでなく、現地の状況や写真を用いた説明を通じて、JICAや青年海外協力隊についてより深く理解できました。
今後は、自分の立場だけでなく、相手の立場にも立ち、互いに学び合いながら国際協力に関わっていきたいです。(経済学部4年)
●JICAでのご経験や、それに基づく世界の現状について学ぶことができました。
以前から青年海外協力隊に関心がありましたが、今回のお話を聞いて将来的に挑戦したいという思いが一層強まりました。(経済学部3年)
●青年海外協力隊に参加した後の進路や、そこで得られる成長について理解が深まりました。協力隊への参加は価値ある選択肢の一つであると感じます。
私は将来、ビジネスを通じて途上国の価値を引き出すような関わり方をしたいと考えています。(経済学部3年)
●橘さんのご経験を伺い、JICA海外協力隊が途上国の最前線で人道支援に携われることを知り、とても関心をもちました。また、協力隊出身者がその後のキャリアで世界に大きな影響を与えていることも知り、深く心を打たれました。フォーブスジャパンの「世界を救う希望 NEXT100」に協力隊出身者が選出されたと伺い、彼らの粘り強い努力と高い専門性が世界を変える力になっていることを実感しました。
私自身も将来、国際協力の現場に立ちたいと考えています。3年生になり、今後の自分の将来について真剣に考えるようになりました。ゼミの活動でも国際協力をテーマに研究していますが、ふと「この研究は本当に貧困で困っている人たちの役に立っているのか」と自問することがあります。言葉や思いだけでなく、行動や態度で示していくことの大切さを改めて感じました。橘さんがお話しくださったように、相手に信頼され、周りから応援され受け入れられる人になれるよう、残りの学生生活で自分を磨いていきたいと思います。そして社会に出た時に、自分らしさや能力を最大限に発揮できるよう、日々努力を重ねていきたいです。(商学部3年)