インターナショナル・ウィーク【第5回IW実施報告】シントン・ラーピセートパン在京タイ王国次席公使講演会

経済学部教授:長谷川聰哲

2013年12月10(火)、多摩キャンパスにおいて、シントン・ラーピセートパン在京タイ王国次席公使を講師としてお迎えし、講演会「タイの社会・経済の現状と今後の展望」を開催しました。当日は、約220人の聴講者で会場は超満員となり、講演終了後は大使による示唆に富んだ話を受け学生による活発な質疑応答が行われました。この講演会は、「中央大学の国際化を進め、学生の知的好奇心を喚起する」ことを目的としたインターナショナル・ウイーク[テーマ:ASEAN(タイ・ベトナム)]の一環として実施しました。

はじめに日本とタイ国の間に、およそ600年前のアユタヤ時代に琉球王国との間の交流があったことを紹介するなかで、山田長政がアユタヤでの活躍が認められ、高位についていたこと、沖縄の泡盛はアユタヤからもたらされたことなどの興味深い歴史が説明されました。また、明治期に、東南アジアのほかの国々はほとんどが植民地化される情勢下で、日本との国交関係を結び、欧米のプレッシャーに対抗できる近代化を進めていたのがタイのチュラロンコン王でした。王室と皇室をもつ国、仏教を大事にしてきた国として、日本とタイは無意識のうちの親近感で結ばれてきたとの両国の国交樹立の背景を語りました。

2011年に洪水がありましたが、現在では日本企業は約7000社が進出し、日本人は約4万人がタイに在住しています。義務教育を受けるバンコク日本人学校の生徒数は2300人で、これらは上海に次ぐ規模です。また、バンコクの日系企業の商工会議所も世界で2番目に大きな組織です。こうした数字から見てわかるように、タイは日本企業、日本経済にとって非常に重要な役割を果たしています。一方、タイから見ても、日本は輸出入ともに最も重要な国で、日本からの対外直接投資の規模でも第1位となっています。生産ネットワークの中での裾野産業、サポーティング産業、およびサービス産業において重要な投資先になっています。

人的交流では、日本からタイへの観光客は、昨年は130万人が訪れています。他方、タイ人の日本への訪問は、昨年は26万人、今年は10月までに28万人を記録しています。タイ人は本質的に日本が好きであること、アベノミクスによる円安、昨年からビザなし渡航が可能になったこと、7つの日本の空港と直行便が繋がったことが影響しています。さらに、言葉の障壁があるものの2300人が日本に留学しています。全体で第6位の順位です。日本語と日本のことがわかれば日本企業に就職できるということが日本への留学のインセンティブになっています。

そして最後に今後のタイの社会経済の課題を述べました。タイが中進国になり、最低賃金制度が昨年から導入され、労働集約的産業に頼れなくなりつつあります。日本との関係も変化すると予測しました。タイの賃金は日本の8分の1にあたりますが、ASEANのうち、インドシナ半島のラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、そしてシンガポールとの間で、タイをハブにして協力関係が進み、タイは資本や技術集約的な産業を目指し、労働集約的産業は他のASEAN国に移転することになります。タイは、ASEAN地域のなかで、東西経済回廊と南北経済回廊の交差点としての中核、ハブとしての経済拠点の役割を果たしていくでしょう。AEC(アジア経済共同体)が2015年に発足する過程で、英語での社会活動の重要性への意識が高まっていると、変動するタイの社会経済についての説得力ある講演を締めくくりました。

講演者プロフィール

在京タイ王国大使館
シントン・ラーピセートパン公使・次席館員

1962年タイ王国チョンブリー県生まれ。1983年東京学芸大学附属高校卒業、1987年横浜国立大学経済学部学士課程卒業、1989年同修士課程修了。同年、タイ王国外務省入省。経済局外務書記官、政治局東アジア部三等書記官を務め、1992年~1996年に在アメリカ合衆国タイ王国ロサンジェルス総領事館領事に就任。その後、東アジア局参事官、在京タイ王国大使館参事官等を経て現職。