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【グローバル・アントレ・フェア】株式会社JTBコラボ企画:イントレプレナー講演会を実施しました

JTBが果敢に取り組む!旅行にとらわれない新規事業の創り方

2024年12月11日、国際センターの「グローバル・アントレ・フェア」と企業とのコラボレーション企画として、株式会社JTBによる「イントレプレナー講演会」をオンラインにて実施しました。
株式会社JTBでは、ビジネスソリューション領域において、今後企業課題となるテーマを選定し、未来から逆算した思考で事業創造を行う社内活動として「未来創造部会」を設置しています。この未来創造部会における活動を通じて実現した新規事業について、実際の担当者をお招きして、事業実現までのプロセスやその背景にある考え方、業界が抱える課題や企業内における新規事業創出の価値などについてご講演いただきました。

JTBの新規事業に対する取り組み

企業におけるイノベーションについて、株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部に所属する野島さんに講演していただきました。
主軸事業で通用すると考えている経営者の割合は、5年後では10%に過ぎず、企業におけるイノベーション(=新規事業を作っていくこと)は経営課題となっており、日本のイノベーションを支える上で、アントレプレナーの革新とイントレプレナーの創造の重要性を述べました。

●アントレプレナー:自分で考えた事業アイディア・研究などを投資家や銀行などから資金を供給してもらい事業を作っていく創業起業家
●イントレプレナー:自分が所属している企業のリソース・資源・特徴を活用した事業アイディアを所属している企業の経営者が投資をしていく企業内起業家

また、JTBのイノベーションの取り組みであるイノベーション創発プロジェクト「NEXTENDER」にはCHALLENGEとKNOWLEDGEの2つの柱があり、新規事業の開発とイントレプレナーの輩出を目指すCHALLENGEのプログラムの1つ「未来創造部会」について説明しました。
「未来創造部会」とは、事業アイデアを社員から募り、最終的に選抜された事業をJTBの新事業とする、未来から逆算した施行で事業創造を行う活動で、実際には事業案応募364件から、事業案磨き上げ→実践的事業計画策定→実証・開発を経て、市場投入が4件と残存率が低いけれど、新規事業を考えるということ自体、個人の成長や達成感・満足度が高く、まずチャレンジすることが重要だと伝えました。

「ロス旅缶」発案者:小糸 美鈴さん

自分の未来のために 社会の未来のために 事業開発をしてみましょう!

本学総合政策学部を卒業後、JTBに入社し法人営業と未来創造部会を兼務する小糸さんが、事業開発に興味を持ったきっかけや、自身が発案・事業展開する「ロス旅缶」の取り組みについて発表しました。

コロナによるJTBの経営悪化、さらにAI、VR/AR、クラウドコンピューティングなどの発展によりJTBの競合が多くなったことで、「変化に未来がある」と思い事業開発に興味を持ちました。また、オートメーション化されない能力を磨き続けているJTB人財の能力は事業開発で活かせると思いました。

「ロス旅缶」とは、生産農家より排出される規格外野菜を活用した缶詰です。レシピを考案するのは、SDGsへ積極的に取り組むホテルのシェフで、規格外野菜を缶詰の商品として新たに価値をつけることで、食品ロスの削減に貢献していく取り組みです。
ロス旅缶事業開発の背景、開発プロセス、現在の成果、今後の展望などを具体的な事例や数字を交えて説明しました。

「Baoble」発案者:武井 綾香さん

「あったらいいな」「不便だな」と感じるものが新規事業や売れる商品の種になる

旅行好きで就職したJTBでしたが、配属されたのはまさかの経費精算システムの部署だった武井さん。ある日、上司に声をかけてもらった未来創造部会と出会い、社会人人生が大きく変わり始めたそうです。
所属するJTBビジネストラベルソリューションでは様々な法人の出張のお手伝いをしていましたが、コロナで出張需要が大幅に減り、オンラインで代替できる業務が増え、企業存続に危機を抱きました。「出張はあくまで手段あり目的ではない。本来の目的である商談の効果測定の方が重要なのでは?」と考え「Baoble(バオブル)」を発案しエントリーしました。磨き上げや複数回のプレゼンを経て2024年4月に正式に事業化、2025年3月に市場導入します。

「Baoble」とは、音声解析技術を用いて話し合いの雰囲気やコミュニケーション力を可視化するツールです。心理学の「メラビアンの法則」では相手に影響を与えるのは言語情報ではなく、90%以上は目や耳から入ってくる非言語情報であることから、Baobleは言語コミュニケーションを少し入れながら、メインは非言語コミュニケーションを可視化する製品となっています。

Baobleの着想の背景、社会課題・コミュニケーション課題に基づく機能などを説明した後、製品を作り上げていく2年間を通して勉強になったことを伝えました。「日頃、身近に転がっている『あったらいいな』『不便だな』と感じるものが新規事業や売れる商品の種になってきます。まずは日常に転がっている情報をコロコロコロコロ集めてみてください。」

学生から先輩へ Q&A

学生の時から起業を考えていましたか?

小糸さん:高校も大学もチアばかりやっていたので、自分がこういうことをやるというのは考えていなかったし、JTB入社後もずっと旅行やイベントやプロモーションの営業をやっていたので、未来創造部会に入るまでは、事業開発を自分がやるなんて全く思っていませんでした。
ただ、JTBは安泰だなと思っていた中、コロナがあって、不安を覚えたというところからこの事業に興味を持ちました。そのようなきっかけがあると、興味を持つことができるのかなと思います。
未来創造部会以外にも事業開発組織があり、別の方でも応募しましたが、最終プレゼン段階までいきましたが通らずに一度断念しようと思いましたが諦めず別の提案をしました。事業開発段階でも様々な挫折がありましたが、前に進むたびに解決方法を考えていくというのがいいと思います。

未来創造部会に応募したしたきっかけは?学生の時、起業するという現在の姿を想像することできましたか?

武井さん:未来創造部会に応募したしたきっかけは、上司から「こんな制度があるよ」と紙ぺら一枚を渡されて、てっきり勘違いして、ただの研修だと思って参加しました。 ある時、経費精算システムの営業をしていた際にお客様から「提案自体はすごくよかった」と褒めていただいた時がありました。それは失注してしまいましたが、上司から次はJTBに提案してみればとという後押しを受け、明るい気持ちで参加しました。お客様から提案をほめていただいたというのが大きな自信となったというのが裏のきっかけです。
大学の時、社会科の教員免許を取得したので、就活の際はJTBか教員か迷ったのですが、自分がやりたいのは旅行に関することだと思いJTBにしました。入社したら旅行に関する仕事をするものだと思っていたので、自分がシステムの部署に入るとも、新規事業をやることになるとも全く思っていませんでした。 目の前のことをいろいろやってきて、気が付いたらこんなところに来てしまったというような感じです。

私は頭の中で考えていることを言語化や表現することが苦手で、相手にうまく意図が伝わらないことがあります。うまく伝えるために意識していることはありますか?

武井さん:私はプレゼンが苦手で、人の前に立って喋ること自体が得意ではありません。けれども何回もプレゼンしなければいけない状況にありました。考えていることをそのまま伝えたとしても、相手にそのまま思っている通りに伝わっているとは限らないので、万人でもわかるような“例え”に置き換えることを心がけています。「シャンプーの詰め替えが面倒」や「フライパンの焦げつきが嫌」などみんな同じように想像できるので、そのようなわかりやすい例えに一旦置き換えて話すと、自分が思っていることと相手の受け取り方が一致しやすいので、伝わりやすくなるなと思っています。
難しい言葉や堅苦しい言葉を使ってかっこつけるよりも、ちゃんと中身が伝わるような表現に置き換えて話すことの方がコミュニケーションでは重要だと思っています。

小糸さん:私はチアで人前に出るタイミングがあったため、あまり緊張するタイプではなかったのですが、自分の伝えたことが相手に伝わっているかどうかわからない時がありました。とにかくターゲットになる方やかかわる事業パートナーなど色々な方々に、ちゃんと伝わっているか意見をいただいたり、逆に色々な見方を教えていただいたり、“壁打ち”が効果的ではないかなと思います。

野村さん:発言をするアウトプットと相手が話をしてくれるインプットがあり、アウトプットした後に必ずインプットがあると思うので、まず勇気をもってアウトプットすることが極めて大事です。様々なシーンで、もしかしたら的外れかもしれないけれど、少し勇気を出してまずはアウトプット(発言)してみると、必ずそれに反応してインプットが戻ってくるので、今度はそれをしっかり理解する努力をすること。 このアウトプットとインプットのラリーを色々な機会でやり続けることによって、伝えるということから伝わるということを意識しだすと思うので、その勇気と努力を持ち備えてアウトプットとインプットのラリーを進めていけば、自ずと表現力とコミュニケーション力は高まっていくと思います。

講演者のご紹介

野村 健児 氏 | 株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 事業推進チーム 事業推進担当課長

1998年新卒でJTB入社。入社以来メジャー法人企業の課題解決営業に従事。2021年本社で事業推進担当部長としてBtoB領域における社員着想による社会課題解決型新規事業の開発担当に着任し、これまで150事業近い近いインキュベーション(事業開発伴走)を実施。2024年からインターウォーズ(株)の執行役員を兼務し、地域や大学における新規事業を創出プログラム「イントレパス」を共同開発し販売開始。インキュベーターとインキュベーターとイントレプレナーの両輪で奮闘中。

小糸 美鈴 氏 | 株式会社JTB

東京都清瀬市の農家に生まれ、畑や村に囲まれた幼少期を過ごす。2016年総合政策学部卒業。同年JTB入社。約7年間法人営業担当として企業イベントやプロモーションに関連する事業を幅広く取り扱う。2021年、次世代の事業創出を目的とした社内活動、未来創造部会内にて多数の応募案から選出され、「ロス旅缶」を事業化。法人営業と並走しながら新規事業開発担当として多数の共創パートナーとともに、事業展開。

 

武井 綾香 氏 | 株式会社JTB

日本女子大学文学部史学科西洋史専攻(とはいえ古代エジプトを研究)を卒業。2018年に入社後、出張手配・経費算出システムに関わる部署に配属され、問い合わせ対応(2年間)、インサイドセールス・営業(2年間)、マーケティング(1年間)を担当。同時並行で2022年に新規事業『Baoble』を起業し、2年間の磨き上げを経て、2024年4月に事業化が決まり7月に経営企画部へ異動、Baobleチームが発足。現在は2名体制で開発・実証中。

 

■イントレプレナーとは

イントレプレナーとは、簡単に言うと「社内で起業する人=社内起業家」のことであり、企業内において新たな事業を立ち上げる際に、そのリーダーとなってプロジェクトを推進する人材を指します。ビジネスシーンによっては、「イントラプレナー」とも呼ばれています。近年の日本では、大手企業を中心に、社内公募制の新規事業プランに関するコンテストを開催するなど、イントレプレナーの支援・育成プログラムを手掛ける動きが加速しています。グローバル化が進む激しい競争社会を生き抜くために、近年の日本企業においてはさまざまな施策の展開が求められています。社内で新しい事業を立ち上げることもその一つであり、これまで参入していなかった分野で新しいビジネスチャンスを生み出す施策として、イントレプレナーを重視する企業も増えています。