阿部 成樹 文学研究科委員長
「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
第175回となる今回は、「研究科委員長に聞く大学院での学びと研究」というテーマで、大学院で学ぶ意義や学部との違い、研究の特徴などについて研究科委員長へインタビューした記事をお届けします。今回は文学研究科の阿部 成樹(あべ しげき)委員長にお聞きしました。
受験を検討している方や大学院という場所に関心をお持ちの方は、ぜひお読みください。
大学院はどのようなところか
大学院は、もしスポーツや武道に例えるなら、基礎訓練の段階を超えて「実戦形式」で知的活動に取り組むところだと思っています。実戦形式ともなれば、同じ競技であってもひとりひとりのプレースタイルを追求することで、個性的なプレイヤーとなる準備ができるのではないでしょうか。自らの関心を真剣に深め、同時に教員や周囲の院生と対話を重ねる中で、徐々に自分らしさを見出す場所。視線の先に、「学ぶ」ことを突き抜けた創造的な世界が見えてくるステップ。それが大学院ではないかと思います。
大学院で学ぶ意義について
学部までの学修のかなりの部分は、「プッシュ型」の学びと言えるでしょう。つまり、何か外的な目標(例えば卒業のため、就職のため、などなど)のために背中を押されて、「やるべきこと」として学ぶところが大であることは争えません。対して大学院の学びは、「プル型」です。自分の関心、テーマの面白さ、そして学問という純粋な知的活動の魅力に惹きつけられて学ぶのが、大学院です。他では得難いこのような満足感を得られることこそ、大学院で真剣に学んだ人は誰もが知っている学びの意義だと思います。
大学院での研究で求められること
大学院の学修は、研究の実践を軸としています。そして「勉強」と「研究」の違いは、他者に対して開かれているかどうかということだと思います。勉強は、ひとりでこつこつと行うのもいいでしょう。しかし学問的研究は、必ず言語によるアウトプットによって完結します。それは閉じられたモノローグではなく、少なくとも潜在的には他者に対して開かれたダイアローグでなければなりません。「研究」という語には、人によってはマニアックな深掘りというイメージがあるかもしれませんが、実際には他者との対話を前提として思考する技法に支えられた、理性的でオープンな営みであることを知ることが大切だと思います。
大学院進学を目指すにあたり、やっておいた方がよいこと
まずは学部で、学問の世界の面白さを深く味わうことが大切です。特に卒業論文、卒業研究は、たとえその成果が満足のいかないものであったとしても、研究の道筋を振り返って「面白かった」と感じられるのであれば、十分成功していると言えます。むしろ自分の卒論に満足できず、もう少し深めたい、視野を広げたい、という気持ちを持つことの方が、大学院での学修にとっては立派な準備になっていると言えるでしょう。また、ゼミでの議論や共同研究を通して、自らの考えを他者の視点から点検することの大切さを知るのも、重要な経験です。真に人を動かし前向きにさせるのは、外から与えられた目標ではなく、自らの内側に刻み込まれた経験であると考えられるからです。
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阿部成樹(あべ しげき)
中央大学文学部教授。パリ大学美術史学博士。専門は西洋美術史。
研究者情報データベース
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※この記事は2026年7月時点の内容です。