「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
商学研究科 博士前期課程1年の加藤 靖貴さんが統計数理研究所の特別共同研究員に採用されました。
この制度は、統計数理研究所が、統計科学またはこれに関連する分野を専攻する全国の国公私立大学の大学院生を研究者として受入れ、一定期間、特定の研究課題に関して研究指導を行うものです。
本記事では、この制度に応募したきっかけや研究課題、大学院進学を目指す人へのメッセージなどをお届けします。
大学院でのご自身の研究について教えてください
私の研究テーマは「ポートフォリオ最適化」です。
これは、「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言を、数学的に突き詰める研究です。世の中にある膨大な数の株式銘柄の中から、将来のリターンを最大にしつつ、価格変動の危険性(リスク)を最小にする「最も良い組み合わせ」を導き出すことを目指しています。
しかし、この「最も良い組み合わせ」を見つけるのは簡単ではありません。 特に難しいのが、正確に「リスク」を予測することです。
銘柄が数百、数千と増えると、どの銘柄がどの銘柄と「本当に強く連動して動くのか」を見極めるのは非常に困難になります。過去のデータだけを単純に分析すると、偶然の値動き(ノイズ)に惑わされ、未来の予測には使えない不正確な分析結果になりがちなのです。
私の研究では、この「高精度なリスク予測」という核心的な課題に挑戦しています。
大学院へ進学した理由と、中央大学大学院を進学先に選んだ理由を教えてください
金融機関への就職を考えていましたが、希望していた職種では高度な数学の知識が必要だと知り、大学院へ進学してもっと勉強したほうがいいのではないかと考えるようになり大学院へ進学しました。
統計数理研究所の特別共同研究員に応募したきっかけを教えてください
統計数理研究所に勤めていらっしゃる先生方と円滑に研究活動を行いたかったということが主な応募理由です。また、他大学の大学院生や理系の大学院生の方との繋がりを持てると考えたため特別共同研究員制度に応募しました。
応募にあたっては、どのような準備をしましたか
私の場合、統計数理研究所の先生方から直接お声がけをいただいたことが、応募のきっかけとなりました。
その後、大学院のゼミの先生(指導教員)とも今後の研究の進め方についてよく話し合い、ご了承をいただいた上で、必要な書類を準備して応募手続きを行いました。
ただし、この制度への応募プロセスは、必ずしも一律ではないようです。私のようなケースは少し稀かもしれませんので、その点はご注意いただく必要があるかと思います。
伺った話では、私とは逆に、大学院生側からご自身の研究テーマと関連の深い統計数理研究所の先生を探し、直接コンタクトを取って相談した上で応募に至るケースもあるようです。
応募に至る経緯はケースバイケースですので、ご自身の状況や指導教員のご意見を踏まえて、最適な方法をご検討いただくのが良いかと思います。
特別共同研究員としては、どのような研究課題に取り組んでいますか
統計数理研究所でのゼミの様子
統計数理研究所では、大学での研究テーマの核心的課題である「高精度なリスク予測」を実現するための、具体的な計算手法(アルゴリズム)の研究開発を行っています。
具体的には、「ガウシアングラフィカルモデリング」という統計手法に着目しています。
この手法は、一見複雑に絡み合ったデータの中から、偶然による見せかけの連動(ノイズ)を取り除き、「本当に意味のある、直接的なつながり」だけを賢く推定する力を持っています。
私の研究では、この手法を用いて、膨大な銘柄(高次元データ)を扱う場合でも、安定的かつ高精度なリスク予測モデルを構築できる「新しいアルゴリズム」の開発に取り組んでいます。
統計数理研究所での研究活動と、ご自身の研究(修士論文の執筆)とのつながりを教えてください
統数研で開発している「アルゴリズム」は、私の研究テーマである「ポートフォリオ最適化」の最も重要な「基盤(土台)」にあたります。
どれほど優れた最適化の理論があっても、入力する「リスク予測」のデータが不正確であれば、良い結果は得られません。
統数研での研究(手段)によって精度の高い「羅針盤」を完成させ、それを用いて大学での研究(目的)である「最も良い組み合わせ」を発見する。この2つが両輪となって、私の研究は成り立っています。
中央大学大学院に進学してよかったことを教えてください
学部生のころにお世話になった先生方に引き続き指導を受けられるので、1から関係を築く必要がなく、博士前期課程1年時からスムーズに勉強や研究ができるという点で中央大学大学院に進学してよかったと感じています。
授業や研究活動以外の時間はどのように過ごしていますか
リフレッシュするために体を動かしたり、映画鑑賞などをしています。また、旅行や余暇に必要なお金を貯めるために週2程度でアルバイトをしています。
大学院進学を目指す人へのメッセージをお願いします
大学院へ進学する理由を明確にしておくと、研究がやりやすくなると思います。進学理由が曖昧な方でも自分の考えを深めたり、視野を広げる良い機会になると思います。大学院進学を目指す人は、ゼミの先生や先輩などからお話を聞き、情報を集めることが大切だと思います。頑張ってください!