「究める」では、大学院に関わる人や活動をご紹介しています。
今回は、2024年度後期にドイツへ留学した相田 幸希さん(文学研究科 博士前期課程 西洋史学専攻)に留学のきっかけや留学先での様子を伺いました。

相田 幸希(あいだ こうき)さん 文学研究科 博士前期課程 西洋史学専攻
相田さんは、交換留学制度を利用してドイツのヴュルツブルク大学に半年(2024年度後期)留学しました。大学院での研究テーマは「19世紀ドイツにおける女性兵士の記憶-解放戦争における男装した女性兵士を事例として-」です。大学院進学を考えている方はもちろん、進学後に留学を考えているみなさんは、ぜひご覧ください。研究活動を行う大学院ならではの留学の視点も見えてきます。
留学のきっかけや留学を決めた理由について教えてください。
留学のきっかけは指導教授の「一度留学を経験してから進路について考えてみてはどうか」という言葉でした。私が留学に行くことを決める前は、2年間で修士課程を修了し、そのまま就職することを考えておりました。しかし一方で、このまま研究という道を閉ざしてしまってもよいのかという気持ちもあり、当時の私はかなり悩んでおりました。その中で、指導教授に進路について相談したところ、上記のような提案をいただき、それと共に、以前からドイツに住み、そこでドイツの空気を味わってみたいという気持ちを抱いていたため、そこで留学に行くことを決意しました。
留学先ではどのような授業・プログラムに参加しましたか。

留学先においては、留学生向けのドイツ語を学ぶ授業、ドイツ語の単語や文法をオンラインで学ぶ授業、ドイツの歴史、料理、文化などを学ぶ授業を履修しました。留学生向けのドイツ語の授業はもちろん全てドイツ語で行われたため、最初の頃は先生の言葉がほとんど理解できず、授業についていくことがほとんど出来ませんでした。しかし、授業で扱う範囲について予め予習をしたり、分からない場合には先生にもう一度聞くなどを通して、段々と授業についていくことが出来るようになり、授業の終盤では楽しんで授業が受けられるようになりました。また、単語と文法に関するオンラインの授業は、課題を提出するという形式であったため、自分のペースでこなすことができ、日々のドイツ語の学びをより豊かにしてくれました。また、ドイの料理、歴史、文化に関する授業は、基本的には英語で行われるため、最初から楽しく受講することが出来ました。また、ドイツの基礎的な知識について改めて学ぶことが出来たため、とても有意義な授業となりました。
留学先での学びとご自身の研究のつながりについて教えてください。
今回の留学先での学びと私自身の研究との繋がりに関しては、直接的な繋がりはないものの1つあります。
それは、ドイツにおける男女、ジェンダーのあり方について肌で感じ学ぶことが出来た点です。私は現在19世紀のドイツにおけるジェンダーに関して研究しているため、一見すると現在におけるドイツでのジェンダーのあり方は、関係がないように見受けられるかと思います。しかし、現在のジェンダーのあり方は、私が研究対象としているような、19世紀ドイツのジェンダーのあり方が礎となっているという面もあります。そのため、私自身の19世紀ドイツのジェンダーに関する研究を現在のジェンダーのあり方に結びつける上で、現地で学んだジェンダーのあり方はとても役に立つのではないかと思います。また、これは私自身の具体的な活動を通してなのですが、様々な国から来ている留学生のジェンダーに対する価値観も、アンケート調査を通じて知る事が出来ました。これはドイツに限定している訳では無いものの、世界全体でのジェンダーを少し考える上で役に立つのではないかと思います。
留学を通じて、印象に残っていることは何ですか。

留学先で印象に残っていることは、男女が同じような立ち位置で生活をしているという点です。これは現地の人々と話していると感じるのですが、男女だからこうすべきであるという話は一切生じることはなく、性別ではなく個人個人で関わりあっているという印象を受けました。人とは性別だけで判別出来るものではなく、それぞれ異なり、違った意見を持っています。だからこそ、様々なあり方を個人の個性として受け入れる現地の人々は、とても素晴らしいなと思いました。また、さらに印象に残っている点は、日本と比べ他人に対して感謝の気持ちを述べる人が多いという点です。ドイツにおいて道を譲ってあげたり、ドアを開けておいてあげたりなどをすると、ドイツの方はすぐに感謝の気持ちを述べてくれます。一方で、日本では多くの人が他人から優しさを受け取ることが当たり前であると考えてしまっている傾向があり、他人に対して感謝の気持ちを述べられない人が多いように思えます。日本の人が互いに助け合い、協調しながら生きていくためには、まずは互いに感謝し合うことが必要なのではないかと思います。
留学を通しての感想
留学を通して、改めて日本は素晴らしいなと思うようになりました。というのも、他人に対して気を遣い、協調し合うことが出来るのは、やはり日本の人々ならではだなと思ったからであります。今回の留学を通してドイツの人々以外にも、多くの国の留学生と交流し、アイスランド以外のヨーロッパ諸国を旅行する中で、多くの国の人々を目にしました。そこで、他人のことを気遣いながら言葉を発し、行動するのは日本人だけであるということを改めて認識しました。例えば、日本人が互いに話し合う時には、相手の話を聞いた上で自分の意見を言うということが一般的ではないかと思います。しかし、それ以外の国では、相手の意見を踏まえずに一方的に意見を述べるということが多く、互いの主張をぶつけ合うような印象を受けました。もちろん自分自身の意見を述べることは大事ですし、互いの意見をぶつけ合うということも重要だと思います。しかし、その一方でそれが争いに繋がるということも考えられるかと思います。だからこそ、時には互いに気を遣い譲り合うという精神は重要であり、それを持つ日本人は平和な世界を作る上で欠かせないのではないかと思います。
そして私自身としても、この日本という国を改めて好きになることが出来ました。しかし、私が日本の素晴らしさに気付き、好きになることが出来たのも、偏に留学を通して海外に居住し、日本との違いを肌で感じることが出来たからではないかと思います。だからこそ、今大学や大学院に在学している人達には、出来る限り留学に行ってもらい、日本との違いを肌で感じて欲しいと思います。そして、その経験を踏まえた上で、日本という国との向き合い方について考えて欲しいです。また余談ですが、留学に行った際にはぜひそこでしか出来ないことに挑戦してみてください。長期間に渡り海外に居を構えるという経験は、長い人生の中で、かけがえのない貴重な経験となります。だからこそ、帰国時に悔いが残らないように、現地でしか経験出来ないことを沢山経験してください。そして、何よりも留学生活を思いっきり楽しんで欲しいと思います。