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ウナギを守ることは河川の生態系全体を守ること --淡水生態系における生物多様性保全のシンボル種として機能

2020年05月29日

国立大学法人 神戸大学
国立大学法人 東京大学
中央大学
 

 神戸大学大学院理学研究科の板倉光研究員(兼 メリーランド大学・海外学振特別研究員)、東京大学大気海洋研究所の脇谷量子郎特任研究員、ロンドン動物学会のMatthew Gollock博士、中央大学法学部の海部健三准教授からなる国際研究チームは、日本に生息するウナギ属魚類2種(ニホンウナギとオオウナギ)と周辺の淡水生物を対象として野外調査を実施し、ウナギ属魚類が淡水生態系の生物多様性保全の包括的なシンボル種として機能する可能性を世界で初めて示しました。ウナギを守り、回復させる活動を通じて、生物多様性の消失が著しい淡水生態系の修復・保全に大きく貢献できるものと期待されます。

 この研究成果は、5月29日(現地時間)に、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載される予定です。

ポイント

・ ウナギ属魚類が淡水生態系の生物多様性保全の包括的なシンボル種として働く可能性を世界で初めて示した。
・ 河川環境の保全と回復を通じてウナギ属魚類の個体群を回復させる活動は、ウナギのみならず、淡水生態系全体の保全と回復へも貢献すると推測される。
・ ニホンウナギとオオウナギ(図1)がアンブレラ種・指標種・フラグシップ種(※1)の全ての概念に当てはまることを示した。
・ ニホンウナギとオオウナギは河川河口から源流域付近までほぼ流域全体に生息すること、両者の河川内分布域は淡水生物の中で最も広いことを明らかにした。また、両種が淡水生態系の高次捕食者であることを窒素安定同位体分析(※2)から明らかにした。
・ ウナギ属魚類と他の通し回遊生物(生物多様性の指標)の量的関係を検討し、ウナギ属魚類は海と川の接続性の良い指標種となり、これを介して淡水生態系の生物多様性の指標となることを明らかにした。

図1 ニホンウナギ(Anguilla japonica; 左)とオオウナギ(A. marmorata; 右)

< 研究内容について > 
中央大学 法学部准教授・IUCN種の保存委員会ウナギ属魚類専門家グループ
海部 健三(かいふ けんぞう)
TEL:042-674-3243
E-mail:kaifu◎tamacc.chuo-u.ac.jp (◎を@に変換して送信してください。)

< 報道担当 >
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