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グローバル・パーソンメッセージ vol.076 大村 望実さん
2026年10月07日
現場の課題に向き合い、実務スキルで応える
中央大学での学びと現地調査が育んだ国際協力の軸

大村 望実さん│JICA海外協力隊員
経済学部国際経済学科 2018年度卒業
本学経済学部卒業後、食品商社での社会人経験を経て、現在はJICA海外協力隊員としてタンザニアの国立運輸大学(National Institute of Transport)でPCインストラクターとして活動する大村望実さん。幼少期に抱いた国際協力への関心を原点に、本学での学びや課外活動、FLPの現地調査、民間企業での実務経験をどのように現在のキャリアへとつなげてきたのか。また、現地の経験から感じた国際協力の意義や、グローバルな舞台を目指す後輩たちへのメッセージについて語っていただきました。
国際協力への関心の原点
小学生の時に読んだ『世界がもし100人の村だったら』をきっかけに、「なぜ生まれ育った国が異なるだけで、これほど生活環境や機会に差が生じるのか」という疑問を抱いたことが、私の国際協力分野に携わる原点です。具体的なアプローチを模索する中で進学先に中央大学経済学部を選んだのは、学部を超えて国際協力について多角的に学び議論できる「ファカルティリンケージ・プログラム(FLP)」の存在を知り、自分に必要な学びを得られる環境だと確信したからです。
部活動とFLPで培った「やり抜く力」と「現場を見る視点」
体育連盟アーチェリー部で活動していた学生時代(4人並ぶ部員の右端)
大学時代は体育連盟アーチェリー部に所属しながら、学業、FLPのゼミ活動(開発経済学)、アルバイトに打ち込みました。始発から終電まで活動が続く多忙な日々でしたが、限られた時間の中で優先順位を見極め、粘り強くやり切るタフさを養うことができました。また、体育会やフィールドワークなど異なる環境を行き来したことで、どんな現場でも相手を尊重し信頼関係を築く柔軟性も養うことができたと感じます。
この「困難に動じずやり抜くタフさ」と「相手目線に立って関係を構築する力」は、社会人時代の現場改善や交渉はもちろん、現在タンザニアで過酷な環境を乗り越えながら現地主導の活動を推進するうえでも、自分を支える大きな糧となっています。
FLPの現地調査でフィリピンの病院を訪問
また、私の視野を大きく広げたのが、FLPでの学びと現地調査の経験です。2年時の担当教諭の離任に伴い、3年時に林光洋先生のFLPゼミへ編入した際、林先生やゼミ生の方々が体育連盟に所属する私を理解し、温かく受け入れてくださったことが非常に心に残っています。そのおかげで、忙しい中でも学業と部活動を最後まで両立することができました。
FLPの現地調査で訪れたミャンマー(2年時)とフィリピン(3年時)での経験は、現場の課題を肌で感じる貴重な機会となり、現在のキャリア選択にも深くつながっています。2年時の現地調査でミャンマーの経済について調査する中で、物流の不備が途上国経済の成長を阻む重大なボトルネックになっている実態を目の当たりにしました。その経験が、卒業後に物流やシステムに関わる業界を選び、キャリアを築くきっかけになりました。
また、FLPでの現地調査や授業を通じて、支援を行うには単なる熱意だけでなく「相手のニーズを正確に把握するコミュニケーション能力」と「現場で役立つ実践的なスキル」が不可欠であると痛感しました。この気づきが、卒業後にまず社会人としての実務経験を積み、還元できる専門性を身につけた上で国際協力の現場に挑むという、私のキャリア選択の軸になりました。
民間企業での6年間で培った「課題解決と改善力」
大学卒業時もJICA海外協力隊への参加を検討しましたが、「まず現場で還元できる具体的なスキルや知見を身につける」という判断から、食品商社(国分グループ本社株式会社)へ入社しました。物流統括部および物流・システム部門で約6年間、食品倉庫の設計、営業提案、現場の生産性改善に従事しました。
日本の高度に仕組み化された物流網の設計や運用に携わる中で、多様な課題を特定し、それぞれの現場に合った改善策を組み立てる実践的なプロセスを習得しました。この民間企業で培った「課題解決や交渉のプロセス」は、国際協力の現場でも生かされており、現地で起きている事象の背景や本質的な課題の把握に早い段階から取り組むことができました。
また社会人時代に日本各地で仕事をした経験を通じて、単に同じ手法を汎用展開するのではなく「その現場に合った改善や導入方法」を考える重要性を学びました。だからこそタンザニアでも、PCや日本語の知識をただ教えるのではなく、「どうすれば現地で最も活かせる形になるか」を考えながら、常に相手目線に立って提案や指導を行うことを心がけています。こうした視点を持って動けることは、実務経験があったからこその強みだと実感しています。
タンザニアでの実践
―文脈を理解し、相手の主体的な意思決定を尊重する
2025年1月より、JICA海外協力隊としてタンザニアの国立運輸大学(National Institute of Transport)へ派遣され、PCインストラクターとして基礎ITスキルの指導や教材作成に取り組んでいます。
加えて、現場のニーズに基づいて短期の基礎日本語コースを開設し、5S KAIZENの特別講義などをJICA専門家とともに実施するほか、日本文化やマナー紹介にも取り組んでいます。また、より高度な支援を行えるよう協力隊活動と並行して神戸情報大学院大学(フルオンライン)で情報分野の専門知識を学んでいます。
異なる文化の中で活動する中で、国ごとにグラデーションはあるものの、「タンザニア人」と一括りにできるものではなく、一人ひとりと向き合うことの大切さを実感しています。また、一見すると国民性のように思われる行動も、その土地の社会環境やインフラによって生み出されていることが少なくありません。
現地で活動する上で、私が大切にしているのは、日本のやり方を一方的に「よし」として持ち込むのではなく、「この仕組みが変われば、彼らの生活や仕事がより良くなるかもしれない」と思える課題に対して、彼らと同じ目線で共に悩み、改善していく姿勢です。例えば、現地でタイムマネジメントの課題に直面した際も、表層的な現象のみを非難するのではなく、都市部の深刻な交通渋滞など、背景にある社会インフラの要因を客観的に観察・特定しました。その上で、規律を強制せず、「時間を管理することで生じる具体的な機会損失の防ぎ方やメリット」を提示し、最終的な選択と意思決定は彼ら自身の文化の文脈に委ねるアプローチをとっています。
経済成長と人々の暮らしの活気が感じられるダル・エス・サラームの街並み
また、タンザニアでの活動を通じて、日本にいた頃には気づかなかったことや、新たな学びも多いと感じています。
タンザニアは農村地域が多い一方で、私が生活しているダル・エス・サラームには商業ビルが立ち並び、経済成長の勢いを肌で感じることができます。現地の同僚から「海外の人から、タンザニアは未だにジャングルの中にある貧しい国だと思われていて悲しい」と言われたことがありました。その言葉を聞いて、そうした固定的なイメージによって現地の人々が傷ついていることに気づかされると同時に、この国に関わった一人として、タンザニアの等身大の正しい姿を日本に伝えていきたいと強く感じています。
また、生き方の面でも彼らから学ぶことが多くあります。将来の計画に追われがちな私に対し、同僚たちは「Nozomi, Life is once. Enjoy your life」と声をかけ、厳しい環境の中でも今この瞬間を楽しみ、助け合って生きる豊かさを教えてくれます。現地の課題に向き合い、一緒に改善に取り組む一方で、彼らの温かな生き方から私自身も多くの学びを得ています。そうした相互の学び合いの中で、日本にいた頃には忘れがちだった「心の豊かさ」や「今を生きる大切さ」を深く学んでいます。
現地学生へ基礎ITスキルを指導するBasic Computer Applicationクラス
JICA専門家と連携して実施した5S KAIZEN特別講義
現地教員とともに教育活動に取り組む
現地のニーズに応えて開設した日本語クラス
日本語クラス修了式で受講生と記念撮影
関係者との対話を重ねながら活動を推進
私にとってのグローバルパーソン
私にとって「グローバルに活躍する」ということは、世界のどんな場所であっても、自分の持っている力を誰かのために発揮できることだと思います。私自身、まだ理想とする人材になれているわけではありませんが、これからも「どうすればこの世界の役に立てるのだろう」と問い続け、行動を起こし続けていきたいと考えています。
グローバルな舞台を目指す後輩たちへのメッセージ
ー「なぜ自分は世界へ挑戦したいのか」を問い続けよう
現地の同僚たちとの信頼関係も活動の大切な基盤となっている(Women’s Day 2025)
社会に出て、さらに現在タンザニアの大学で現地の学生たちと接する中で、「自分の学びたいことに没頭し、何かに全力で打ち込める時間や環境」は決して当たり前のものではないのだと実感しています。だからこそ、大学時代の恵まれた環境と有限な時間を決して無駄にせず、興味の芽があれば迷わず飛び込んで、失敗を恐れずに挑戦し、大学生活を思いきり楽しみ、学び尽くしてほしいなと感じます。
私自身、小さい頃から国際協力に携わりたいという夢を持っていました。目標があったからこそ努力や学びを前向きに続けることができ、困難に直面したときも前に進む原動力となりました。また、大学時代に「なぜ自分は日本を飛び出して世界で挑戦したいのか」「世界に対して何ができるのか」を深く考えた経験は、海外で活動する現在でもゆるぎない自分の土台となり、つらいときに立ち戻れる拠り所になっています。
夢や目標は無理に見つける必要はありません。しかし、ふと「やってみたい」「この課題を解決したい」と思えることに出会えたなら、まずは一歩踏み出してみてください。夢中で取り組んだ経験も、思い通りにいかなかった失敗も、将来どのような国や環境に飛び込んだとしても、自分を支えてくれる最強の糧になります。
大学時代という特別な時間を悔いなく使い、自分らしい道を歩んでいかれることを心から応援しています。
■プロフィール
大村 望実さん|Nozomi Omura
埼玉県出身。2018年度経済学部卒業
在学中はファカルティリンケージ・プログラム(FLP)国際協力プログラムに所属し、国際協力、公衆衛生学、開発経済学を学ぶ。卒業後は国分グループ本社株式会社に入社し、物流統括部および物流・システム部門にて食品倉庫の設計や生産性改善業務に従事。2025年1月よりJICA海外協力隊員としてタンザニアの国立運輸大学(National Institute of Transport)に派遣され、PCインストラクターとして活動している。2025年10月からは神戸情報大学院大学にて情報分野の専門知識を学びながら、現地での活動を続けている。