
▲中央大学スキー部の指導をする様子(写真左)
2019年度は、全日本スキー選手権大会アルペン競技スピード系種目(男子スーパー大回転)で当時4年だった髙橋大成が初優勝し(2007年以来の快挙)、富井大賀(法2)が第93回全日本学生スキー選手権大会アルペン男子1部回転で初優勝するなど、中央大学スキー部にとって喜ばしい成績を収めることができました。
さらに、2020年4月には、ノルディックスキー・コンバインド(複合)やクロスカントリー、アルペンで将来有望な1年生が入部してきました。
これから次のシーズンに向けて始動という2020年春に、新型コロナウイルスの大流行により、部員たちは大学に登校することもできなくなりました。生活拠点は合宿所でなく、それぞれの地元で練習を重ねながら、オンライン授業を受けています。しかし、そのような状況下にありながら、スキー部が毎週行っているリモートミーティングでの雰囲気はとてもよいものです。1年生にとっては上級生の顔はリモートでも分かりますが、一緒に活動ができないぶん、上級生の性格等が分からないために多少心配な面もありますが、各部員がそれぞれの目標に向け、しっかりと生活をしてトレーニングしているのを実感しています。
この勢いに乗り、チーム力を高め、全員で総合優勝を目指していきたいと、私と5名のコーチが一丸となって指導しています。さらにその先には2022年の北京、2026年にはミラノ・コルティナダンペッツォでの冬季オリンピックが控えています。中央大学スキー部から一人でも多くの部員が出場できることを願っています。
さらなる飛躍を期待して中央大学スキー部に入部。そして世界へ
スキーを始めたのは8歳です。2学年上の兄の姿に憧れてのめり込んでいきました。高校時代には陸上とスキーを掛け持ちし、高校3年時には、陸上の3,000m障害でインターハイにも出場しました。
高校卒業後は中央大学経済学部に進学し、スキー部に入部しました。中央大学に入学した理由は、当時のヘッドコーチ横山久雄さんに指導を仰ぎたかったからです。当時のスキー部は横山さんのもと、世界を意識したトレーニングを行い、量も質も豊富で、常に新しいチャレンジをする勢いのあるチームでした。
在学中の勉強については、かなり真面目に授業に出ていました。どちらかというと要領が良いタイプではなかったので、学部事務室や先生方のところにたびたび足を運んで、1歩ずつコツコツと勉強していたと思います。一つ一つを継続していくことは、競技者においても同様で、忍耐をもって取り組むことは重要であると、今でも意識しています。
4大会連続で冬季オリンピックに出場

▲中央大学在学中に初出場した冬季オリンピック アルベールビル大会(1992年)では5種目に出場しました。写真は15kmパシュートの様子
選考会では、海外で、初めてのワールドカップ参加で不安ばかりでしたが、ライバルの社会人選手を上回り、その後、オリンピックへの出場が決まったときは、故郷の人々、恩師、友人やチームメイト等、多くの方々から祝福の言葉や激励をいただいたことをよく覚えています。
初めて出場したオリンピックの試合では、それまで出場した数々の国内大会と比べて、レベルも高く、規模も大きく、圧倒されましたが、この舞台で自分のパフォーマンスを存分に発揮したいと強く思いました。その後は、94年リレハンメル大会、98年は地元で開催された長野大会、02年にはソルトレークシティ大会と4大会連続で出場させていただきました。
4回のオリンピックを経験させていただき、そのすべての大会が素晴らしい思い出となりました。決して満足のいく結果が残せたわけではありませんし、すべてのレース後には、口惜しさを感じ、課題が残ることになりました。しかし、次のオリンピックに向かって努力してきて、チームメイトと共に日本のクロスカントリー史上初のリレーでの入賞することもできましたし、個人においても6位入賞することができ、大きな喜びを感じました。この時は、憧れのノルウェー選手に、大舞台で勝つことができて嬉しかったことを思い起こします。
アスリートとして活動する後輩の皆さんへ
私自身は現役時代も今でも、成績が良いと浮かれてしまい調子に乗ってしまうタイプなので、常に初心を忘れずに、新しい気持ちでチャレンジしていくように心がけています。
また、クロスカントリーに限らず、どんなことにもつながりますが、忍耐をもってそれを継続していくことが大切なのだと思います。現在はスキーを離れたところでは、会社員として仕事をしていますが、そこに立ち向かって一つ一つ紐解いていくようにしています。特に、スキー部で指導する上で、部員たちには、学業だけでなく、日々の生活の中にも、スキーへの意識を持って過ごすように指導しています。
クロスカントリーは大自然の中で行われ、とても過酷な競技です。継続と繰り返し、悔しい思いであるとか、競技者である以上は常に持ち続けるものです。オリンピックでも全日本でも、常にその繰り返しでした。スキーに限らず、どんなスポーツにも通じることですが、初心を忘れずに、常に振り返りながらチャレンジしていくことは大切です。さらにちょっとしたことでも継続する。
大学生活は4年で終わりますが、競技は卒業後も続ける人が多いと思います。自分自身に納得しながら続けていくと、いろんなことをやれそうな気がします。
在学中は勉強も競技も悔いのないように頑張ってください。
■プロフィール■
今井 博幸(いまいひろゆき)さん
元クロスカントリースキー選手。指導者。
<略 歴>
1970年生まれ。長野県上水内郡信濃町出身。
中央大学経済学部経済学科 1992年卒業(1988.4入学→1992.3卒業)
8歳でスキーを始め、長野県長野吉田高校出身。中央大学卒業後はNTT東日本長野に所属。
2006年に競技を引退後は、NTT東日本埼玉事業部で業務に従事するほか、中央大学スキー部の監督として指導を行っている。
<現役時代の活躍>
■冬季オリンピック
中央大学在学中のアルベールビルオリンピック(1992年)から4大会連続出場。1998年、地元開催の長野オリンピックでは、リレーで日本クロスカントリースキー史上初の入賞(7位)に貢献。 2002年のソルトレイクシティオリンピックでは、50kmクラシカルで日本人選手史上最高の6位入賞を果たした。
出場種目:(1992年アルベールビル大会)クラシカル10km・30km、パシュート、フリー50km、団体リレー
(1994年リレハンメル大会)クラシカル10km・50km、パシュート、フリー30km、団体リレー
(1998年長野五輪)クラシカル10km・30km、パシュート、フリー50km、団体リレー
(2002年ソルトレイク大会)フリー30km、クラシカル15km・50km、パシュート、団体リレーに出場
■そのほかの大会
ノルディックスキー世界選手権:1993年から6大会連続出場。2003年に50kmフリーで男子長距離史上最高位の9位。
国内大会:全日本選手権で3年連続4冠となるなど個人通算25勝(日本歴代2位)を残している。