大学院

【究める vol.30】活躍する修了生 久保 隆行さん(経済学研究科2016年度修了)

2020年12月14日

「究める」では、大学院に携わる人々や行事についてご紹介します。
今回は、2016年度に経済学研究科を修了し、現在は立命館アジア太平洋大学で専任教員として勤務されている久保 隆行さんにお話を伺いました。

写真提供:日本都市学会

 久保 隆行(くぼ たかゆき)さんは、

2016年度に経済学研究科 経済学専攻 博士後期課程を修了し、博士号(経済学)を取得。現在は、立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋学部で教授として勤務されています。

今年10月には、博士論文をもとにして出版した『都市・地域のグローバル競争戦略』(時事通信社、2019年)が2020年度日本都市学会賞(奥井記念賞)を受賞しました。

本記事では、ご自身の研究や学会賞を受賞した著書、大学院生時代や現在の生活についてお話を伺っています。

研究テーマについて

◆研究テーマ(研究分野、対象、方法等)について教えてください。

私の研究テーマは、都市の国際競争力を経済学的に分析し、その結果を政策に活かす方法論を構築することです。
中央大学大学院の博士論文では、日本を含む世界各国の主要な都市を対象とした評価指標(ランキング)を分析し、都市のグローバルなネットワークのなかでの国際競争力について評価し、それぞれの都市を比較検証する手法を明らかにしました。さらに、日本の地方都市の一つである福岡市を対象にケーススタディを行い、本研究で編み出した独自の評価手法を用いて福岡市の国際競争力を評価したうえで、今後とるべき政策の在り方について論じました。

◆上記でお答えいただいた研究テーマを選んだ背景について教えてください。

私はもともと工学系の出身で、当初は建築および都市計画の研究を行い、専門的なスキルを活かしながらまちづくりの業務に従事してきました。長年、より良いまちづくりの在り方について考察を深めてきた結果、都市のハード面だけではなく、経済学的な観点からの分析と政策によるソフト面での取り組みも重要であると認識するようになりました。さらに、東京圏への一極集中が進むなか、日本の地方圏の衰退を実感するようになりました。経済のグローバル化が進むなかで、地方圏の都市が今後独自に国際競争力を備えていくことこそが、日本全体の成長への糸口であるとの思いから、本研究テーマを設定しました。

著書『都市・地域のグローバル競争戦略』について

『都市・地域のグローバル競争戦略』(時事通信社、2019年)

大学院在学中に指導教官の先生方からいただいた熱心なご指導のおかげで、私の博士論文をベースとした『都市・地域のグローバル競争戦略』(時事通信社、2019年)は先般、2020年度日本都市学会賞(奥井記念賞)を受賞いたしました。この著書は、博士学位論文「国際的ベンチマーキングを活用した都市の競争戦略に関する研究」を一般の人にもわかりやすく読めるように編集して出版したものです。

内容につきましては上述したとおりですが、すでに多くの研究者のみならず、地域づくりにかかわる公務員や実務家にも手に取っていただいているようです。この本を出版する以前にも指導教官の山﨑朗先生と共著で『インバウンド地方創生』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2015年)、『東京飛ばしの地方創生』(時事通信社、2016年)を出版させていただいており、それらの続編として地方創生に活用してもらいたいという意図も持ちつつ出版に至りました。

大学院での日々について

私は、公的なシンクタンクの研究員として勤務しながら、博士後期課程に3年間在籍しました。シンクタンクでの仕事と博士学位取得に向けた研究の両立は一見困難に見えましたが、仕事のために進めた調査の結果を研究に活用することもでき、比較的順調に博士論文を完成することができたと実感しています。とはいえ、平日は仕事で夜間と土日のほとんどは博士論文に費やしましたので、家族からの理解とサポート抜きでは達成できなかったと思い感謝しています。

この間で最も印象に残っているのは、山﨑先生からほぼ毎日のようにメールやスカイプでの指導を受け続けた日々と、2017年1月に行われた博士論文の最終審査会にて、私の研究が先生ご自身が残された世界都市研究にかかわる課題をカバーできたと仰っていただいた瞬間のことです。

大学教員となった現在について

2017年10月から大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)に勤務しており、3年が経過しました。3年間勤務してようやく大学教員としての一定のスキルを身に着けることができたと思っています。APUは、学生の半数が留学生で、私も授業の半数は英語で開講しています。私は主に観光学系の授業を担当しており、都市や地域におけるインバウンドを含む観光客の属性や消費にかかわる分析を行いながら、観光政策や観光開発について学生とともに具体的に検討しています。さらに、大分県内には多くの観光資源が存在するため、各地を学生とともに訪問しフィールドワークを頻繁に行っています。国内外の学生からは学ぶことも非常に多く、忙しくも充実した日々を過ごしています。

研究者を目指す大学院生や学部生に向けて

上述したように、私は最初から研究者や大学教員を目指していたわけではありません。自分が最も得意な専門分野でのスキルを身に着けたうえで、仕事を進めていくなかで経済学にも興味を持ち、自然に研究者への道が拓かれてきました。私の専門分野は経済学を含めてすでに複数存在し、ここでは詳しく記載しませんでしたが、留学や駐在などの海外経験もかなりあります。

皆さんには、是非とも中央大学での現在の専攻を在学中に極める気持ちで学修に取り組んだうえで、その他の分野への関心も養っていただければと思います。さらに、海外での経験には苦労が付きものですが、その経験は必ず自分を強くし将来に活かせるはずですから、チャンスを見つけて海外に飛び出してください。皆さんの当面のゴールは卒業・修了でしょうが、より長期的なゴールを設定しつつ、グローバルかつ多彩なスキルを身に着けていってほしいと思います。