広報・広聴活動
警察官を装った模擬的特殊詐欺の実験を実施 ~携帯電話に出た学生の5人に1人が被害に遭う可能性を示唆~
2026年02月16日
※本プレスリリースは、 学校法人中央大学、日本貸金業協会との共同発表です。
概要
中央大学文学部教授の有賀敦紀と大学院文学研究科学生の久保夏海さん、文学部学生の木次恵さん、髙橋靖知さんは、日本貸金業協会※) と連携して、神奈川県警察本部の協力を得ながら、警察官を装った模擬的特殊詐欺の実験を、中央大学に在籍する学生を対象に行いました。
本実験は、警察を騙(かた)って個人情報を聞き出す典型的な電話詐欺を再現して、特殊詐欺被害の実態および被害に至るまでの心理プロセスを捉えることで、被害防止に役立つデータを取得することを目的としました。
警察官を装った“掛(か)け子役”が148人の大学生の携帯電話に電話番号が通知される状態で架電した結果、25人が電話に出て、このうち最終的に5人が個人情報(LINE ID)を提供する直前までに至りました。今回得た実験結果から、電話に出た大学生は通話中に怪しいと思っても通話を継続してしまう傾向があり、その結果被害に遭うことなどが明らかになりました。
この結果を踏まえて有賀教授は、「『知らない電話番号からの着信に出ないことが一番の防犯』であると考えます。また、どうしても電話に出なければならない場合には、『詐欺かもしれない』と予測し、お金の話や個人情報など詐欺を疑うヒントを探すつもりで出ること、電話を切りにくい会話中でも、怪しいと思った段階で電話を切ることが必要だ」と述べています。
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(※)貸金業法に基づく自主規制機関(会長:倉中 伸、本部:東京都港区) https://www.j-fsa.or.jp/
参考情報
本取組については、2026年2月16日(月)に、別途、神奈川県警察本部が単独での会見付き記者発表を行っています。
研究内容
1.背景
日本国内での特殊詐欺の発生件数および被害総額は年々増加しており、都道府県別で見ると神奈川県の被害は多い傾向があります。実際、神奈川県内の特殊詐欺の年間被害総額は、88億円(1,766件、2025年9月末時点)となっており、前年同時期の2倍以上になっています。近年、特殊詐欺の被害者は若者にも広がっており、詐欺の受け子になるケースも見受けられます。このような詐欺や犯罪に皆が巻き込まれないよう、有賀教授と日本貸金業協会は、連携して、行動や認知の仕組みを消費者啓発に活かした教材制作やキャンペーンを、2024年から継続して実施してきました。
2.研究内容と成果
今回、有賀教授と大学院文学研究科学生の久保さん、文学部学生の木次さん、髙橋さんは、日本貸金業協会および神奈川県警察本部の協力を得ながら、警察官を装った模擬的特殊詐欺の実験を、中央大学に在籍する学生を対象に行いました。この実験の目的は、警察を騙って個人情報を聞き出す典型的な電話詐欺を再現して、特殊詐欺被害の実態および被害に至るまでの心理プロセスを捉えることで、被害防止に役立つ知見を取得することです。
被験者には、事前に神奈川県警による特殊詐欺についての説明を行った上で、デセプション(欺く手法)を含む実験であることを伝え、148名から実験参加の同意を取り、実施しました(実験目的・内容と実施日時は未定としました)。実験では、警察官を装った“掛(か)け子役”(実際には神奈川県警の警察官)が大学生の携帯電話に電話番号が通知される状態で架電しました。電話後には、デブリーフィング(デセプションの開示)のため実験である旨の連絡メールをし、加えて、電話に出た人・出なかった人に分けて、それぞれアンケートに回答してもらいました。
実験のどの段階で電話を切ったか、また、アンケートの分析結果から、電話に出た大学生は通話中に怪しいと思っても通話を継続してしまう傾向があり、その結果被害に遭うことなどが明らかになりました。特殊詐欺は「騙されやすい人」が被害に遭うものという先入観を持ちがちですが、実際には電話に出た時点で誰もが被害者になり得るため、知らない電話番号からの着信に出ないことが一番の防犯であると言えます。また、「携帯電話を持つこと=特殊詐欺との接点を持つこと」を皆が再度認識し、特に若者が携帯電話を購入する際に効果的に伝達する必要があります。
分析結果の主なポイントは、以下の通りです。
・警察官を装った掛け子役が148人の大学生の携帯電話に架電した結果、計25人が電話に出て、このうち最終的に5人が個人情報 (LINE ID) を提供する直前までに至った。なお、1度目の架電に出なかった場合には、2度目の架電を行った。
・掛け子役が用いる専門用語や強気の態度が、受け手に「本物らしさ」を感じさせ、電話に対する疑念を弱めてしまう可能性が示された。
・電話に出た人は、出なかった人よりも「携帯電話による特殊詐欺」について知らない割合が高かった。
・電話中に怪しいと思っていても、通話を継続する傾向が見られた。特に掛け子役が女性の場合には、電話を途中で切ることに心理的な抵抗を感じやすい傾向が見られた。
3.今後の展開
本研究により、通話中に怪しいと思った人でも特殊詐欺の被害者になり得ることが示されました。今後は、知らない番号からの着信があった場合に、皆が詐欺である可能性を予測し、通話中でも簡単に切電しやすくするための手法(ナッジ)やシステムの開発に加え、本研究の知見を関係機関と共有し、効果的な啓発活動や教材開発に展開させる予定です。
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
有賀 敦紀 (アリガ アツノリ)
中央大学文学部 教授(人文社会学科)
TEL:042-674-3846
E-mail: aariga413[アット]g.chuo-u.ac.jp
<広報に関すること>
中央大学 研究支援室
TEL: 03-3817-7423または1675 FAX: 03-3817-1677
E-mail: kkouhou-grp[アット]g.chuo-u.ac.jp
日本貸金業協会 業務企画部広報課
TEL: 03-5739-3013
E-mail: kouhou[アット]j-fsa.jp
※[アット]を「@」に変換して送信してください。