広報・広聴活動

均一サイズの人工細胞膜小胞を効率よく作製する技術を開発 ~細胞模倣リアクター生産の技術革新に寄与~

2021年12月24日

概 要

 中央大学理工学部 教授 鈴木宏明の研究グループは、細胞膜を模擬した巨大一枚膜小胞(ジャイアントユニラメラベシクル、GUV)注1を、簡便かつ高効率に作製する技術を開発しました。
 
 全ての細胞は、脂質二重膜注2と呼ばれる膜の中に、タンパク質や核酸(DNAやRNA)が包まれた構造をしており、この中で様々な反応や変化が起こります。つまり、細胞は、マイクロサイズの反応容器(リアクター)です。
 近年、この細胞膜を模擬した細胞と同サイズの容器を人工的に作製し、細胞の環境を模擬したリアクターを開発する研究が進んでいます。マイクロ流路を使うことで、形や大きさが揃った、均一な人工細胞膜小胞(GUV)をつくることが可能になってきました。しかし、これまでに発表された方法は、困難な課題が残されていました。

 本研究グループは、マイクロ流路中で均一な油中液滴(W/O液滴)をつくり、それを脂質の並んだ油・水界面を通過させることで、均一なダブルエマルション液滴をつくる技術を開発しました。ダブルエマルション液滴は、非常に薄い油の殻(シェル)で囲まれた小胞で、その界面が脂質で覆われています。界面張力のバランスにより、この薄いオイル層が一箇所に集まると、他の部分が脂質二重膜となり、擬似的な細胞膜として働きます。油や界面活性剤の成分を最適化することで、界面通過率が90%以上となる条件を確立しました。
 
 この技術により、人工細胞(Artificial Cell)または合成細胞(Synthetic Cell)の研究注3がいっそう加速することが期待されます。送液開始から1分程度で流れが安定し、すぐに均一GUVを得ることができるため、少量かつ貴重な生化学サンプルをGUV中に封入することができるようになります。細胞ではつくることが困難なタンパク質を合成したり、環境中や生体由来サンプル中のマーカー物質をセンシングしたりする用途への応用が期待されています。
 
 本成果は2021年12月21日、Sensors & Actuators B: Chemicalにて公開されました。

*****************************************

【注意事項】
 本内容については、すぐに報道していただけます。
【研究者】
 鈴木 宏明 中央大学理工学部 教授(精密機械工学科)
 牛山 涼太 中央大学大学院理工学研究科 修士2年(精密工学専攻)
 小祝 敬一郎 東京海洋大学 ゲノム科学研究室 助教
【発表(雑誌・学会)】
 雑誌名:Sensors & Actuators B: Chemical
 論文タイトル: “Plug-and-play microfluidic production of monodisperse giant unilamellar vesicles using droplet transfer across Water–Oil interface”
 論文リンク:https://doi.org/10.1016/j.snb.2021.131281
       https://authors.elsevier.com/a/1eHcR3IQMPL8o3
 

プレスリリース全文