広報・広聴活動

岡山県児島湾のニホンウナギ地域個体群は県内シラスウナギ漁の停止のみでは回復していない

2021年10月13日

 中央大学法学部 教授 海部健三らの研究グループは、2003年以降シラスウナギ採捕が行われていない岡山県児島湾において、ニホンウナギの個体数が回復しておらず、むしろ減少を続けていることを示す論文を発表しました。この論文は、最も厳しいシラスウナギ採捕管理である「採捕禁止」を持ってしても、単独地域で、単独の対策のみでは、対象地域のニホンウナギ個体群を回復させることが難しいことを示した、初めての研究成果です。ニホンウナギの保全と持続的利用を実現するためには、地域におけるシラスウナギの漁業管理だけでなく、分布域である東アジア全域での協力に基づき、天然ウナギ漁や成育場の環境回復など幅広い対策を進めることが必要とされます。なお、この研究で得られた結果から、シラスウナギ採捕がニホンウナギの減少に関与していないとする結論を導くことはできません。

<本研究のポイント>

•特定水域のシラスウナギ採捕の停止が資源回復に与える効果を検証した初めての研究
•岡山県では2003年以降、商業目的のシラスウナギ採捕が許可されていない
•2003年のシラスウナギ採捕停止以降に岡山県児島湾の天然ウナギは増加しておらず、むしろ減少していた
•県内でのシラスウナギ採捕の停止のみでは、岡山県児島湾のニホンウナギ地域個体群は回復しなかったと結論づけられる
•ニホンウナギ資源の回復のためには、シラスウナギ採捕の管理、天然ウナギ漁の管理、成育場の環境回復を東アジア全域で進める必要がある
•生態系管理(EBM)の考え方は、ニホンウナギの保全と持続的利用に大きく貢献する可能性がある
 

論文情報

【論文タイトル】Management of glass eel fisheries is not a sufficient measure to recover a local Japanese eel population
【著者】海部健三 (中央大学)・横内一樹 (水産研究・教育機構)・Michael J Miller (東京大学)・鷲谷いづみ (中央大学)
【掲載誌】Marine Policy (マリン・ポリシー)
【掲載日】2021年10月8日 
 

プレスリリース全文

【お詫びと訂正】プレスリリース全文、図1の説明に「2020年には2003年の約60%となっている。」とありましたが、「2020年には2003年の約60%減となっている。」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。(2021/10/13 19:20)