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世田谷区主催「せたがや会議 ~みんなで考える多文化共生のまち~」(2024年度版)に法学部の学生がグループのファシリテーターとして参加しました

多文化共生の理解と課題を深め、具体的な提案を共有

 2024年12月14日(土)に世田谷区主催の外国人・日本人区民による意見交換「せたがや会議 ~みんなで考える多文化共生のまち~」が開催され、本学法学部の学生6名がグループのファシリテーターとして参加しました。また、本会議のコーディネーターと全体のファシリテーション(日本語)を世田谷区で多文化共生の活動を行っている吉田千春先生(法学部助教/イクリスせたがや共同代表)が担当し、全体のファシリテーション(英語)をゴロウィナ・クセーニヤ先生(東洋大学准教授/イクリスせたがや共同代表)が行いました。
 今回のイベントには、外国人区民16名、日本人区民14名が参加し、事前に要望があった方には、個別にボランティアの方が通訳を行いました。また、本学の学生に加え、明治大学、日本大学、東洋大学の学生もグループファシリテーターとして参加し、各グループでは、異なる大学の学生がペアを組み、協力しながら円滑な進行を担当しました。

 今回のテーマは「様々な言語・文化を持つ人々がともに暮らしていくために」であり、世田谷区の多文化共生リーフレットに掲載する具体的な内容について議論が行われました。当日は、全体でのアイスブレイクの後、6つのグループに分かれ、「自己紹介」「世田谷区の良いところの共有」「外国人住民も住みやすい区にするためのアイデア」「多文化共生のキャッチコピーの作成」について話し合いが行われました。いずれのグループも活発な議論が交わされ、多様な視点から意見が集まり、多文化共生の理解と課題を深め、具体的な提案を共有する場となりました。

ファシリテーターとして参加した法学部学生の感想

浅井 唯子さん|政治学科4年

 前年に引き続き参加しました。今年は「多文化共生」という概念を昨年とは異なる角度からみることができ、興味深かったです。印象的だった「多文化共生」の要素は、情報保障です。確かに、世田谷区をはじめとする自治体では英語での情報発信を積極的にしており、だいぶ情報が得やすいようです。しかし、日常生活の些細なことや緊急事態に関してはまだまだ日本語でしか情報が発信されておらず、内容が理解できないことがあるそうです。あらゆる生活の場面で英語やその他外国語での情報発信をすることは、日本語を第一言語としない人々が安心して暮らせる「多文化共生」社会につながると考えます。そのために、自治体が積極的に動くことはもちろんですが、日本語がわかる市民が、外国人が情報を得やすいようにサポートすることも肝要であると思います。(例えば、ある施設で行われるイベントのアナウンスを日本語と英語でするなど)
 今年は情報保障という観点から「多文化共生」について考え、新しい視点を得ることができました。

飯塚 笛さん|法律学科4年

 私は昨年度に引き続き2回目のせたがや会議の参加となりましたが、今回も様々な角度から多文化共生について考えられた時間でした。実際に世田谷区に住む外国人の方とお話をして、日本の人と日本に住む外国の人のつながりの少なさを改めて実感し、両者のコネクションを増やしていくことが必要であると思いました。 世田谷区に限らず日本に住んでいる全ての日本人が日本人という枠に囚われすぎずに、日本に住んでいる人全員で手を取り合って生活をしていくといった意識をしっかりと持ったら、もっと誰もが住みやすい良い社会になっていくのではないかと感じました。
 私は大学4年生で今年で最後のせたがや会議の参加となりましたが、大学を卒業しても多文化共生推進についてのイベントに積極的に参加をしていきたいと思いました。

古澤 唯佳さん|政治学科4年

 初めてこのような会議でファシリテーターとして参加しました。加えて私は世田谷区住民ではなく、友人と数回訪れたことがあるくらいで不安がありました。しかしながら、そんな私に住民の方々は優しく接してくださり、議論しやすいような和気あいあいとした雰囲気づくりを率先して手伝ってくださいました。世田谷区の多文化共生について議論していく中で、「多文化共生」という言葉は外国人だけでなく日本人にもイメージしにくい言葉だということ、外国人住民の方々にとって日本という新しい環境に孤独を感じていることについて言及しました。孤独に感じているのは外国人住民だけではなく、日本人住民も同じ悩みを抱えている人が多いということも話し合いました。
 当事者の方々から直接、世田谷区の住みやすさなどを聞き、多文化共生といっても文化や国籍などの壁を越えて共通した課題があるということを、今回の貴重な機会を通して学ぶことができました。

Lee Koyunさん|法律学科2年

 この度、せたがや会議に学生ファシリテーターとして参加しました。ますます増えている外国出身の方々と昔からずっと世田谷区に住んでいた住民の方々のお話を伺える貴重な時間でした。
 外国籍の方からの悩みは様々でしたが、その中で子育てをしている方の話をご紹介したいと思います。その方はご自身も奥さんも中国国籍で、日本語の習得がまだ十分ではありません。息子さんは日本の幼稚園に通っていますが、問題は、子供の年齢が上がるにつれて言語の壁が原因で親子のコミュニケーションが困難になってきたことです。ご両親は日本語が得意ではない一方で、日本で生まれた息子さんは中国語を学ぶ機会が少ないとのことです。インターナショナルスクールは、学費が高く、近隣にはないため通学が難しいという悩みを抱えていました。無論、これからも日本で暮らし続ける以上、日本語を母国語のように使いこなすことは重要です。しかし、同時に「親の出身地や自分のルーツを忘れないでほしい」というお父さんの願いも感じられました。
 昔、アメリカを表す表現として「人種・文化のるつぼ」という言葉がありました。しかし、最近は「文化のサラダボウル」という表現が使われるようになっています。この言葉は、それぞれの異文化を一つの土着文化に溶け込み、同化させるのではなく、各々の固有文化を理解し、尊重しながら新しい文化を作り出すという考え方を表しています。今回のせたがや会議を通して、中国語ができない息子さんとの意思疎通に悩んでいる中国籍の住民の方のお話を伺い、現在の日本社会が「異文化」をどう扱っているかについて考察する時間になりました。この「文化のサラダボウル」の考え方こそが「多文化共生」を実現する1つの方法ではないかと改めて考えさせられる機会になりました。

小野寺 早耶さん|政治学科1年

 今回初めて「せたがや会議」に参加しました。世代やバックグラウンドの異なる方々と「多文化共生」というテーマについて意見交換ができ、貴重な体験になりました。特に「日本には質問に答えてくれる窓口はあるが、日本に来たばかりの外国人住民は何がわからないかがわからない状態であるため、まずは日本の制度を自分が分かる言語で説明してもらう機会が欲しい」という子育て世代の外国人住民の方の話が印象に残りました。この話を聞くまでは、窓口を設置することが解決策になると考えてしまっていたため、当事者の意見を聞くことの重要性を実感しました。
 このように、せたがや会議に参加しないと聞けなかったであろう、外国人住民の方々が抱える現実的な問題を知ることができて、とても勉強になりました。また、参加者の方々も述べていたように「多文化共生」という言葉が必要ないくらい「多文化共生」が当たり前のことになっていけばいいと感じました。

水谷 聡花さん|政治学科1年

 今回、このような場に初めて参加し、また世田谷区について全く知識がなかったため、とても緊張していました。しかし、住民の方々が温かく迎えてくださり、和やかな雰囲気の中で議論をすることができました。議論を通じて、外国人住民と日本人住民が交流できる場がまだまだ少ないことや、制度の枠から外れてしまう人への対応のあり方などに関心を持ちました。実際にお話を聞かなければ気づけなかったことも多く、双方の立場の方々の話を直接聞くことができたのは、とても貴重な経験だったと感じています。