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日本社会の孤独が40年間にわたり上昇 ―国内初・1983年から2023年を対象とした時間横断的メタ分析―
2026年04月27日
<成果のポイント>
・「日本社会において孤独は深刻な社会課題である」と言われる一方で、それを実証する科学的エビデンスは不足していた。
・本研究はこの課題に対し、時間横断的メタ分析を用いて、日本社会における孤独感の経年変化を確認した。
・その結果、1983年から2023年までの日本社会において孤独感が上昇していることが明らかとなった。
・さらに、青年期・女性において孤独感が特に上昇していること、婚姻率といった社会的指標が孤独感と共変していることを明らかにした。
・この成果は、今後の孤独感に関するさらなる科学研究の基盤となり、孤独解消に向けて介入を行う対象層を明確にした。
概要
中央大学文学部 教授 髙瀨 堅吉(たかせ けんきち)、同大学院文学研究科博士前期課程 本間 萌々(ほんま もも)を中心とする研究グループは、孤独感を定量的に測定する心理尺度であるUCLA孤独感尺度を日本において用いた研究を対象に、1983年から2023年までの時間横断的メタ分析を実施しました。その結果、日本における孤独感尺度得点について、この40年間で有意な上昇が見られました。
本研究は、日本社会における孤独感の長期的な経年変化を示した初めての研究です。この結果は、孤独感が長期的に上昇している可能性と、その背景にある要因の存在を示唆しています。本研究成果は、孤独感が喫緊の社会課題であることを裏付けるとともに、今後のさらなる科学研究や政策的介入の必要性を示す重要なエビデンスとなります。
【研究者】
中央大学文学部 教授 髙瀨 堅吉(たかせ けんきち)
同大学院文学研究科博士前期課程 本間 萌々(ほんま もも)
【発表論文】
雑誌名:Frontiers in Psychology
題名:Increasing Loneliness in Japan, 1983–2023: A Cross-Temporal Meta-Analysis
著者名:Momo Homma, Kenkichi Takase
DOI: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1824941
研究内容
1.背景
孤独感は、精神的・身体的健康や健康行動との関連が報告されており、さらには早期死亡率との関連も報告されています。世界保健機関は、孤独感を「喫緊の健康上の脅威である」と宣言し、世界的に解決を優先すべき公衆衛生上の社会課題と位置づけています。
日本社会では、社会環境の変化に伴い、孤独感は深刻化したと言われてきました。一方で、孤独感の長期的な経年変化を調査した科学研究はこれまで行われてきませんでした。そこで本研究では、時間横断的メタ分析の手法を用い、日本社会における孤独感の経年変化を検討しました。
2.研究内容と成果
1)研究方法
本研究では、4つのデータベース(PubMed, Web of Science, J-Stage, CiNii)用いて、日本においてUCLA孤独感尺度を使用した研究を収集しました。英語データベースでは「UCLA loneliness scale, Japan」または「UCLA loneliness scale, Japanese」と検索し、日本語データベースでは「UCLA孤独感尺度」と検索しました。また、レビュー過程で新たに特定された文献も追加しました。
文献検索の結果、333件の研究が特定されました。重複する研究の除外および抄録のスクリーニングを行った結果、251件となりました。さらに、削除基準を適用した上で文献の全文を精査し、最終的には81件の研究から183データ(49054名の回答)がメタ分析に含まれました。その後、コーディングおよび得点の調整を行い、回帰分析を中心とした統計解析を実施しました。
2)研究成果
主解析から、1983年から2023年までのUCLA孤独感尺度得点の有意な上昇が認められました。この結果は、40年間にわたる日本社会の孤独感が深刻化していた可能性を示唆しています。
また、副次解析から、発達段階および性別の影響も確認されました。発達段階では、青年期における孤独感が上昇していることが見られました。また、性別では、男性の孤独感が一定して高い傾向があるものの、女性の孤独感のみ上昇が見られました。
さらに、社会指標の影響も確認されました。COVID-19パンデミック前後で孤独感得点を比較したところ、パンデミック前と比較してパンデミック中の孤独感の方が高いことが示されました。また、孤独感の上昇は、単身世帯数、婚姻率、GDP、インターネットの使用といった指標と共変していました。
本研究は、日本社会における孤独感の長期的な経年変化を示した初めての研究です。この結果は、孤独感が長期的に上昇している可能性を示唆しており、孤独感が深刻化している状況が明らかになりました。これは孤独感の解消が喫緊の社会課題であることを裏付けており、さらなる科学研究や政策的介入の必要性を示す重要なエビデンスとなります。
3.今後の展開
孤独感の上昇が確認された青年期および女性に対しては、重点的な支援方法の確立が求められます。今後は、青年期の孤独感に対応するため、食事改善が孤独感に与える影響について検証を行います。さらに、効果が確認された場合には、脳腸相関をはじめとする孤独感の生物学的メカニズムの解明に取り組む予定です。また、女性の孤独感に対応するため、生成AIを活用した孤独感解消支援システム(AI保育士)の開発を進めています。今後は、その有効性を検証するとともに、社会実装に向けた取り組みを推進していきます。
【関連情報】
研究室ホームページ
https://takaselab.r.chuo-u.ac.jp/
本研究成果のもととなった研究経費
本研究は、JST 共創の場形成支援プログラム JPMJPF2203 の支援を受けたものです。
用語解説
(注1)孤独感
孤独感とは、対人関係における理想と現実のギャップを感じることにより生じる、主観的で否定的な感情のことを指します。客観的な対人関係の欠如を表す社会的孤立とは区別して使用されます。
(注2)時間横断的メタ分析
心理指標の平均値を使用し、その指標の時代的な変化を検討するメタ分析の手法です。メタ分析は、複数の研究結果を統合して知見を導く方法であり、高いエビデンスレベルを有する分析手法とされています。
お問い合わせ先
<研究に関すること>
髙瀨 堅吉(たかせ けんきち)
中央大学文学部 教授(人文社会学科心理学専攻)
E-mail: ktakase782[at]g.chuo-u.ac.jp
<広報に関すること>
中央大学 研究支援室
TEL: 03-3817-7423 FAX: 03-3817-1677
E-mail: kkouhou-grp[at]g.chuo-u.ac.jp
※[at]は@に変換してください