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「JICA海外協力隊セミナー2024」が開催されました

事業説明と体験談を通して、国際協力や国際交流について考える

本学は全国にある大学の中でも10本の指に数えられるほど多くの協力隊を送り出している、と述べた林教授

 2024年12月3日(火)、多摩キャンパス グローバル館7階ホールにて「JICA海外協力隊セミナー」が開催されました。
 JICA海外協力隊事業についての説明、協力隊経験者の体験談を通して、国際協力や国際交流について考えるきっかけになることを目的にしています。本セミナーには公益社団法人 青年海外協力協会(JOCA)より込谷 晃さんと、本学OBでJICA海外協力隊を経験した太田 健司さんをお招きし講演していただきました。

 2009年度から開催している本セミナーには、経済学部教授 林光洋ゼミの学生を中心に60名以上の学生が参加しました。
 林教授から「これまでに約450名の本学OBOGが協力隊に参加しており、林ゼミからはザンビア、ウガンダ、ガーナ、グアテマラ、2025年1月にタンザニアに出発する隊員を含め6名の協力隊を送り出しています。彼らはこのセミナーに参加して“行きたい”と思ってくれました。皆さんの中にもそういう人がいたらいいなと思います」とのお言葉をいただきました。

JICA海外協力隊とは

 青年海外協力協会の込谷さんより、JICA海外協力隊の事業概要の説明がありました。込谷さん自身も5年間建設会社で働いたのち、土木施工という職種でフィジーに派遣されて活動した経験があります。

『JICA海外協力隊事業』は日本のODA(政府開発援助)予算により、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する国民参加型のボランティア事業です。開発途上国からの要請(ニーズ)に基づき、それに見合った技術・知識・経験を持ち「開発途上国の人々のために生かしたい」と望む方を募集し、選考、訓練を経て派遣します。

 よく寄せられる不安として、応募の際の語学力について、「英検3級・TOEIC330点以上」の中学校卒業程度の基礎的な語学力があれば応募可能で、派遣前に約70日間の語学中心の訓練を行います。帰国後の進路については、JICAでは研修やセミナー、専門のアドバイザーと相談できる体制、求人情報の提供などのサポートを用意しています。その他、費用・治安・病気などの不安に対して全面的なサポートがあることを強調しました。

JICA海外協力隊の概要

[JICAとは?]

JICA(Japan International Cooperation Agency)
= 独立行政法人 国際協力機構

[JICA海外協力隊事業の目的]

①開発途上国の経済・社会の発展・復興への寄与
②異文化社会における相互理解の深化と共生
③ボランティア経験の社会還元

[JICA海外協力隊の活動]

WHO 自らの意思で参加を希望する
20~69歳の日本国籍を持つ方
WHERE 開発途上国で
地域別派遣実績:6地域99カ国(アフリカ、アジア、中南米、大洋州、中東、欧州)
延べ人数:56,402名
WHAT 現地の経済・社会の発展または復興に向けた協力
分野別派遣実績:9分野200職種(人的資源、保険・医療、農林水産、計画・行政、鉱工業、公共・公益事業、社会福祉、商業・観光、エネルギー)
HOW 現地の住民と一体となって
(2024年3月31日現在)

[サポートの種類]

経済面 隊員自身の費用負担がないようサポート
安全面 事故や犯罪などの被害にあわないようサポート
健康面 心身ともに健康を保てるようサポート
技術面 活動に必要な知識・技術の獲得をサポート
進路面 帰国後の進路開拓や社会科還元活動をサポート

JICA海外協力隊の体験談と魅力

 2021年10月から2023年3月までの1年半、JICA海外協力隊の小学校教育隊員としてウガンダで活動した太田 健司さん。1人当たりのGDPは日本の50分の1、東アフリカに位置する赤道直下の国ウガンダでの体験談を、自身が撮った写真、選択クイズ、水運び体験を交えて語ってくださいました。

 太田さんは2011年3月に本学法学部を卒業。在学中に教員免許を取得。その後、東京学芸大学の大学院に進学し修了。東京都の中学校で社会科の教員として10年間勤務している中で、教科書に書いてある途上国やアフリカのことを教える立場なのに、知らないことを偉そうに言っているだけだと違和感を持ち、“実際に自分の目で見たことを教えたい”という気持ちが高まり、協力隊に応募しました。

「良いところは学びあい、足りないところは助けあう(=協力)」横並びの関係が大事

 ウガンダでの生活は、毎日朝5時に起きて20Lの水を運ぶところから始まりました。
 住んでいた家には水道がなかったため、洗濯、シャワーに使う水は毎日自分で50m先の場所まで汲みに行ったこと。食事はいくら嚙んでもなくならない牛肉入りのビーフシチュー&マッシュドバナナ、給食は毎日同じ豆のスープ&ポショ(トウモロコシの粉を練った主食)だったこと。トイレには常にニワトリ、カエル、トカゲ、コウモリ等が侵入してきたこと。最初は驚きの連続でしたが、しばらくしたら慣れました。
 村にはスマホのデータを買える場所があり、一応スマホは使えたため、暇な時はYouTubeや映画を観ることができました。

 活動内容の1つ目は、ンデジェという村にあるNdejje Junior Schoolでの算数の授業の実施や現地の先生方への日本式授業法の伝達。子供達にかけ算九九を覚えさせたり、ウガンダと日本の小学校をつないでオンライン授業をしました。2つ目は、ンデジェよりも奥地にあるDivine Junior Academyでの図書館建設の活動で、本を寄付したり、日本から送ってもらった筆記用具を寄付しました。

 不安のあった英語については、中学生の時にとった英検準2級のみで話せる状態ではありませんでしたが、ウガンダ人も英語がペラペラではないのでちょうどいいコミュニケーションがとれたかなと思います。現地語は覚えるのに苦労しましたが、現地語で少し自己紹介をするだけですごくなじんでくれるのを感じました。
 また、小学校の教員免許は持っておらず、中学校で社会科を教えていた自分にとって、小学校教育という職種で現地で算数を教えるということに対しても不安な思いがありましたが、大学生の頃、塾で教えた経験を活かしつつ、同僚の算数の先生達から教え方を教わるなどして何とか乗り越えました。

教科書を寄付して喜んでくれた時の子供達の笑顔は、忘れられない思い出

 ウガンダに行き子供達と接することで、自分自身の考え方が変わりました。「貧しい、かわいそう、助けるために行きたい」と思っていましたが違いました。
 図書館を建てて教科書を寄付した時、子供達はとても喜んでくれて、そのキラキラした顔は忘れられない一番の思い出です。やってよかったなと思いました。ウガンダではモノがたくさんないのが当たり前なので、子供達はバナナの木の皮を上手に編んでお人形を作ったり、きれいに丸くまとめてサッカーボールを作ったりして遊んでいました。また、水汲みは友達と会ってお話しできるから楽しいお手伝いなんだと言っていました。それらを目の当りにして、彼らは豊かな心を持って生活をしているんだなと思いました。
 一方で、ウガンダ人は時間を守らない人が多くイライラした時もありましたし、教育の場で体罰が当たり前の環境に疑問を感じることもありました。

 協力隊に参加して「人との出会い」が大きな財産になりました。ウガンダ人はもちろん、日本人の一緒に行った隊員たちの出会いも大きく、稲作隊員、動物園の隊員ほか違う職種の人達と活動することで色々な考え方を知り、様々な気づきがありました。
 また、主体性と勇気がつきました。以前、日本では言われたことをやるだけで、主体的に仕事をするといった感じではありませんでしたが、自分からやりたいことを言うことができるようになりました。今日のような場にも積極的に参加できるようになりました。

 協力隊での学びとして「先進国が上から手を差し伸べて、下にいる開発途上国を助けてあげる(=支援)」という縦の関係ではなく、「良いところは学びあい、足りないところは助けあう(=協力)」という横並びの関係を作っていくのが大事だと気づきました。共に生活をして、共に考え、一緒に成長しあう、新たな可能性を見つけるための1年半でした。

国際協力を学ぶ学生達から多くの質問が寄せられました

 体験談発表後の質疑応答では、「ウガンダの小学校ではどのくらいの識字率か」「信頼関係を築くためのアクション、心がけたこと」「2年間活動の中でどのような心境の変化があったか」「新卒でも応募できるのか」「新卒で参加するとしたら就活はどうのようにするのか」など、学生達から様々な質問が寄せられ、太田さん、込谷さん、林教授が丁寧に回答しました。セミナー後には、太田さんに個別に質問する学生の姿も見られました。

20Lの水の入ったポリタンクが回され、学生達はその重さを実感しました

セミナー終了後のアンケートをご紹介します。

●ゼミで国際協力について学んでおり、JICAが世界にどんな影響を与えるのか知りたかったためセミナーに参加しました。援助は上から下を救う感覚ではダメなんだということが非常に勉強になりました。
●生活環境の違いに本当に驚きました。自分と違う世界・価値観に触れてみたい!アフリカに行ってみたい!と強く思いました。
●JICAについて難しい印象をもっていましたが、充実した研修制度であったり、サポートも手厚いことがわかり興味を持つことができました。
●現在就職活動をしており、青年海外協力隊も1つの候補に入っていたためセミナーに参加しました。実際の写真を見ながら体験談をお聞きすることができ大変勉強になりました。