広報・広聴活動

縄紋草創期土器に最古の「シソ属」の種実圧痕を発見

2026年05月25日

※本プレスリリースは、学校法人 中央大学、富士宮市教育委員会、金沢大学古代文明・文化資源学研究所との共同発表です。

概要

 中央大学の小林謙一(教授)、西本志保子(客員研究員)、佐藤駿輝(大学院後期博士課程)は、富士宮市大鹿窪遺跡出土土器の調査の過程において、縄紋草創期の種実圧痕を発見、金沢大学古代文明・文化資源学研究所の佐々木由香(准教授)、東京国立博物館の宮田将寛(主任専門職)と共同研究し、日本列島最古の「シソ属果実」の圧痕であることをつきとめ、日本考古学協会総会にて学会報告しました。
 これまで、縄紋時代(一般には「縄文時代」と表記することが多いが、本稿では学術的に『縄紋時代』と表記する)の植物利用について、山梨県の中山誠二氏・熊本大学の小畑弘己氏等によって土器器面に残る種実等の圧痕研究が進められてきた結果、縄紋中期における大型化したダイズ属やアズキ亜属の種子が認められ、縄紋時代に栽培が行われていた可能性を明らかにしてきましたが、その初源はどこまで遡るのかといった課題がありました。
 本研究では、最古のムラのひとつである縄紋草創期の大鹿窪遺跡においてすべての土器について圧痕調査を行いました。その結果、草創期の土器からダイズ属種子とシソ属果実の圧痕を発見しました。大鹿窪遺跡は静岡県富士宮市に所在する縄紋時代草創期から早期にかけての集落遺跡です。特に草創期後葉の押圧縄紋期(約12,600~12,900年前)における、現時点で草創期としては最多の14基以上の竪穴住居址が検出されており、土器・石器などの遺物も多数出土している国指定史跡です。
 土器の表面からダイズ属種子の痕跡が見つかったことを契機に、悉皆的な土器圧痕調査を行うことになりました。総点数414点、総重量4,979gの土器の外面と内面、断面を観察して圧痕の有無を調べ、動植物の圧痕の可能性のある土器については簡易的な実体顕微鏡下で水と筆を使って泥を取り除いてからレプリカを作製しました。レプリカの作製方法は丑野・田川(1991)及び比佐・片多(2006)を参考にしてパラロイドB72の9%アセトン溶液を離型剤として圧痕内とその周りに塗布した後に、シリコン樹脂(JMシリコン インジェクションタイプ)を圧痕に充填しました。レプリカ作製後はアセトンを用いて離型剤を除去しました。同定は明治大学黒曜石研究センター所蔵の実体顕微鏡を用いて行い、同定された3点のレプリカにはFOS-R001~R003の資料番号を付しました。結果、2点の押圧縄紋土器(12,600~12,900calBP)からダイズ属種子2点、シソ属果実1点が検出されました。レプリカは(株)パレオ・ラボが走査電子顕微鏡((株)キーエンス製超深度マルチアングルレンズVHX-D500)を用いて、撮影しました。
 また、表出圧痕が検出された土器片について、東京国立博物館において、エクスロン社製微小部撮影用X線CT撮影装置を用いて土器内部を撮影した結果、肉眼では観察できない種実様の潜在圧痕が2点検出されました。見つかった潜在圧痕についてはFOS-X001~002の番号を付しました。
 今回の発見のうち、特に「シソ属果実」の圧痕については、これまでの事例でシソ属果実の圧痕として最古であった縄紋早期の千葉県取掛西貝塚の土器圧痕の約10,000年前の例を、約2,000〜3,000年遡る「シソ属果実の圧痕」を発見し、縄紋草創期にシソ属が利用された可能性が遡ることが明らかになりました。これは、土器圧痕の成果としてみても、草創期の宮城県王子山遺跡のダイズ属種子の圧痕の発見に続く事例にあたる成果で、縄紋時代草創期という定住的な生活が始まるかどうかと言う、いわば旧石器から縄紋的な生活への移行期において、有用植物が利用されていた可能性を指摘できる大きな成果です。
 今後は、縄紋草創期におけるさらなる事例の蓄積と、利用されていた種実の種類やその利用方法、さらにはなぜ土器の胎土の中にそうした種実遺体が混入されているのかを明らかにしていきます。
 本研究成果は、2026年5月24日に日本考古学協会第92回総会において、ポスター発表されました。
 本研究は、JSPS科研費JP26K16163、JP22H00019及びJP25H00485の成果の一部であり、富士宮市史のための資料調査が契機となったものです。

研究者

中央大学
 文学部 小林 謙一 教授
 人文科学研究所 西本 志保子 客員研究員・文学部兼任講師
 佐藤 駿輝 大学院後期博士課程

富士宮市教育委員会
 原 悠翔

金沢大学古代文明・文化資源学研究所
 佐々木 由香 准教授

東京国立博物館
 学芸研究部保存科学課予測保存研究室 宮田 将寛 主任専門職

発表論文

学会名: 日本考古学協会第92回総会
題名:静岡県大鹿窪遺跡の縄紋草創期の種実圧痕
著者名:西本志保子・佐藤駿輝・佐々木由香・宮田将寛・小林謙一
DOI: 発表要旨のため、なし

お問い合わせ先

<研究に関すること>            
 小林 謙一 (コバヤシ ケンイチ) 
 中央大学文学部 教授
 E-mail: kobayashikenichi22[アット]gmail.com 

 佐々木 由香 (ササキ ユカ)
 金沢大学古代文明・文化資源学研究所 准教授
 E-mail: yuka_sasaki[アット]staff.kanazawa-u.ac.jp

<広報に関すること>
 中央大学 多摩研究支援課
 TEL: 042-674-2109/2434
 E-mail: kkouhou-grp[アット]g.chuo-u.ac.jp

 富士宮市教育委員会 文化課 埋蔵文化財センター
 TEL:0544-65-5151
 E-mail:maibun_center[アット]city.fujinomiya.lg.jp

 金沢大学 人間社会系事務部総務課
 TEL: 076-264-5450
 E-mail: n-somu[アット]adm.kanazawa-u.ac.jp


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