広報・広聴活動
イネが被害を受けやすい時期と害虫の発生時期が重なることが斑点米の発生を助長することを長期データとシミュレーションから解明
2022年07月07日
主にカメムシ類が引き起こす斑点米(注1)の発生は、コメの品質を落とし、価格を下落させるため、コメ農家にとって最も悩ましい課題の一つです。近年、東北地方では斑点米被害を起こすカメムシ類の発生面積が増加傾向にあり、各地で対策が行われています。しかし、斑点米被害を引き起こす主要なカメムシ類は複数種にわたること、これらの多くは在来種であり、年ごと・地域ごとに発生数が大きくばらつくこと等から、その被害予測は困難でした。東京都立大学大学院 都市環境科学研究科の田村優衣大学院生(当時)、大澤剛士准教授、中央大学の高田まゆら教授、農研機構 東北農業研究センターの田渕研上級研究員、国立環境研究所の吉岡明良主任研究員らの研究チームは、イネの出穂時期データと気象データに基づくカメムシ2種の発生シミュレーションを組み合わせることで、斑点米はイネとカメムシの成長タイミングが一致したときに発生する可能性が高いことを明らかにしました。この成果は、斑点米被害の発生を予測すること、更にはイネの脆弱期間とカメムシの攻撃期間が重ならないように作付け時期や防除時期をコントロールする等、気候変動下における農業の適応策につながることが期待されます。
■本研究成果は、7月6日付けで、Springer-Natureが発行する英文誌『Scientific Reports』上で発表されました。本研究は、JSPS科研費16H05061の助成を受けたものです。
《ポイント》
1.斑点米被害は、わが国の水稲作に多大なる被害をもたらしている重要課題です。
2.イネの出穂時期データとカメムシの発生シミュレーションを組み合わせることで、斑点米はイネとカメムシの成長タイミン
グが一致したときに発生する可能性が高いことが明らかになりました。これは、その年の気象条件が斑点米発生に
強く関連することを示唆します。
3.本研究の成果を活用することで、気候変動下において斑点米被害がどのように変化するかを予測する等、将来的な被害予測
や被害回避に貢献することが期待できます。