文学部

パネル展「化学物質過敏症・香害・SDGs」を開催しました

2023年11月23日

2023年9月21日から10月31日まで、中央図書館1階ホールでパネル展「化学物質過敏症・香害・SDGs」を開催しました。この展示は、今年度の文学部プロジェクト科目「今、そこにある公害」の関連企画として、後期の授業開始に合わせて実施したものです。

 授業では、水俣病などの典型公害から原発、軍事までを幅広く、オムニバス形式で論じています。「公害は過ぎ去った歴史の一コマではなく、現在進行形の社会問題である」(授業担当:清水善仁・日本史学専攻准教授)との認識から、学生の身近にある「香害」も取り上げています。
 

 「香害」とは、柔軟剤・消臭剤などに含まれる化学物質を原因とする健康被害のことで、近年全国で急速に拡大し、より重度な「化学物質過敏症」で苦しむ人も増えています。また、抗菌・消臭成分などを包んだマイクロカプセルは空気や水を汚染し、製品を使用しない人にも大きな影響を与えています。今回のパネル展は、その実態を知ることを目的とし、学生一人ひとりに自分のできることを考えてもらうために開催しました。
 展示された約40枚のパネルは、大阪・堺市の患者が個人で制作したもので、「化学物質過敏症」の症状や、日常生活上の困難を具体的に伝えています。さらに、全国の患者から寄せられた手紙も多数展示され、「香害」がまさに「現在進行形」であることを実証しています。
 今回のパネル展は、「香害」について詳しく知らなかった学生に驚きと衝撃をもたらし、「もっとメディアで取り上げられるべき問題だ」「これまで使っていた製品を見直したい」などのメッセージが寄せられました。また、中央大学での開催は過敏症当事者を中心にSNSで話題となり、学外からも多くの来場者がありました。化学物質を吸わないよう、活性炭マスクやガスマスクで自衛し、電車を避けて自家用車で訪れた患者も複数いました。「香害」「化学物質過敏症」に関心を持つ国会議員、近隣自治体の議員・職員なども20名以上来場し、多摩モノレール社員が連れだって訪れた日もありました。

 パネル展の運営に携わった教員側としても、今まさに多くの人が苦しんでいる現状と、高等教育機関が果たすべき役割について、改めて深く考えさせられました。報告記の最後に、来場者(中大卒業生)から寄せられたメッセージを一つ紹介し、私たちすべてが共有すべき課題にしたいと思います。(榎本泰子・中国言語文化専攻教授)

ありがとうございます! 妻が化学物質過敏症で苦しんでいます。4年程前でした。最初は「気のせいじゃない?」という応対でしたが、ある日、突然、目から涙がドーッと出て苦しむ様子を見て、「これは変だ」と真剣に考えるようになりました。今では、一緒に、様々な対策をしながら、なんとか2人で生活しています。道のりは険しいですが、フレグランスフリーの世の中が来るように、ささやかではありますが、啓発活動も2人でやっていこうと思います。中央大学は私の出身大学です。関東で初となる、このような展示会を開催していることを「誇り」に思います。(多摩キャンパスの一期生です。文学部独文学専攻)
 

パネル展会場の様子

症状を説明するパネルに見入る来場者

来場者が啓発用ステッカーを持ち帰る際に書き込んだたくさんのメッセージ。会期中、パネル展オリジナルキャラクター不安虫(ファンチュウ)とチュー王子が見守った。