哲学専攻メッセージ

哲学専攻の教員から、以下の質問にこたえるかたちで、メッセージをお届けします。
  1. そもそも哲学に興味をもったきっかけはなんですか?
  2. 好きな哲学者の言葉を教えてください。
  3. ジャンルを問わず、印象に残っている本を3冊までの範囲で教えてください。
  4. いま、専門以外で興味をもっていることはなんですか?
  5. 中央大学の哲学専攻を志望している受験生に、ひとことお願いします。

[1] そもそも哲学に興味をもったきっかけはなんですか?

中学時代の恩師の背中、高校時代の悪友たちとの空理空論の日々、大学・大学院時代に出会ったホンモノの研究者たちの凄さ。そういった師友の波状攻撃的な影響が、その時々に読みあさった書物の誘惑と相まって、昔もいまも、ぼくを哲学研究へと駆り立ててくれます。

[2] 好きな哲学者の言葉を教えてください。

「存在するものは多くの仕方で語られる(to on legetai pollachos)」(いろいろなものの見方、考え方に対して、つねに開かれた構えをとるアリストテレスらしい潔さが好きです)

[4] いま、専門以外で興味をもっていることはなんですか?

スポーツ(ランニング、スイミング、テニス)、音楽、演劇、落語、……、ワイン、日本酒、焼酎。

[5] 中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

哲学に限りませんが、ニセモノが横行する時代だからこそ、若いうちに、できる限りホンモノに触れてください。

[1] そもそも哲学に興味をもったきっかけはなんですか?

幼稚園に入る前に、三度ほど大病をして、入院していましたので、そのときから、死ぬことや生きる意味のようなことを考えはじめたからだと思います。
もちろん、こういう回想は、ベルクソンの言う「回顧的錯覚」(過去の出来事から、都合のいい出来事をとりだして、現在の状態と結びつける錯誤)をおかしているのかもしれませんが。

[2] 好きな哲学者の言葉を教えてください。

「語りえないものについては、沈黙しなければならない」(ウィトゲンシュタイン)。
そのとおりだと思います。なかなか、できないけれど。

[3] ジャンルを問わず、印象に残っている本を3冊までの範囲で教えてください。

  • ニーチェ『この人を見よ』
    高校のとき、鹿児島の街なかの本屋で買って、帰りの路面電車の中で、大笑いしながら読みふけりました。こんなとんでもないヤツが、哲学という世界にはいるんだと思い、とても愉快になりました。
  • 笙野頼子『母の発達』(河出書房新社)
    現在日本に生きていて、かつ、私が知っている範囲での唯一の天才。なんというか、と、とにかく、す、すごい・・・。
  • 村上春樹『アンダーグラウンド』(講談社文庫)
    そんなに好きな作家ではないけれど、この本には、かなり感銘を受けました。もちろん、村上の本来の小説とは異質ですが、いろいろ考えさせられました。

[4] いま、専門以外で興味をもっていることはなんですか?

物理学です。量子力学と一般相対性理論の統一が、どういうかたちでなされるのか、興味津々です。

[5] 中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

哲学を志望するということは、それだけで、なにかしら強い動機があるはずなので、まわりの常識的な意見に惑わされず、自分の道を進んでください。「好きなことをする」のが、「生きる」ということなのです。

[1] そもそも哲学に興味をもったきっかけはなんですか?

小学生の頃、眠られぬ夜に、「宇宙の果てのその向こうはどうなっているのだろう」「世の始まりがあるとしたら、その前はどうなのだろう」ということを時々考えていました。もちろん、結論など出るはずはありませんが……。その後、『荘子』斉物論の「始めなる者有り、未だ始めより始めなる者有らざること有り、未だ始めより夫の未だ始めより始めなる者有らざること有らざる有り」に遭遇しました。

[2] 好きな哲学者の言葉を教えてください。

「これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らずと為す。これ知るなり」(孔子)。

[3] ジャンルを問わず、印象に残っている本を3冊までの範囲で教えてください。

①吉川英治『三国志』全八冊(講談社文庫)
高校生の時に読みました。一冊読み終わると、一刻も早く続きが読みたくて、本屋にダッシュしたものです。

②内藤湖南『支那史学史』上・下(平凡社東洋文庫)。
上の①と同レベルの興奮(ただし知的な)を与えてくれた学術書で、授業のノートをもとに編纂されたものです。講義がそのまま学術書になる、ということも驚異ですが、その水準の講義を聞き取ってノートに取った学生(宮崎市定ほか)もただ者ではありません。

③エリザベス・マレー『ことばへの情熱―ジェイムズ・マレーとオクスフォード英語大辞典』」上・下(三省堂選書)。
英語の辞書群に屹立するOEDが完成するまでの人間ドラマが編纂者の孫によって綴られています。漢和辞典の金字塔たる『大漢和事典』の編纂に関して紀田順一郎と原田種成がそれぞれ書いている書物(必ず両書を併せ読むこと)と読み比べると一興。「継続は力なり」という言葉が重みを増してきます。

[4] いま、専門以外で興味をもっていることはなんですか?

コンピュータのソフトに囲碁のプロ棋士が実力で追い越されるのは何年先か(将棋は既に追い越されています)。

[5] 中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

「これを如何せん、これを如何せんと曰はざる者は、吾これを如何ともするなきなり」(『論語』衛霊公)。

〔1〕そもそも哲学に興味をもったきっかけは何ですか?

はじめは物理で絶対零度に絡む超電導などをやりたいと思っていましたが、哲学のほうがさらに極端で過激だということに気づいて転向しました。最初に読んで冥界の謎のように感じたニーチェの『ツァラトゥストラ』を、20年後に自分の書物で解説することになるとは夢にも思いませんでした。

〔2〕好きな哲学者の言葉を教えてください。

「すべての偉大なものは、ひとつの<にもかかわらず>として存在する」(Th・マン/ニーチェ)

〔3〕ジャンルを問わず、印象に残ってる本を3冊までの範囲で教えてください。

  • ミルトン『失楽園』
    旧約聖書を元にした天使の大反逆の物語。ハリウッド映画を超える映像感覚と言語的迫力。ぜひ平井正穂訳(岩波文庫)で。
  • Th・マン『ファウストゥス博士』 有名なファウスト伝説の現代的書き換え。モデルはニーチェとも言われるが、ここでのファウストは現代音楽の作曲家。アドルノ仕込みの音楽理論が炸裂。
  • 三島由紀夫『豊饒の海』 4部作で大長編だが、輪廻転生や運命の必然性など、その主題はきわめて哲学的。1作ごとに世界観や文体が見事に異なっているというのも魅力的。

〔4〕いま専門以外で興味を持っていることは何ですか。

18世紀から20世紀初頭くらいまでの古書・稀覯書の蒐集。最近の最大の収穫は、バイエ『デカルト伝』の初版(1691年)です。

〔5〕中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

じっくり読んで深く考えるという、学問の最も基本的な姿に憧れる人たちに、集まってもらいたいと思います。

〔1〕そもそも哲学に興味をもったきっかけは何ですか?

確か中学生くらいだったと思います。ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』と亀井勝一郎『青春をどう生きるか』を読んだことが決定的な契機です。

〔2〕好きな哲学者の言葉を教えてください。

「哲学者の役割は、都市を支配することではなく都市の中にあって「虻(異議申し立て人)」となることである。哲学の真理を語ることではなく、市民をより真実に近づけることである。」(ハンナ・アーレント「哲学と政治」1990年)

〔3〕ジャンルを問わず、印象に残ってる本を3冊までの範囲で教えてください。

  1. トーマス・マン『魔の山』
    大学に入って初めて読んだ世界文学です。ちなみに山田洋次監督の釣りバカ日誌で「山岳小説ではありません」という小ネタがあります。
  2. 埴谷雄高『不合理ゆえに吾信ず』
    今読んでもほとんど何を言っているのか分かりませんが、頭をハンマーで殴られたような強烈な衝撃を受けます。
  3. 山田詠美『蝶々の纏足』
    劇作家志望の学生時代。この本を数行読んだだけで逆立ちしても自分には到底かなわない才能があることをハッキリと知り、キッパリと作家を諦めて研究者の道を選びました。

〔4〕いま、専門以外で興味を持っていることは何ですか。

奥さんを(できる限り)怒らせないで毎日を平穏に過ごすことと、子どもから(少しでもいいので)尊敬を得る父親になること。それと体脂肪の削減。

〔5〕中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

本学科の教員を長らくお務めになり私の出身大学の大先輩でもある哲学者・木田元先生は次のように述べています。 「わたし自身、後悔はしていませんが、哲学にとり憑かれなければ、もう少し楽な生き方ができたと思います。哲学は不治の病のようなものですよ。」(木田元『反哲学入門』より) さすが木田先生。達人です。

〔1〕そもそも哲学に興味をもったきっかけは何ですか?

いい質問ですね(仕事で哲学を研究・教育していると、初志を忘れてしまいがちですから)。もともと、高校生のときに英語が好きで、大学でシェイクスピアを読みたいと思っていたのですが、浪人して、「なんで勉強するのだろう」とか「なんのために生きているのだろう」と考えることが増えました。その頃に、わけも分からないまま新書をいくつかかじったのが、哲学への入り口でした。

〔2〕好きな哲学者の言葉を教えてください。

「ある人々の決定が脆弱で欠陥を含み、判断において実にしばしば誤るのは、その人たちが一種類の人たちとしか会話をせず、一種類の本しか読まず、一種類の考え方にしか耳を傾けようとしないからです」(ジョン・ロック『知性の正しい導き方』)。口当たりの良い情報が溢れているこの現代において、ますます重要性を増している言葉だと思います。

〔3〕ジャンルを問わず、印象に残ってる本を3冊までの範囲で教えてください。

  1. 芥川龍之介『河童・或阿呆の一生』
    高校生のとき芥川は新潮文庫で読み、以来何度も読み返し、自分の心の原風景とでも呼べるものとなっています。中でも、『或阿呆の一生』の冒頭に現れる一節(洋書書店の電灯がぽかりと灯り、梯子の上から世間一般を見下ろすシーン)は、いろんな意味で印象深いです。
  2. 北村透谷『漫罵』
    同じく高校生のとき教科書で読んだ『漫罵』も、格調高い文体のみならず、そこに込められた問題提起が鮮烈で、よく読み直すことの多い作品です。現代日本の風景(=思想)も、本質的に北村が痛烈に批判した頃のものと変わらないのでは、と思うことが多いです。
  3. 菊地明、横田淳『会津戊辰戦争写真集』(新人物往来社)
    北村や芥川よりも1,2世代前、日本が「文明開化」を迎えていた頃の動乱の記録です。会津若松では10年ほど暮らしましたが、その影響で、西洋哲学の<受容>の方に興味を抱くようになりました。

〔4〕いま、専門以外で興味を持っていることは何ですか。

人間の生まれ変わりや死後の世界、人類の行く末、宇宙の摂理といった、途方もないことがいつも気になります。

〔5〕中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

哲学を専攻に選ぶ、というのは哲学に対する何らかの思いを抱いてのことだと思います。
皆さんは全員が哲学の専門研究者になるわけではないので、初志を忘れず、そうした思いをストレートに表現できる卒研テーマに真摯に取り組んで欲しいと思います。

[1] そもそも哲学に興味をもったきっかけはなんですか?

九州の田舎には哲学の本などはなかったので、当然どんな興味もありませんでした。法学部に学んで弁護士になるつもりでした。だが、人間が決めたことにまじめに取り組むのがばかばかしい気がして、「とりとめのなさ」にひかれて、中大の哲学科に入学してしまった。結果的に、哲学のその「とりとめのなさ」が、じつにおもしろい。

[2] 好きな哲学者の言葉を教えてください。

「すべての規定は否定である」(ヘーゲル)
もともとは、スピノザの言葉だが、ヘーゲルによって有名になった。弁証法についての彼の考え方をもっとも簡潔に表現しています。

[3] ジャンルを問わず、印象に残っている本を3冊までの範囲で教えてください。

  • ヘーゲル『精神現象学』(長谷川宏訳・作品社)
    あれの多彩な内容を、みずからつくりだした論理によって展開してみせる力わざは、みごとというほかはない。
  • ベンヤミン『パサージュ論』(岩波現代文庫)
    ほとんどが他の著作からの引用によって構成されている本。19世紀パリのささいな現象を拾いあげる視線のするどさには感心する。
  • ガルシア=マルケス『百年の孤独』(新潮社)
    ブエンディア家の年代記、いわゆる魔術的リアリズムの最高傑作。

[4] いま、専門以外で興味をもっていることはなんですか?

モーターボート、社交ダンス。

[5] 中央大学の哲学専攻を志望している受験生にひとことお願いします。

最近、議論を吹きかけてくる学生が減ったように思う。哲学は、あまりこせこせ考えずに、大風呂敷を広げてみることが大切だと思います。