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専攻概要
西洋史学専攻へようこそ
2007年度の一年生に西洋史学で何を学びたいかと聞いたら、圧倒的に多くの学生が、ローマの皇帝、中世の騎士、ルネサンスなどに興味があると答えました。たしかに、これらのテーマは、西洋史学専攻の卒業論文でも歴代ランク上位であり、面白く、夢にあふれています。本専攻には、古代史、中世史、近世史、近代史、現代史を担当する5人の専任教員がおり、あらゆる興味深いテーマにきめ細かく対応することができます。
でも、私たちは、なぜ大学で西洋史を学ぶのでしょう?同じ一年生に聞いてみると、なかに「自分が面白いと思うことを学ぶ」という答えがありました。ご名答と言いたいところだけど、それなら自分で興味のある本を読んだ方が、面倒なレポートや卒業論文を書くよりずっといいとは思いませんか?
なぜ西洋史を大学で学ぶ必要があるのか、考えだすとなかなか難しい問題が出てきます。「西洋」とは何かという問題さえ、答えはひとつではありません。「西洋」とはヨーロッパのことでしょうか?中世や近世には、現代の国家とは異なる境界があったわけですが、はたしてヨーロッパという意識はあったでしょうか?他方、これからEUにトルコが加入したらトルコはヨーロッパでしょうか?アメリカやオーストラリアはヨーロッパではないが「西洋」でしょうか?アフリカはどうでしょうか?本専攻の特色の一つはメソポタミアの古代史を学ぶことができることですが、地理的にはいわゆる中東であり、私たちが普通に考える「西洋」ではありません。「西洋文明」という言葉を思い浮かべるならば、古代メソポタミア史も関わってくるように思いますが、「西洋文明」とは何かということになると、千差万別の意見が出てきます。「9.11」のとき、アメリカの学者が「文明の衝突」であると論じましたが、その際「西洋文明」は「キリスト教文明」であり、アメリカは入ってもメソポタミア地域(今のイラクなど)は入っていませんでした。
どうも「西洋」を地図に色分けで示すことはできそうにありません。としたら、「西洋」の歴史は何を対象としたらいいのでしょうか。ますます分からなくなってきましたね。実は、分からなくなるということが、西洋史学を学ぶ出発点なのです。「西洋」自身には必ずしも見えていない「西洋」の姿を日本から見直すという試みに挑戦してみませんか。