フランス語文学文化専攻
授業紹介
「美術史美術館入門演習」担当 泉 美知子 准教授
美術館の世界に踏み込もう
授業のテーマ
美術史美術館入門演習には(1)と(2)があります。
美術史美術館入門演習(1)では、西洋美術の基礎的な知識を学び、作品の観察法を身につけます。
美術史美術館入門演習(2)では日本そして世界(とりわけ西洋)にどのような美術館があり、社会においてどのような役割を果たしているのか、前期はまず美術館の現在を知ることから始めます。美術館に関するドキュメント番組や映画、ルーヴル美術館を舞台にしたマンガを使って、今日の美術館について様々な角度から理解を深めます。
みなさんは美術館に訪れた経験から、作品を鑑賞する場所だと思っているでしょう。しかし美術館の役割はそれだけではありません。①どのような作品を収集し、保存するのか、➁作品に関する研究成果をどのような展示で見せるのか、➂作品の価値や面白さを訪れた人々にどういう形で楽しんでもらうのか、このような学芸員の視点を持つことで、美術館という場所がこれまでとは違って見えてきます。問題意識をもって美術館を訪問することができるようになるのです。
後期の授業では、美術館の歴史を学ぶことで、歴史的かつ専門的な知識を身につけます。今日の私たちが知る「公共美術館」は近代ヨーロッパで誕生します。その誕生には、どういう思想的・社会的背景があるのか、初期の展示はどうだったのか、美術館はどのようにしてコレクションを増やしていったのかについて学びます。イギリスの大英博物館、フランスのルーヴル美術館、アメリカのワシントン、ナショナル・ギャラリーetc.を取り上げて、今日の美術館の原点を知り、これまでどのように発展し、21世紀にこれからどのように展開していくのか、みなさんで考えたいと思います。
授業の進め方
美術史美術館入門演習は2年生の「演習授業」です。3~4年生はゼミに所属し、課題について発表し、みんなで議論をすることになります。そうした授業形式に慣れてもらうための準備段階として「入門演習」が設定されています。 授業では毎回読むべき資料が与えられます。配布する資料としては、著作の抜粋、展覧会図録の論文、国立西洋美術館概要、文化庁の美術館資料など多岐に渡り、様々な資料をどのように読むのかポイントをつかみます。
前期はグループ学習を中心に進めます。4~5人でグループを構成し、教員が出す課題について話し合い、その成果をグループごとに発表します。後期は個人発表を中心に進めます。与えられた課題について、自分で資料調査し、その内容について把握したうえで、発表ファイルを作成し、口頭で報告します。また2年生の美術館美術史コースの授業では、前後期1回ずつ美術館見学会を実施します。
「美術史各論」 担当 泉 美知子 准教授
パトロンという存在から西洋美術を知る
授業のテーマ
1年生では専攻科目「フランス美術史」や総合教育科目「西洋美術史」を受講しますが、それを学んだ次のステップとして設定されているのが、講義科目「美術史各論」です。ここでは西洋美術の歴史をさらに踏み込んで学びます。
「美術史各論(1)」は毎年、講義内容が異なります。神話画、宗教画、パリのモニュメント、芸術家像、映画を通してモダンアートを考える、ノートル=ダム大聖堂の保護etc.を取り上げてきました。以下では、2019年度講義内容を紹介します。
西洋美術史では作家を中心とした歴史ですが、2019年度「美術史各論(1)」は、視点を変えて、パトロンという存在から西洋美術の歴史を学びました。まずは芸術家のパトロンとはどのような存在なのかを把握し、前期は、ルネサンスのパトロン、宗教界のパトロン、王侯貴族のパトロンの例をみていきます。パトロンが作品制作にどれほどの影響力があったのかを知ることは、西洋美術史の勉強にとって必要な視点です。
後期は、市民のパトロンから始め、国王の後ろ盾によって誕生した美術アカデミーの制度、そして作品収集によって芸術家を支えるコレクターへと視点を移していきます。
1年間の講義を通して、パトロン、美術アカデミー、コレクターという視点から、西洋美術史の理解を深めました。
授業の進め方
講義形式の授業では、パワーポイントを使って、様々な芸術作品を紹介します。さらに、作品全体の雰囲気やどういう場所に展示されているのかを知るために、また作品の印象がみなさんの記憶に残るように、授業では出来る限りDVDの映像資料を使って作品を詳しく観ていきます。
受験生へのメッセージ
高校生までの「美術」の授業は、作品の制作と鑑賞を中心とする授業だったと思います。大学での「美術史」や「美術館」の授業は、➀作品を観察する方法、➁作品が誕生する歴史、➂作品を保存する制度についての、専門的な知識を身につけ、アートが社会のなかで果たす役割について考えることを目標にしています。上で述べた演習や講義といった授業形式を通じて、楽しくアクティヴに学びましょう。
「フランス詩A・B」担当 前之園 望 准教授
詩の授業で動画作成?! 知識を体験へと開く
授業のテーマ
この授業のテーマは、フランス詩を様々な角度から〈体験〉してもらうことです。そのために、体感重視、アウトプット重視、グループワーク重視、ゲーム的要素の導入の四つの指針に基づいて授業を行っています。
現代は、ともすればあらゆるものがデータに還元され、情報処理の対象となる傾向があります。しかし、データだけをいくら積み重ねても、それだけでは体験にはつながりません。文学作品の場合も、作品のデータ、すなわち、著者名や作品タイトル、出版年、あらすじなどの断片的知識をいくら効率的に暗記しても、その作品を実際に読むことで得られる楽しさは体験できません。
無理に暗記した知識はすぐに忘れてしまいます。その一方で、体験は自分の中に残り続け、時間とともに成熟して〈経験〉へと質を変えます。生きることとは経験の蓄積にほかなりませんから、体験こそが人生を豊かにすると言えます。念のために言っておきますが、知識の獲得自体は決して無駄ではありません。豊富な知識は体験の精度を上げてくれます。この授業では、獲得した知識を体験へと開く様々な方法を実践しています。
授業の進め方
「フランス詩A」は前期の授業、「フランス詩B」は後期の授業です。前期はフランス語で書かれた詩になじむための授業、後期はフランス詩の世界にどっぷりと浸かる授業で、片方だけ履修することも可能ですが、ふたつの授業を履修することで、フランス詩の基本と応用が学べるようになっています。ここでは、4つのキーワードから、授業の進め方をご紹介します
1) 体感重視
作りこまれたフランス詩は、まるでラップのように脚韻を踏みます。また、同じ音を集中的に響かせたり、通奏低音のように作品全体にちりばめたりもします。この授業では、履修生に詩篇の音楽性を体感してもらうため、こうした音楽的な構造を丁寧に説明したうえで、音の響きを意識しながら作品を朗読してもらいます。また、後に述べる「ヴァリアントゲーム」では、作品の朗読を録音する課題動画をチームごとに作成してもらいます。自分の口で実際に何度も詩句を発音することで、詩の音声が身体化されます。
2) アウトプット重視
授業では、毎回1~2つの詩作品をとりあげ、文法事項の解説や作品解説を行いますが、授業をただ聞いて終わりではありません。授業の後半ではチームに分かれて、まずは分析対象の詩作品について自由にディスカッションを行い、その内容をチームの代表者が発表します。この作業は、授業内容の復習になるのと同時に、解釈の多様性も実感でき、説得力のある解釈とはなにかについて考える機会となります。次に、その日に学んだばかりの詩作品の文法事項を確認しあい、翌週に実施する文法復習小テストの原案をチームごとに作成・提出してもらいます。出題者側の視点に立って文法事項を見直すので、その日の授業内容が自然と整理されます。提出された原案のうち、いくつかは小テストに実際に出題されます。さらに、毎回授業後には指定の掲示板に授業内容に関するミニコメントを投稿してもらいます。授業を通して発見したこと、疑問に思ったこと、興味が湧いたことなどを言語化することで、その日の学びを具体的なものとします。
3) グループワーク重視
グループディスカッション、文法復習小テストの問題作成以外にも、次に説明するヴァリアントゲームという課題にグループワークで取り組んでもらいます。学生同士で気軽にアウトプットし合える環境を整え、グループワーク中は必要な場合にのみ教員がサポートに加わります。グループワークのチーム構成は流動的で、この授業を通して、学部や専攻を超えた新しい友達ができるケースもあります。
4) ゲーム的要素の導入
授業では、私の考案したヴァリアントゲームというオリジナルゲームを実施します。ゲームの詳細はこちらの動画でご確認ください。簡単に言うと、替え歌を作る要領で、フランス詩の一部を書き替えて遊ぶゲームです。具体的には、各チームでパワーポイントを利用した課題動画を作成し、指定の掲示板に投稿します。(動画の作成方法はこの授業で紹介します。簡単ですのでご安心ください。)その動画には、チーム全員でひとつの詩篇の朗読音声を録音する必要があります。分量の分担などはチーム内で自由に決めてもらいます。実際にやってみると、詩人がいかに緻密な計算の上に単語を配列しているかが実感でき、文法事項の良い復習にもなると、履修生の皆さんに好評です。
受験生へのメッセージ
こちらの動画でも説明していますが、この授業では本格的な文学研究の基礎が学べます。文学研究においては、作品全体の構成と分析対象となる細部との関係に常に気を配る必要があります。そして、分析対象が短い詩作品であれば、全体と細部の両方を同時に視野におさめることが比較的容易にできるため、文学研究の手法が肌感覚で理解できるのです。
その一方で、この授業は仏文専攻以外の学生も多く履修しています。文学研究に直接は関係のない方であっても、詩を読むことで身につくアナロジー思考はイノベーション的発想法に直結します。要は、〈頭が柔らかくなる〉のです。
学部や専攻を問わず、少しでも興味のある方は積極的にこの授業に参加してください。一緒に楽しく学びましょう。お待ちしています。
なお、仏文専攻の語文コースでどのような授業が行われているか気になる方は、ぜひ語文コースHPと語文コースブログをご覧ください。