東洋史学専攻

留学体験記

太田ひなの(おおた ひなの) 2021年度入学

ソウル留学記

大学3年生の春学期、大学の交換留学制度を利用して韓国・ソウルへ留学した。所属は、我が中央大学と同じ名前を持つ「中央大学校」を選んだ。
朝鮮史・韓国史について、韓国の大学で韓国人の学生とともに学んでみたい。そんな留学への想いは大学入学以前よりあったものの、大学1・2年次は新型コロナウイルスの影響で叶わず、3年目でやっと訪れた待望の瞬間であった。
留学先の大学では、朝鮮王朝時代の授業から、植民地時代の授業、現代韓国の授業まで幅広く履修した。初めは授業が聞き取れず、これから始まる一学期に不安しかなかったが、歴史学科の学生達はたったひとりの日本人にこれでもかというほど良くしてくれた。レポートを見てくれたり、イベントに誘ってくれたり、韓国の若者文化もたくさん教えてくれた。
写真1は、歴史学科の学生会が主催する農村奉仕活動(*1)に参加した時の様子だ。2泊3日間、場所はソウルの南の忠清南道・牙山の農村だ。昼はトラックの荷台に乗ってキュウリ畑へ行き、夜は村の会館で大量のソジュ(*2)を飲みながらゲームをする。あの時の韓国人学生らの飲みっぷりと言ったら、それはもう忘れられない。最終日にはお礼も兼ねて大量のジョン(*3)を焼き、村の人に振る舞ったりもした(写真2)。
休日には、歴史学科の友人たちが自分の思う歴史遺産に連れて行って、ひとつひとつありったけの解説を加えて回ってくれた。江原道へ旅行に行った時、江原道出身のS先輩が私のために手作りの観光案内マップを作ってくれたのは、感激の一言だった。おかげで、知る人ぞ知る地元の市場を堪能することができた(写真3)。こうして、韓国の学生達と多くの時間を共にするうちに、気付けば授業が理解できないこともほとんどなくなっていた。
この約半年で、韓国の大小の都市を見て回りながら溢れんばかりの刺激を受け、韓国がもっと好きになった。そして、無事に帰って来られたことについて、期間中に関わったすべての方々のご協力に感謝したいと思う。

(*1)農業奉仕活動:農繁期に大学生が農村へ行って農業を手伝い、農村の人々との交流を図る。韓国では20世紀前半から続いている行事。
(*2)ソジュ:韓国の焼酎。緑色のビンに入っていることが多い。基本ストレートで飲むが、大学生はソジュのビール割り(通称「ソメク」)もよく飲む。
(*3)ジョン:ニラやジャガイモ、未熟なカボチャなどを生地につけて焼いたもの。チヂミとも呼ぶ。

江本 紗莉(えもと さり)  2018年度入学

トルコ 中東工科大学交換留学体験記

 私が中東工科大学留学のため、トルコの首都アンカラに旅立ったのは2021年10月9日、コロナ禍の最中のことだった。トルコは国民のほとんどがムスリムでありながら西洋的近代化を行った特異な国である。イスラームと近代性がどのように共存しているのかに興味を持ち、卒論のテーマとして考えていたトルコの近代化政策や、中東近現代史などを学ぶため留学したが、前期はコロナの影響で受講したかった授業が開講されなかったり、人数制限のために登録できなかったりと悔しい思いをした。前期に履修した授業は一科目のみ対面で、その他はオンラインだったが、それでも留学生を受け入れていなかった日本と比べれば、留学できたこと自体が有り難かった。代わりに受講したトルコ外交政策のコースは私にとってなじみの薄い内容でついていくのにとても苦労したが、授業を通してトルコの地政学的な重要性を認識し、国際関係の観点からもこの国への関心がより深まった。幸い後期はすべて対面授業になり、交友関係も広がった。
 中東工科大学は世俗化・西洋化された学生が多いが、ヒジャブを着けた学生や、1日5回の礼拝を欠かさずラマザン(ラマダン)に断食をする敬虔な友人もいた。中東、中央アジアをはじめ様々な地域からの留学生が学んでおり、学内ではプライドパレードも行われるインクルーシブな大学であった。学生による抗議運動も頻繁に行われ、学長の決定や食堂の運営に対するデモや署名活動の光景が印象的だった。
 キャンパスは広大で、犬や猫、キツネ、ハリネズミなど動物も多く自然に溢れていた。放課後は友人と一緒に食事したりチャイを飲んだりして過ごした。テスト前はほとんど毎日図書館で勉強し、テストの後にはクラスメイトとビールを飲みに行った。週末にはアンカラ内や近隣の県を観光し、イスラームの祝日の時期には10日間の一人旅に出て、ブルサからエーゲ海沿いのイズミル、ムーラなどをバスで巡った。アンカラでは、友人達が自宅に招待して泊めてくれたので、トルコの一般家庭を体験することができ、手厚いおもてなしに感激した。
 学期が終わってからは、トルコ青年スポーツ省主催のボランティアに参加する機会に恵まれた。トルコ各地から参加した若い女性たちとブルドゥル県に10日間滞在し、地域の孤児院や障害者施設への訪問、モスクの清掃など様々な活動をした。外国人観光客が訪れないような地域だったので、ボランティア中の訪問先では初めて見る日本人を皆大喜びで歓迎してくれた。
 コロナ禍の中で交換留学を実施しない大学もあったなかトルコに送り出してくださった中央大学と、受け入れてくださった中東工科大学に心から感謝している。