東洋史学専攻

卒業生からのメッセージ

黒﨑 友美(2020年度卒業)
独立行政法人 国際交流基金

幼い頃から縁があった東南アジアについて学びたいと思い、東洋史の世界に飛び込みました。東南アジア近現代史の研究とマレー語の習得に注力して4年間を過ごし、外部の大学院で修士号を取得しました。その後、国際文化交流の専門機関である国際交流基金に入職し、現在は海外で行われる日本研究の支援事業に携わっています。

東洋史学専攻では、歴史学や専門地域に関する様々な知識だけではなく、「人や物事との向き合い方」も学ぶことができました。東南アジアは、多様性に富む地域で、興味を引かれるものが溢れています。その中で、自分が知りたいものは何かを真剣に考え、好奇心の対象との向き合い方を模索しました。また、海外での調査や語学の勉強では、自分とは異なるバックグラウンドを持つ人々と出会うことができ、相手のことだけではなく、その人のバックグラウンドも尊重することの大切さを学びました。私の仕事は世界中の人々と向き合い、その中で沢山のことを学び取って活かしていく必要がありますが、そのための力を東洋史学専攻で身につけたことが大きな糧になっています。

日常生活でも、仕事でも、東洋史学専攻で学んだことはとても役立っています。東洋史学専攻では知識そのものだけではなく、知識以外の「何か」を学ぶことができると思います。何を学べるか、それは個人の取り組み次第です。東洋史学専攻での学びの中で、「自分だからこそ学べる何か」を探してみてください。

中野 渓太郎(2017年度卒業)
茨城県立水戸桜ノ牧高等学校 教諭(地理歴史・公民担当)

春秋・戦国時代の歴史を学びたく、中大東洋史の門を叩きました。在学時には、所属ゼミの阿部幸信先生を始め、諸先生方から歴史の捉え方や考え方を学び、多くの学友にも恵まれました。紆余曲折あり、卒論は春秋・戦国時代ではなく蠱毒について執筆しましたが、それもこれも阿部先生のアドバイスやゼミ合宿などで議論し合った学友との刺激的な毎日があってのことだと思います。

卒業後は出身地の茨城県に戻り、中学校での1年間の講師経験ののち、現在校にて勤務しています。現在校では、主に世界史担当として子どもたちに歴史の面白さや楽しさを伝えられるような授業作りを日々心掛けています。授業を実践していくうえで、とくに意識しているのは「歴史を通して、いかに子どもたちが成長できるか」です。私自身、大学在学時には、「歴史」を通して多くの学友に出会うことができました。「歴史」を通して多くの知見を得て、多種多様な物事への見方や考え方を学びました。そして、「今を形作った先人と対話し続けることで、現在の世界を捉え、先を見据える力」が身に付いたと感じています。

グローバル化が一層進展し、先が見えない不透明な世の中であるからこそ、子どもたちが「歴史、すなわち先人との尽きることのない対話」を通して成長できるよう、中大東洋史で学んだことを今に生かす日々です。

末野 孝典(2015年度卒業)
日本学術振興会特別研究員-PD(東京大学大学院総合文化研究科)

大学に進学する以前、漠然と初期イスラーム史に興味を持ち、この分野の泰斗である嶋田襄平先生がかつて在籍していたという理由で、中央大学東洋史学専攻に進学を決めました。しかし、卒論のテーマを探していくなかで天性の天邪鬼な性格が力を発揮してしまい、西アフリカ・イスラーム史を選択することになりました。卒業後、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科に進学し、東長靖先生がご専門とするイブン・アラビー(1240年没)の神秘思想に魅了されると、西アフリカのイブン・アラビーの知的伝統を解明するために研究を続けてきました。

私がイスラームの歴史や思想に触れてきて良かった点として「世界」をどう観るのかという眼差しを複数もつことができたことにあります。自分と異なる世界に生きている人びとがもっている世界観を否定することなく、そのまま受け止めるというのはなかなか難しいものです。文献を読解し、現地の人びとと交流するなかで、彼らなりの「論理」を尊重しながら、その世界の在り方を理解するという行為・態度は今でも役に立っていると感じています。いま世界は人工AIなどが進展し複雑化の一途をたどっていますが、皆さんも複眼的な視座を身につけて世界を理解してみようとすると、少し違う「世界」が目の前に立ち現れるかもしれません。