文学部
英語文学文化専攻教授 大田美和の担当授業で映像作品《 In-Mates》の上映とアーティストの飯山由貴さんのトーク、ラッパー・詩人のFUNIさんの講演を実施(7/8,7/15)
2025年07月18日

英語文学文化専攻教授 大田美和の授業科目「入門・世界文学」では、文学部の「特色ある学部教育補助予算」を利用して、7月8日と7月15日に二人のゲストスピーカーをお招きしました。アーティストの飯山由貴さんと、ラッパー・詩人のFUNIさんです。
7月8日の授業では、映像作品《In-Mates》の上映不許可に抗議する2024年の都庁前行動を追った映像に続いて、映像作品《In-Mates》を見てから、制作者であるアーティストの飯山由貴さんのトークを聴きました。
7月15日の授業では、この映像作品で主演をつとめたラッパー・詩人のFUNIさんの講演「ラップという身体の文学」を聴きました。両日ともに3号館3552教室が、様々な声の交響するパフォーマンスの空間となりました。
映像作品《In-Mates》は、戦前の日本の精神病院の看護日誌の中で、外国語(朝鮮語)で発せられたために理解されず記録されなかった朝鮮人の二人の患者の言葉と歌はどんなものだったのか?という飯山由貴さんの素朴な疑問がきっかけとなって、制作されました。作品の中では、時代背景として、朝鮮半島から多くの朝鮮人労働者たちが日本に渡って来たことと、関東大震災直後に朝鮮人等の虐殺があったことが、歴史学者によって確認されます。そして、今を生きる在日コリアンのラッパー・詩人のFUNIさんが、川崎の海底トンネルの中で、朝鮮の身世打鈴(シンセタリョン)というナラティブの伝統を踏まえて、亡くなった人たちの言葉を、ラップによる言葉と音楽の力によって、よみがえらせていきます。最後にFUNIさんは、ニーナ・シモンの “I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free”を歌って、スクリーンの向こう側にいる人々に、「俺だけに任せるな!」「画面を越えて来い」と呼びかけます。
この授業では、これまでに、「戦争と文学」、「災害と文学」、「植民地主義、人種主義と文学」など毎回異なるテーマで、講義を行なうとともに、文学テキストを音読し、音読に耳をすませることを行なってきました。7月8日と15日は、そのような授業の総仕上げとして、プロの表現者を教室に迎えて、鍛え上げられた言葉を、学生たちが直接受けとめて、自分の言葉でレスポンスするという貴重な機会となりました。
人権、差別、検閲の問題。自由とは何か。私とは何者か。言葉によって芸術表現によって、何が可能なのか。自分に何ができるのか。今ここだけにとどまらない課題を、参加者全員が持ち帰り、今後、自分の中でさらに深め、まわりの人々にも伝えていくであろうことが、授業の履修者のコメントシートからうかがえました。
両日ともに、学内外から履修者以外の聴講者があり、活発な質疑応答が行われました。アクチュアルな社会問題に文学・芸術がどのように関わるか、大学がどのように関わるかという問題への関心の高さがうかがわれました。
このイベントに参加された学内外の皆様、ご関心を寄せて下さった皆様に、心より感謝申し上げます。