教育学専攻新着ニュース

2017年11月14日

外国人研究者講演等実施報告

受け入れ担当教員:鳥光 美緒子

研究者氏名:ハンス-クリストフ・コラー(Hans-Christoph Koller)

国籍:ドイツ

所属機関:(英文)University of Hamburg  (和文)ハンブルク大学

職名:(英文) Professor   (和文)教授

専攻:(英文) Educational science     (和文)教育科学

 

【研究報告】

テーマ:(英文)Bildung as a transformative process

           (和文)変容過程としての人間形成

実施日:2017年10月5日(木) 参加人数:20人

 10月5日(木)本学3929号室において、16時40分から18時30分まで、コラー氏による研究報告会を実施した。報告内容の概要については、前もって送付していただいたドイツ語版と英語版、およびその日本語訳のテクストを用意した。本報告においてコラー氏は、Bildung(人間形成)という、ドイツ教育学に固有の概念を主題に報告、本来この概念は18世紀のドイツにおいて、とりわけ、フンボルトによって教育学の基礎概念として導入された概念であるが、この古典的な意味での人間形成概念は、今日の状況の人間形成を表現するにはもはや相応しくないものとなっていることを指摘、ブルデュー、ヴァルデンフェルス、エーファーマンら、現代の社会科学者、哲学者の理論を参照にしつつ、この概念を再構成するとともに、あわせて、小説『鳩が飛ぶ』(メリンダ・ナジ・アボンジ著)の主人公の行動を描き出すことによって、彼の提唱する変容過程としての人間形成の概念を具体的なイメージとして提示した。続く討議においては、「変容過程」として人間形成を捉えるというコラー氏の主張をめぐって、変容過程と規範の問題、また、人間形成を対象とするこの議論を教育、指導場面に応用する可能性などについて多様な観点からの質問が出され、熱心な質疑応答が交わされた。

 

【シンポジウム】

テーマ:(英文)Bildung as a transformative process: Discussion on a case

           (和文)変容過程としての人間形成:事例にもとづく検討

実施日:2017年10月7日(土)   参加人数:30人

 10月7日、13時30分から17時30分まで、本学1408A号室において、上記のテーマで公開シンポジウムを開催した。全体を二部構成とし、前半の第一部では、野平慎二氏(愛知教育大学)と藤井佳世氏(横浜国立大学)がそれぞれの立場から、同一の事例についての解読を行い、その解読結果を報告した。野平氏の報告のタイトルは、「非弁証法的な人間形成形態の再構成の試み-ある大学生のビオグラフィ・インタビューの人間形成論的読解」、藤井氏の報告タイトルは、「彼女は先行する世代の問題をどのように引き受けたのか-ある大学生のインタビュー解釈」である。休憩をはさんだ第二部においてはコラー教授が、第一部の二氏の報告をうけて、それに対するコメントと、彼の視点からの事例解釈を提示した。その後、フロアーの参加者をふくめて討議を行った。検討した事例は、鳥光を研究代表者、野平、藤井両氏を研究協力者とする「青少年の挫折経験に関する人間形成論的研究-「生の語り」の分析から」(基礎研究C)の一貫として行われたインタビューを通して収集されたデータの中から選択した。コラー氏にはあらかじめ、選択した事例のトランスクリプトのドイツ語訳(木下江美訳)を送付した。討議の中心となったのは、事例として選択したKさんの語りの内容が、「変容」として解釈できるかという点である。フロアも含め、三氏それぞれの立場から熱心な討議が交わされた。
 

【セミナー】

テーマ:(英文)Biography research base on theory of Bildung: an Introduction

           (和文)人間形成論的ビオグラフィー研究入門

実施日:2017年10月12日(木) 参加人数:20人

 10月12日、本学3929号室において午後4時40分から6時30分まで、コラー氏によるセミナーを開催した。10月5日に行われた研究報告では、コラー氏は、フンボルトに由来する古典的なBildung(人間形成)概念を、今日の状況にあわせて再定義することを提案した。10月12日に行われたセミナーでは、彼のBildung研究のもう1つの特徴である、経験と理論の接続の問題に焦点をあてて、Bildungという理論的概念と経験的研究をどのように接続するのかを、データ収集、データ解読の両面にわたって、実例にそくして具体的に提示した。10月5日行われた研究報告同様、今回も、報告内容については、ドイツ語版、英語版、日本語版をあらかじめ用意した。コラー氏を中心とするハンブルク・グループの研究プログラムにおいて特徴的なのは、経験的研究の方法として、インタビュー法、それもドイツの社会科学において標準的とされるF.シュッツェの方法を採用していることである。今回のセミナーでは、10月5日の研究報告に引き続いて参加した参加者が、出席者の大半をしめ、コラー氏の提唱するシュッツェの方法をめぐって、日本で行われている質的研究の動向との対比をふまえて、その方法論的可能性と課題を中心に、熱心な討議が行われた。