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台湾における英語科教育について
文学部人文社会学科 英語文学文化専攻 3年
黄 俐嘉
2012年9月1日~11日の11日間、台湾の台北市を拠点に台湾の英語科教育について研究をした。アジア地域に於ける英語科教育が進んでいる国として、台湾・韓国が挙げられる。両国はグローバル化する社会に合わせた英語科教育の政策をすでに行っている。
台湾を研究地に選んだ理由は、将来的に日本で英語科教員になった後に台湾で教育関係の就職につきたいと考えていること、現地の教育事情を直接知りたかったこと、アジア内での英語科教育の先進国の教育状況を自分の目で確かめ、知ることにより、英語科教員になった際に大変参考になると思ったからだ。
研究内容は現地の公立中学校で授業見学を行うこと、中学生・教員への英語の学習に関する意識調査としてアンケート・インタビューの実施を行うことである。
台湾の英語科教育では、日本と違う大きな点が2点ある。1つ目に、将来を見据えて多くの親が子どもを幼稚園生のころから"英語幼稚園"、もしくは"英会話教室"に通わせていること。2つ目に、台湾全土の公立学校では、小学3年生から英語を授業で学んでいること。新北市は、例外として小学1年生からすでに外国語科目の必修化が行われている。
参照:「小学校に英語教育が必修として導入された2001年度は第5学年及び第6学年を対象とするものであったが、2003年に開始学年を第3学年に早めることが決定され、2005年からは第3学年での必修の英語教育が実施されている。」(『台湾における小学校英語教育の現状と課題』、文部科学省HPより)
(写真:新北市立新泰國民中学校)
(写真:校舎の様子)
(写真:授業の様子)
(写真:生徒の使う机)
(写真:授業の様子)
(写真:クラスの女の子たち)
(写真:英語で生徒に質問している)
(写真:日本と台湾で使う同じ漢字、意味の「学生」"student"の単語を教えているところ)
台湾国内での問題点として、英会話スクールに通える子どもと、経済的な理由で通えない子どもとの間に英語レベルの差が生じていることだ。それを解消するため、新北市では小学1年生から英語の必修化を行っている。
現地の中学校訪問を計画していた私は、9月6日に新北市立新泰國民中学校を訪問した。(所在地:新北市新莊區新泰路359號)
私自身は、台湾国籍ではあるが、日本の教育を受けて育ってきたので台湾の中学校を訪問することは人生で初めてだった。
この中学校の校舎は、古いタイプの建築様式だったため、日本の学校施設と比較すると開放感があった。目立った点としては、日本より敷地も広く、学生数も多いことである。
生徒は運動靴で校舎内を歩いているため、土足である。廊下が外に面しているので、教室のドアを開けると、外なのだ。日本では廊下が校舎内にある様式に慣れていたので驚いた。写真を見ていただくと分かるように、ワンフロアだけでこんなにも教室がある。この写真を撮った後ろ側にも、まだまだ廊下は続いていた。
授業風景を見るため、1年4組を訪問した。教室に入って、まずは生徒の机が違うことに気がついた。教科書をしまう場所は中身が先生から見えるようになっていた。これによって、先生は生徒がきちんと教科書を持ってきているかを確認することができる。
一番驚いたことは、教師がマイクを使って授業を(写真:授業の様子)行っていたことである。日本では、マイクを使った授業といえば"大教室での講義"のイメージが強いのだが、台湾の中学校では教員全員が使用しているのである。中には、教室備え付けのマイクが他人とのシェアであることを嫌い、自分のマイクを持参する先生も多くいる。校舎内を歩いていると、ヘッドフォンマイクをつけ、スピーカー機材を肩から斜めがけにかけて教室移動をしている先生もいた。日本ではお目にかかれない風景だったため、私の授業見学に付き添ってくださった、来(ライ)先生に撮ってもいいかを聞くと、「マイクの姿をとるのは失礼かもしれない。」という助言があったので撮るのを控えた。撮れなくて残念だった。
台湾の新学期は9月である。私の訪問した教室は、中1だったので、授業は"I, you ,we"といった初歩の部分を取り扱っていた。授業が始まるとすぐ、小テストが行われた。先生が発音する単語を英語で書き取り、その隣に中国語で訳を書くのだ。全部で20問あり、先生の一句一句を真剣に聞き取り、書いていく。書き終わった人から先生の机へ向かい、その場で確認してもらう。全員のノートを見ることはできないので、ある程度の時間がたったころ、全体で正解の単語を発音しながら答えあわせをした。
授業の途中から、先生の計らいで私の自己紹介と質問コーナーが設けられた。私は自分の名前とどこから来たのかだけを英語で自己紹介し、年齢や、身長、何が好きなのかを生徒から英語で質問してもらい、英語で答えた。逆に、私が「日本語でどんな言葉を知っていますか?」、「スポーツは何がすき?」、「何歳ですか?」と質問すると、積極的に手を挙げて英語で答えてくれた。文法の間違いを怖がらずに、どんどん発言してくれた生徒が多かった。終始和やかな雰囲気の中で行われた授業だった。
授業が終わる10分前に、先生が音楽部の生徒に台湾の伝統音楽を弾くようにお願いして下さったので、私は幸運にも演奏を聴くことができた。
先ほど述べたように、9月は台湾の新学期であり、先生方は忙しい。他の学年の英語の授業も見たかったが、残念ながら今回は出来なかった。
授業見学と合わせて、教員・生徒へのインタビューも行った。公立中学校で英語教員をなさっている 来珈伶(Lai)先生と陳特特(Chen)先生、そしてその先生方が受け持っている生徒にもインタビューに答えていただいた。
先生に対しての質問と生徒に対しての質問の2種類を用意した。先生に対しての質問は、3つ用意した。(質問A.-C.)1つ目が、A.「台湾では、幼稚園生のころから英語教育を受けることが一般的である。小さなうちから英語を学ぶことは良いことだと思うか。」2つ目に、B.「学校の英語教育によって、"実用的な英語能力=Reading, Writing, Listening and Speaking"を得ることが出来ると思うか。」そして3つ目がC.「先生として、どんな時に達成感が得られるか?」である。以下が先生から頂いた回答である。
A.「台湾では、幼稚園生のころから英語教育を受けることが一般的である。小さなうちから英語を学ぶことは良いことだと思うか。」
‹来 先生›
可能ならば早いうちに英語に触れることは、子どもにとって良いことである。英語を学ぶ環境が人工的でなく「自然」であれば、彼らは容易に、自然とリスニングとスピーキングができるようになる。しかしながら、台湾の幼稚園における英語を学ぶ環境というのは言語習得を子どもに"Push(押し付ける)"傾向にある。親たちは英語の先生か外国人の先生を雇い、子どもに多くの単語を覚えさせようとする。これは言語を学ぶのにふさわしい環境ではないと考えている。
ごくまれに、自然な環境の中で英語を学んできた子どもがいる。彼らは、英語を第二言語ではなく、外国語として学んでいる。違いは、学ぶもの("learned")としての外国語か、教えられるもの("taught")としての第二言語か、である。前者のような環境において子どもが英語を学ぶのならば早い段階から英語に触れることは大いに有益である。
‹陳 先生›
早い段階で英語を学ぶことは良いことだ。しかし、本当に大切なことは、先生が子どもたちのモチベーションを上げることである。もし外国語を学ぶことが子どもたちにとってストレスであれば、英語を学ぶことを拒否するだろう。
B.「学校の英語教育によって、"実用的な英語能力=Reading, Writing, Listening and Speaking"を得ることが出来ると思うか。」
‹来 先生›
学習者はインプットについては学びが早い(リスニング、リーディング)。対してアウトプット(ライティング、スピーキング)になると弱い。主な理由は、"テスト"に重きを置いているためである。政府は試験に重点を置いているために、カリキュラムもテストを中心としたものに編成している。先生たちは、多くの時間をリーディングとリスニングにかけている。なぜなら、これら2つのスキルは教えやすく、またペーパーテストで試験するのにちょうどいいからだ。しかしながら、ライティングとスピーキングになると先生たちに要求されるスキルは高く、また試験を行うことが難しい。それゆえに、これら2つのスキル(ライティング、スピーキング)にほとんど時間を割くことはない。台湾では大半の学習者は、リーディングとリスニングの能力をthe course of study(日本の「学習指導要領」に該当するもの)から得られていると思う。
‹陳 先生›
台湾の多くの学生はリーディングに関して、とてもよく出来る。なぜなら私たちは多くのテストを行っているからだ。他方で、何千もの単語を記憶しているというのに、生徒たちは外国人に英語で話しかけることを怖がっている。
C.「先生として、どんな時に達成感が得られるか?」
‹来 先生›
生徒がどんな形であれ、いい方向へと変化しているとき。その変化は小さかろうと大きかろうと、彼らの変化を見られることで達成感を味わう。「教育」によって私たちはよりよい人物へと成長することが出来る。生徒たちがよりよい人物になっていくサポートがうまく出来たとき、達成感がある。
‹陳 先生›
子どもたちが私の指導に感謝してくれたときがうれしい。
以上の2人の先生の回答を総括すると、早いうちから英語を学ぶ際に、子どもにとって英語学習が自然なものとして受け止められればプラスの経験として、その後の英語学習に結びつく。しかし、子どものころに英語に対して苦い思い出や苦手意識を持ってしまうと英語を受け入れられなくなる可能性がある。また、台湾でも(日本でもそうだが)テスト対策としての英語のため、インプットしたものをアウトプットする機会が少ないということが明らかになった。
次に、生徒への質問(D.-F.)は、3つ用意した。4人の生徒(生徒A-D)にインタビューを行った。D.「学校で学んだ英語で、ネイティブスピーカーとコミュニケーションはとれますか?」、E.「どのスキルに自信がありますか?(Reading, Writing, Speaking and Listeningから選ぶ)、またそれはなぜですか?」、F.「あなたにとって、英語を学ぶ目的は何ですか?なぜそう思ったのですか?」の3つである。
D.「学校で学んだ英語で、ネイティブスピーカーとコミュニケーションはとれますか?」
‹生徒A›
何年も英語を学んできたが、未だに英語でネイティブスピーカーとコミュニケーションをとるのは難しい。なぜなら学校では何時間もずっと文法の勉強をしているからだ。先生は私たちに多くの文法を教え、私たちは多くのテストを受ける。私たちは授業で英語を使って話す場面がほとんどない。
‹生徒B›
ネイティブスピーカーと話したことはない。なぜなら、機会に恵まれなかったからだ。私は授業内でのみ、英語を使っているのでネイティブスピーカーとコミュニケーションをとることは出来ないだろう。英語を使うことがこわい。自信がない。
‹生徒C›
私は英語クラブに所属しているので、英語を使う機会が多くある。はじめは、英語を使うこと、特にスピーキングすることがとても怖かった。いつも文法の誤りを気にしていた。ある一定の時間をかけて練習したのち、先生から外国人にインタビューをするよう指導され、プレゼンを行ったことが自信につながった。今も文法エラーはするが、この機会のおかげで、英語を使うことを恐れてはいない。
‹生徒D›
英語クラブに所属する前は、ほとんど英語を使う機会はなかった。なぜなら、使う機会がなかったことと、使う必要性がなかったからだ。学校ではテストを受けるか、リーディングをするか、文法を学ぶくらいだった。唯一のスピーキングは、教科書を読むときしかなかった。しかしながら、英語クラブに入ったことで、スピーキングについて少しは学べたと思う。先生は私たちにいつでも英語を使うように指導するし、多くの活動を英語でしてきた。外国人へのインタビューはもちろん、イギリス人への手紙交換も行った。だから、今では外国人とのコミュニケーションには自信がある。
E.「どのスキルに自信がありますか?(Reading, Writing, Speaking and Listeningから選ぶ)、またそれはなぜですか?」
‹生徒A›
リーディングには一番自信がある。なぜなら、授業ではリーディングに時間を多く割いているからだ。リスニングとスピーキングは難しいので、好きではない。
‹生徒B›
リーディングの能力は良いと思う。しかし、ライティングに関しては好きになれない。スピーキングとリスニングの能力は足りない。この2つは私にとって難しい。
‹生徒C›
昔は、リーディングはよかった。しかし、今はスピーキング、リスニングとライティングが良いと思う。ストーリーを書くことが好きなので、書くことは苦ではない。今は英語に対して自信がある。
‹生徒D›
スピーキングとリスニングについては自信がある。前は、この二つの力を伸ばすことが辛かったが今では多くの時間をかけているので、自信をもった。外国人とおしゃべりすることは楽しいと思う。
F.「あなたにとって、英語を学ぶ目的は何ですか?なぜそう思ったのですか?」
‹生徒A›
テストのため。もし、いい点を取りたければ、しっかり勉強しなければいけない。いい点をとれば、いい大学にいける。多くの大学は英語を重要視しているから。
‹生徒B›
将来ビジネスの場で使うため。もし会社の中で英語を使えれば、もっと価値のある人間になれる。
‹生徒C›
将来、外国で仕事をしたい。そのためには、英語力を高めなければならない。だから今英語を学ぶことは私の夢を達成するために必要である。
‹生徒D›
世界を旅するときに英語を使う。英語が使えれば、多くの人とお話しすることが出来る。多くの人と話しをしたいから、英語を学んでいる。
以上の生徒4人からの回答からわかることは、上で回答してくださった先生たちの指摘通り、子どもたち自身もインプットに関しては強いがアウトプットが弱いことに気づいている。テスト中心のカリキュラムであることで、受身の英語が多く、自分の意見を発信する英語を学ぶことが出来ていない。英語を使って会話が出来るようになるには、やはり使う場を増やすこと、外国人と交流する機会を設け、学んだものを活用する場を作ることが必要であると考えさせられた。
回答した生徒の内、3人は英語クラブに所属しており、英語クラブに入って英語を使って外国人にインタビューをしたこと、手紙を書いたことによって、自分の英語が通じる達成感を味わったのだろう。リーディング中心の学習をしているために、発信する力は弱いが、英語を道具として使った経験があれば、スピーキング、ライティングを自発的に伸ばそうと意識する生徒が現れる。英語の必要性に関しては、自分の将来のために英語を学習しているという意見が多かった。社会全体として、小さいうちから英語に慣れ親しむ傾向があるためか、生徒は英語の重要性を意識している。
現在校長を務めていらっしゃる、陳(Chen)浩然先生(淡水市正徳国中学校校長)にもインタビューをすることができた。私は、教育全体に関する8つの質問(G.-N.)をした。
G.日本では近年、公立高校が中高一貫校へと変化している。このことについてどう思うか?
台湾でも中高一貫校はあるものの、少ないのが現状である。推進したいとは思うが、マイナスの面がある。中高一貫校だと、中学校から高校に自然と持ち上がるので、生徒が成長した気にならない(環境の変化が少ない)点と、お金がかかるために土地と教室の拡大が難しい点である。台湾の新北市には80の中学校があり、そのうち15校が中高一貫校である。少ないと感じている。
H.現在の日本では、いじめ問題が過熱している。台湾では、いじめ問題はどう取り組んでいるのか?
台湾では、5~6年前にいじめ問題が世間の注目をあびた。台湾の教育では、「Ⅰ.いじめⅡ.セクハラ」が2大問題である。教師は、いじめの現場を目にしたら24時間以内に上司に報告しなければならない。報告しなければ教師は罰せられる。日本では、いじめられた生徒が(学校側が動かないために)、転校する形をとっている。しかし、台湾ではいじめた側が転校するように学校側が働きかけている。
I.あなたの学校の生徒の英語力能力(Speaking, Listening, Writing and Reading)についてどう思うか?
リーディングとライティングが弱い。裕福な家庭では、子供を幼稚園のころから英会話教室に通わせることができるが、そうでない家庭は週4時間の学校での英語教育しか受けることができない。この点で英語のレベルの差が発生してしまう。英会話教室に通っている子のスピーキングとリスニングは強い。台湾の高校受験・大学受験の際は、日本のように機械を使用したリスニングはまだ導入されていない。
J.英語を早い段階で学ぶことで母語を忘れてしまうという問題を記事で目にしたことがある。そのことについてどう思うか、また外国語を早い段階で学ぶことはよいことか?悪いことか?
シンガポールやマレーシアのように、公用語として英語と中国語が共存している国家では、日常生活が英語で埋まるために中国語をうまく吸収できずに成長することがある。また、その逆で中国語ができるが英語ができなくなるといった問題があるが、台湾では日常生活は台湾語・中国語であり、授業の際のみでの使用のため母語をうまく吸収できないといったことは起きない。
K.グローバル化になるにつれ、子供たちに外国語を学ぶ能力を求めるようになった。早い段階で外国語を学ぶことで「グローバル市民」となることは可能だろうか?
早い段階で英語を学んでも、global citizenにはならない。
L.では、グローバル市民になるための必要条件とは?
世界には多くの国、文化、言語があること、つまり多様性を知り、その国に対し尊敬すること。人とのかかわりをもつこと。世界で起きている出来事に関心をもつこと。責任をもつこと、第二言語を英語でも中国語でもなんでもいいから取り組むこと。コミュニケーションスキルを磨くこと、加えて協調性をもつこと。これらのことを持つことが大事。
M.日本の教員免許更新制についてどう思うか。
台湾でも、更新制を取り入れることで教員の質の向上が見込めるだろう。日本では、教員は夏休みに大学に通い、単位をとったものが更新できる形をとっているということであり、その費用を自己負担する点でマイナスの議論を語るよりも、指導員である大学の先生の質が高まらないと、中高で指導する先生の質の向上が見込めないだろう。全面的に更新制には賛成である。
N.先生と生徒、保護者、教育機関の間で起きている問題はあるか?
台湾でも、台北市(都心)でのモンスターペアレント問題が多発している。学力レベルをもっとあげろ、といったお叱りの連絡もしばしばある。不満がある親は、学校に直接連絡するほかに教育委員会に送ることもある。大統領に苦情を送る親もいる。農村部では、モンスターペアレント問題は少ない。クレームを受けることで、教育界はもっと改善できる。
(写真:陳浩然先生とのインタビュー)
陳先生から伺った意見は、大変参考になるものだった。現在私は三鷹中等教育学校で生徒の学習サポートをしている。三鷹中等教育学校は最近できたばかりの中高一貫校である。台湾でも中高一貫校が浸透しているか関心があったため、質問の一つに入れた。台湾政府としては、中高一貫校を推し進めたい一面があるが、そうはいかないようだ。
教育問題のひとつとして、日本では大津市のいじめ問題によって、「いじめ」が浮き彫りになった。「いじめ」問題に対して台湾ではどう取り組んでいるのかに関心があった。台湾でも、いじめ問題はかつて大々的に報道されたことのあるトピックであったと仰っていた。現在の台湾の教育界では、いじめの事実を隠すのではなく、クリアにしようとする姿勢で教育を行っている。上司へ24時間以内に報告しなければ罰せられるというのは初めて知った。日本でも、いじめをする者への対応、された側へのケア、そして関係者への対処の方向性をサポートする方法を考えなければならない。大津市の事件をきっかけに、いじめに対する取り組みが活発となっている。子供たちが学校に来やすい環境づくりをどうやって作りあげていくか、今後も問われていくだろう。
陳先生は、台湾国内での英語力の2極化を心配していた。台湾国内では英語への関心が高い。事実、台湾市内を移動していると多くの語学学校を見かけた。私の宿泊していた場所の回りにも多くの語学学校、こども向けの英会話スクールが隣り合って建っていた。それほど、英語学習は人気がある。陳先生は、英語を学ぶことをきっかけにして、自国以外に存在する文化を知ってほしいと仰っていた。そこから他に存在する文化に広げてほしい、とのことだった。英語ではなく、フランス語やスペイン語でも、何か一つ、他の言語を知ることは、その文化を知るきっかけになる。学んだ言語を利用して、実際に人とコミュニケーションすることでグローバル市民に一歩近づける、という言葉が印象に残っている。
私が学校で学んだ英語の中には表現が古く、実際は使わない表現も学んでいたと感じこともあり本当に役立つのか疑問だった。しかし、今では学校で学んだ英文法は無駄にはなっていないと気付いている。日頃から中大に来ている留学生と関わることが多く、大学で英語を専攻して良かったと思う。観光地でのガイドも何度か挑戦し、英語を話すことへの抵抗がなくなった。重要なことはペーパーで学んだ英語を基礎にして実際に応用してみること、つまり人とコミュニケーションをとってみることだ。今回台湾で現地調査をしたことで、台湾でも日本同様大学受験に向けた英語教育が中心であるため4技能の内のアウトプットの分野が弱いこと、早い段階で英語に触れることが必ずしもプラスの効果になるとは限らないことが分かった。将来教員になった時、生徒には学んだ英語表現を実際に使う場を設けたい。テレビ電話を活用し、学んだ英語表現で現地の人と会話する授業や英語圏の学校の生徒との手紙のやり取り行うなど、英語を使う授業を積極的に組み込みたい。
英語は暗記するだけの存在ではなく、生きたものだと実感が湧くような授業作りを心掛けたい。英語を実際に使う機会を設けることによって、英語への苦手意識・劣等感を少しでも減らせるはずだ。陳先生の仰っていた「グローバル市民」に少しでも近づけるような教育活動を将来できたらいいと思う。