ドイツ語文学文化専攻
「特色ある学部教育補助予算」による講演会
2025年07月29日
2025年7月14日(月)3限「専門演習(4)(10)」に、ドイツより作家・映画監
督・演出家のクリスティーネ・ナーゲル(Christine Nagel)氏をお迎えし、「『こ
こにいた』――1945年のデッサウにおける終戦直後の日々(HIERGEWESEN. Die ersten
Nachkriegstage 1945 in Dessau)」という題でご講演いただいた。
映画『ここにいた』はナーゲル氏の作・演出による同題の声劇に基づく。声劇はデ
ッサウ市(ドイツ)にあるアンハルト公爵家の霊廟の壁に、第二次世界大戦終戦直後
から21世紀にかけて書き残された言葉や絵に着想を得て創作され、2023-24年に霊廟
を舞台に上演された。
霊廟の壁の「落書き」には、とりわけ第二次大戦直後のものが目立つ。書き手には
戦争捕虜や強制労働者、兵士等が含まれる。ナーゲル氏はそれらの「落書き」が成立
した歴史的背景を、戦時中と終戦直後のドイツ、特にデッサウ市に焦点を当て、画像
やドキュメンタリー映画『帰還』(Le Retour, 1944/45)抜粋を交えつつ、分かりや
すくお話しくださった。
学生は事前に映画『ここにいた』を視聴し、ナーゲル氏へのコメント・質問等をド
イツ語と日本語で準備の上、当日に臨んだ。講演後、学生から講演の内容も踏まえた
多くの質問がドイツ語で投げかけられ、ナーゲル氏はその一つ一つに非常に丁寧にお
答えくださった。空間の歴史性や、歴史と個人史の交差、歴史理解と芸術表現等の
テーマについて学生に考察を促す、射程の広い質疑応答であった。当日は担当教員が
通訳を行ったが、部分的であれ学生自身が学術的内容についてドイツ語でやり取りし
たことの意義も大きい。