ドイツ語文学文化専攻

井上百子先生講演会「生きるためのドイツ語――移民国家ドイツの統合講座」が開催されました。

2018年06月05日

日 時                  2018年6月4日(月)11:00~12:30

場 所                  多摩キャンパス3454教室(文学部3号館低層棟4 F)

講演者                  井上百子先生(テュービンゲン大学東アジア研究所日本学科学術研究員)

題 目                  生きるためのドイツ語――移民国家ドイツの統合講座

 

 2018年6月4日に開催された講演会「生きるためのドイツ語――移民国家ドイツの統合講座」では、「現代ドイツ事情」の授業の一環として、移民・難民等に対して提供されているドイツの「統合講座(Integrationskurs)」でドイツ語講師を務める井上百子先生(テュービンゲン大学研究員)に、統合講座の現状についてお話をうかがいました。

  井上先生は、オーストリアの現代作家エルフリーデ・イェリネクの演劇テクストを分析し、筑波大学に博士論文『イェリネクの脱モンタージュ』を提出されたイェリネク研究の専門家です。ご講演では、イェリネク研究の問題関心と、ドイツに移民してくる人々がドイツ語運用能力を獲得する助けとなるという現在の先生の活動がどのようにつながっているのかを話された後、統合講座に関する詳しい説明に移られました。統合講座の目的、制度などの概略に加えて、2015年秋のいわゆる「難民危機」以降に生じた統合講座の変化が紹介され、現在の統合講座では数年前と比較して受講者の出身地や平均的な学習経験が大きく変化していること、「非識字者」への対応がとくに大きな問題となっていることについて詳しい説明がありました。

  移民・難民が新しい場所で生きていくためには、受け入れ地で使用される言語を習得することが不可欠です。言語能力が不足していると、継続的な就業が難しくなり、ひいては統合そのものに困難が生じます。ドイツの難民問題については日本でもよく報じられるところですが、受け入れの実態を言語教育の場で間近に目にしている井上先生のお話は、参加した学生たちにとって大きなインパクトがあったようです。講演後45分近くにわたって参加者からの質問が途切れることなく続き、大変活発な質疑応答になりました。

 

(川喜田敦子)