東洋史学専攻

ソウル大学の崔宰榮先生を招聘しました

2023年02月27日

ソウル大学歴史教育学部の崔宰榮准教授を、本学の外国人研究者として受け入れました。崔宰榮先生のご専門は、東アジアの都城史であり、数多くの論著を公刊され、国際的に広く知られる著名な青年学者です。今回の受け入れによって、本学の大学院・学部の学生が、崔先生の深遠な学識の一端にふれ、東洋史に関する最新の研究動向を吸収することができたことは、中央大学の教育・研究の上で大きな意義をもつと思います。


 崔先生は、2023年1月15日から2月3日の期間、本学に滞在され、東洋史学専攻に拠点をおき、公開の講演会での講演の他、毎週の大学院授業に出席され議論を主導されました。本学の他にも、多くの研究者との交流を進め、東京大学文学部・大学院人文社会系研究科においても講演と研究交流を実施されています。主に本学での崔先生の活動と交流をまとめますと、以下のようになります。

1. 公開講演「皇帝、都城、そして隋唐長安城の太社」(1月18日)
 韓国の研究情況をふまえ、隋唐の都城である長安城の歴史的性格を、皇帝の祖先をまつる宗廟と、大地の神をまつる社稷の分析を軸に、新たな視角から論じた内容です。韓国のソウルに残る宗廟と社稷を考察の起点におき、隋唐長安の宗廟と社稷が、皇帝の私的空間と国家の公的空間をそれぞれ象徴することで、王朝の統治を正統づける中核となったことを明快に論じました。
 崔先生の講演は、受講した大学院生や学部生にしばしば質問を発し、出席者に答えさせながら分析を深めていく、演劇的なスタイルをもち、出席者は皆、劇的空間の中に引き込まれていきました。見事な演出だと感じます。質疑応答でも、東アジアの歴史の比較をめぐる多くの問題が論じられ、充実した講演を終えました。

2. 大学院授業への出席と議論提起
 1月18日の東洋中世史演習と、1月25日の東洋中世史特講・東洋中世史演習の授業に出席され、講読していた『長安志』の解釈について豊かな知識をもとに検討を加えていただき、隋唐長安史の研究動向を論じる特講では、韓国の研究動向を教示していただき、極めて内容の濃い授業展開が可能となりました。

3. 専攻研究室での研究交流
 滞在中は、専攻研究室の教員と交流を行い、専攻研究室に架蔵されている多くの専門図書を活用して研究を進められ、日本における所期の目的を達成されました。
 総じて、崔先生の本学での研究と教育活動は、専攻のみならず中央大学の国際交流の進展にとって、大きな意義をもっていたといえます。(文責:妹尾達彦)