文学部

「入門・世界文学」の授業で、詩人の丁章さんの講演を実施

2026年07月29日

2026年7月14日(火)4限の授業科目「入門・世界文学」(担当教員 大田美和)に、詩人で、北海道・美瑛にある個人美術館 新星館館長の丁章(チョン・ヂャン)さんをお招きして、講演「在日文学の詩を生きる~私のCASE」をオンラインで実施しました。

 

在日コリアン3世の丁章さんは、小学生のとき、自分がみんなと違って朝鮮人であると発見して喜んだのも束の間、差別されるからその話はしてはいけないと両親に注意され、級友から「秘密」をばらしてやるぞと脅されて、苦しんだという話から始めました。その後、様々な紆余曲折を経ながら、本名宣言をし、文学修行をしてペンの力によって、ありのままの自分を認め、他者にも認めてもらうようになっていきます。そして、在日文学はすべての人間の解放につながるものでなければならないという結論に至ります。お話の中では、在日コリアンの民族教育と弾圧の歴史、金時鐘の「人々は銘々自分の詩を生きている」という言葉や、高村光太郎の言葉や、中島敦の『山月記』も引用されました。

最後に、丁章さんは、自作の詩「馬からマルタへ」と「丘に立つサラム」を朗読しました。「馬からマルタへ」は、かつて毒ガス実験の行われた美瑛の丘から、毒ガス実験や細菌実験の行われた陸軍登戸研究所や大久野島を見晴るかし、過去の歴史を見すえながら、あらゆる人間の命を尊重する平和な未来を希求する詩です。「丘に立つサラム」からは、北海道の夏の風景が伝わってきました。

参加した学生たちからは、差別を受けた当事者から話を聞くことで教科書を読む以上の手応えがあった、過去にあった差別をなかったことにしてはいけない、詩に対する先入観が変わり、自分も詩を書いていいのだと思えた、言葉や文学は単なるコミュニケーションのために存在するのではなく、アイデンティティや個人の経験と深く関わるものであることを知ったという反響がありました。

 

ゲストの1回の講演が、いかに学生たちの心を揺り動かし、自分には何ができるかと考え、実行につなげていく契機となるか、あらためて実感する機会となりました。これからもこのような授業を実施していきます。

新星館・カウンターでコーヒーを淹れる丁章さん