1月8日(水)5限の「英文専門演習(2)/(4)」(担当教員 大田美和)の授業に、文学部の「特色ある学部教育補助予算」を利用して、現代詩作家・文芸評論家・東海大学講師の岡和田晃(おかわだあきら)さんをお招きして、「文学における抵抗の可能性 『ソマイア・ラミシュ詩集 私の血管を貫きめぐる、地政学という狂気』」という題でご講演いただき、ワークショップを行ないました。
岡和田晃さんはまず自己紹介から始めて、アウエルバッハのミメーシスとディエゲーシスの概念を紹介しながら、詩を読むとはどういうことかを、アフガニスタンの亡命詩人 ソマイア・ラミシュさんの詩集の7番の詩(「銃弾が」)を例にしてお話されました。英訳された詩(※ソマイア・ラミシュさんの母語はダリー語(ペルシャ語)だが、英語も堪能で、英訳は本人がチェックしている。)と、岡和田さん自身の日本語訳を比較しながら、ソマイア・ラミシュさんの詩は、場面や主体がめまぐるしく入れ替わる形を取ることによって、詩人一人の経験ではなく、「世界内戦」下を生きる人々の集合的な経験を描いた詩として読めるようになっていることを明らかにしました。
次に岡和田晃さんと大田美和の二人で、武満徹の「ノスタルジア」をBGMとして、詩集に納められた20篇の詩を交互に、会場内を二人が歩いて場所を移動しながら朗読しました。
その後、学生と参加者が20篇の詩の中からそれぞれ一篇を選んで、感想を述べました。最初は緊張している様子だった学生たちも、詩の朗読をライブで聴くという初めての体験の衝撃を語ったり、ジョージ・オーウェルの『1984』の世界との共通点を指摘したり、日本では想像できない異国の風景の描写される詩の読みがたさを指摘したり、詩の中に頻出する液体と留まるものの対比に着目して批評を試みたりするなど、詩に接した自分の中に湧き上がった思いや考えを表現し、共有する時間となりました。これは、英文学にも詳しい岡和田さんが短いコメントをはさむなどして励ましたおかげだと思います。
最後に岡和田さんは、ガヤトリ・スピヴァクの「惑星思考(プラネタリティ)」をもって世界を見るようになってほしいと、まもなく社会に出て行く若者を励ます言葉で、今日のお話を締めくくりました。4年生にとっては、これが大学での最後の授業となった者も多く、文学の「実用性」について、現代社会について、あらためて考える機会となったのではないでしょうか。
講演とワークショップに参加された学内外の皆様、ご関心をお寄せ下さった皆様に、心より感謝申し上げます。

ソマイア・ラミシュ詩集

岡和田晃さん(現代詩作家・文芸評論家・東海大学講師)と大田美和教授