文学部

文学部教授 中坂恵美子・池田賢市編 『人の移動とエスニシティ』が刊行されました。

2021年08月30日

『人の移動とエスニシティ』

越境する他者と共生する社会に向けて

 

中坂恵美子 編著

池田賢市 編著

 

出版社:明石書店(https://www.akashi.co.jp/book/b589386.html

出版年月日:2021/08/31

定価:本体2,200円+税

ISBN:9784750351773

判型・ページ数:A5・260ページ

 

 

 

内容紹介・・・・・・・・・・・・・・・

 

他者と共生する社会をつくるために

――学際的なアプローチで「人の移動とエスニシティ」を考える

 

移民や難民等の「人の移動」という現象とエスニシティという概念をめぐり、学際的・多角的に考察した『人の移動とエスニシティ――越境する他者と共生する社会に向けて』(本学文学部教授 中坂恵美子・池田賢市編)が刊行された。本書は、文学部で2020年度に開講されたプロジェクト科目の講義内容をもとに編集された、大学での教養教育を想定した入門書である。と同時に、各専門分野ですでに学習や研究、活動をされている人たちにとっての他分野への誘いの書ともなっている。

 

他者と共生する社会をつくるために欠かせない一つの要素は、多様な視角の存在を理解することである。互いの考えを一致させることは不可能であっても、異なる意見の背後に何があるのかを考える必要はあるだろう。自分にはみえていないものが他者にはみえているかもしれないし、自分が経験していない出来事が、他者の考えを生み出しているかもしれない。このことは、国籍や民族という違いがなくてもありうることで、たとえば、世代や性的指向なども考え方や行動の違いをもたらす。それでも、やはり、人と人を隔てるものとして、国境ほど高い壁はないであろうし、それを越えてきた他者との共生は、今を生きる私たちが取り組むべき重要な課題である。

この課題に向き合うために、異なる学問分野の専門家が、それぞれの知見からアプローチを試み、一冊の本として複数の視角を提供しようとしたのが本書である。必ずしも自分が求めていたわけではない学問分野の話にもふれ、多様な見方を知っておくことは、情報の偏りが生み出す弊害の予防策ともなるだろう。一冊の本が運んでくる偶然で半強制的な出会いを楽しんでみてほしい。

 

<目次>

第1部 国家と移民、エスニシティ

1 人の移動とマイノリティに関する国際法【中坂恵美子】

2 移動民の側から世界をみる

―「周辺」 としていた土地や人を理解するためのフィールドワーク―【新原道信】

 

第2部 世界の移民とエスニシティ

3 フランスの移民と教育課題【池田賢市】

4 ドイツ史のなかの人の移動 ―「難民」がつなぐ歴史と現在―【川喜田敦子】

5 人の移動がつくったアメリカ合衆国 ―人種とジェンダーの視点から―【松本悠子】

6 変容する「中国」の多様性と複雑性【及川淳子】

 Column 中国雲南のムスリム―共生の作法― 【首藤明和】

 Column 多様性と複雑さのなかの東南アジア 【高橋宏明】

7 イスラーム圏とエスニシティ【松田俊道】

 Column アフリカ大陸―今日も人々は国境を越える― 【片柳真理】

 

第3部 日本の歴史と現在

8 DNA からみた人の移動 ―日本人はどこから来たか―【篠田謙一】

9 日本からの海外移住の歴史【中坂恵美子】

 Column 南洋群島の移民と文学―石川達三・中島敦― 【山下真史】

10 在日コリアンの歴史と今【大田美和】

 Column 「日本」という国家の創造と「国史」 【宮間純一】

11 日本の入管法と諸問題【杉田昌平】

 Column 社会的カテゴリーとアイデンティティ―日系人の実態― 【小嶋 茂】

 

第4部 現代社会にどう向かい合うか

12 都市・演劇・移動【高山 明】

 Column 「お買い物」で知る移民の文化

      ―ブルックリン子ども博物館のプログラム― 【横山佐紀】

13 多文化共生のための教育―多様性の尊重と社会正義の実現にむけて―【森茂岳雄】

 

<編者紹介>

中坂恵美子(なかさか・えみこ)

中央大学文学部教授。専門:国際法。主な著書:『難民問題と「連帯」―EUのダブリンシステムと地域保護プログラム』(東信堂、2010 年)、「問われる欧州共通庇護政策における『連帯』―二〇一五年九月のリロケーション決定をめぐって」『包摂・共生の政治か、排除の政治か―移民・難民と向き合うヨーロッパ』(明石書店、2019 年、285-313 頁)。

 

池田賢市(いけだ・けんいち)

中央大学文学部教授。専門:教育制度学。主な著書:『フランスの移民と学校教育』(明石書店、2001 年)、『学びの本質を解きほぐす』(新泉社、2021 年)。