国文学専攻
国文学専攻教授 中川照将ゼミ 合宿を実施
2026年08月31日
平安文学の舞台を歩く―京都で中古ゼミ合宿
国文学専攻の専門科目「ゼミナール(1)・(2)」(平安文学ゼミ/担当:中川照将 文学部教授)では、8月26日・27日の2日間、京都でゼミ合宿を行いました。合宿のテーマは「平安文学の理解を深める」。古典文学作品に描かれた場所を実際に訪れ、作品世界を追体験することで、平安文学への理解を深めることを目的としました。
●1日目――逢坂の関から石山寺へ
1日目は、京都府と滋賀県の県境にある逢坂の関址を訪れた後、滋賀県の石山寺を散策しました。
逢坂の関は、百人一首の「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」にも詠まれた、古くから知られる関所の一つです。都の東の玄関口ともいえる場所で、実際にその地に立つことで、古典文学の中で描かれる「都の外へ出る」という感覚を具体的に想像することができました。
続いて訪れた石山寺には、紫式部が琵琶湖に映る満月を見て『源氏物語』の着想を得たという伝承があります。また、石山観音は霊験あらたかであるとして信仰を集め、都からも多くの人々が訪れました。現代の感覚では「京都から近い」と感じる距離ですが、京都駅から石山寺までは約19キロあります。その道のりを『蜻蛉日記』の作者・藤原道綱母は徒歩で移動したとありますから驚きです。古典作品に記された旅の距離を実際の地理に置き換えてみることで、当時の人々の移動の大変さや、土地と都との距離感を改めて実感しました。
●2日目――平安京の面影をたどる
2日目は、京都市内を散策しました。『大鏡』の舞台となっている雲林院や紫式部の墓を訪れたほか、内裏の清涼殿や弘徽殿などの跡地をめぐり、最後に京都御所へ向かいました。
今回のゼミ合宿で特に意識したことが2つあります。
1つ目は、できるだけ徒歩で移動することです。平安時代には、もちろんバスや電車はありません。作品に描かれた人物がどのような距離を、どのくらいの時間をかけて移動したのかを考えながら、私たちもできるだけ自分の足で歩きました。
2つ目は、平安時代の地図である「平安京条坊図」を見ながら歩くことです。現在では、スマートフォンを使って現在の地図と平安時代の地図を重ねて見ることもできます。こうした機器を活用し、常に自分たちの現在地を確認しながら歩くことで、「文学を読むこと」と「歴史を生きること」がつながっていくように感じられました。
●土地・身体・時間を通して文学を読む
8月の京都は厳しい暑さで、参加者全員が汗をかきながらの移動となりました。それでも、普段の授業ではなかなか見ることのできない笑顔や会話に触れることができ、充実した2日間となりました。
移動の途中では、染色問屋の方からアイスクリームをごちそうになり、古代の染色についてお話を伺うという、思いがけないうれしい出会いもありました。こうした偶然の出来事も、実際に街を歩いてみたからこそ得られた貴重な経験です。
今回の合宿を通して、平安文学を単なる文字として読むのではなく、作品が生まれた土地を歩き、自分自身の身体で距離や時間を感じることの大切さを、あらためて実感しました。作品の舞台を実際に訪れることで、これまで教室で読んできた文学が、歴史や土地と結びついた、より立体的なものとして感じられる2日間となりました。
尚、この合宿は文学部「特色ある学部教育補助予算」の助成を受けて実施しました。