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2017年11月04日

ベネディクト・フィーリップ・クレーア氏講演会「2017年ドイツ連邦議会選挙」が開催されました。

日時   2017年10月24日(火)13:20~14:50

場所   多摩キャンパス3454教室(文学部3号館低層棟4F)

講演者  Benedikt Philipp Kleer氏(ギーセン大学政治学研究所研究員)

題目   Bundestagswahl 2017 – Warum nicht Europa?

             (2017年ドイツ連邦議会選挙-なぜヨーロッパは争点にならなかったのか?)

使用言語 ドイツ語(日本語逐次通訳つき)

 

 

 2017年9月、4年に1度のドイツ連邦議会選挙が行われました。この講演会では、ドイツ・ギーセン大学政治学研究所研究員のベネディクト・フィーリップ・クレーア氏が、選挙戦とその結果について、とくになぜ「ヨーロッパ」が争点にならなかったのかという観点から、解説してくださいました。

 ヨーロッパは、イギリスのEU離脱、難民・移民問題、右派勢力の台頭などに揺れており、今回の選挙は世界的にも注目を集めました。そのなかで、これまで政権を担ってきたキリスト教民主同盟・社会同盟と社会民主党の二大政党がそれぞれ第1党、第2党の座を守ったものの、大きく議席を減らし、新興右派政党の「ドイツのための選択肢」が、約13%の票を得て第3党に躍進しました。

 当初、元欧州議会議長のマルティン・シュルツを首相候補に立てた社会民主党が支持を伸ばしました。しかし、クレーア氏は、有権者の関心がEUよりも難民・移民問題、裕福な階層と貧しい階層との格差の是正、教育政策、治安・テロ対策などの内政問題に集まったのに対して、シュルツが内政経験の乏しい政治家であったこと、与党の社会民主党が従来の政策を刷新できるとの信頼を得られなかったことから、政権獲得に至らなかったと指摘しました。また、メルケル首相が属するキリスト教民主同盟・社会同盟の選挙キャンペーンも、有権者が関心を寄せる問題や欧州政策についての具体策を明示するものではありませんでした。

 一方、故郷や伝統の保持、「ドイツ民族」の重視、難民の受け入れ制限などを訴えた「ドイツのための選択肢」は、党勢を拡大しましたが、極右的、民族主義的な政党が連邦議会に議席を得るのは、戦後初期を除くと初めてのことで、ドイツ社会でも論議を呼んでいます。クレーア氏は、ベルリンのドラァグクイーンが意見を表明したポスターやストリート・アーティストの街頭作品など、「ドイツのための選択肢」に警鐘を鳴らす市民社会の活動を紹介されました。また、東ドイツ地域では「ドイツのための選択肢」の得票率が20%以上に達するなど、東西ドイツ地域の選挙結果に顕著な差があるという興味深い指摘もありました。

 社会民主党が大連立を継続しない方針を表明したため、キリスト教民主同盟・社会同盟は、第4党となったリベラル政党の自由民主党、第6党の緑の党との連立に向けた交渉を進めています。クレーア氏は最後に、政策方針の隔たりが大きい3党の連立交渉が長引く、新政権にはEUの統合深化を積極的に進める政策は期待できない、という見通しを示して、お話を締めくくられました。

 視覚資料も用いて分かりやすく論じていただいた今回のご講演を通して、EUが難局に直面するなかで、それを主導する立場にあるドイツでも、内政優先の傾向が強まっている現状を知ることができました。けれども、難民・移民問題にせよ、格差の縮小にせよ、EU全体の政策運営や制度改革とも密接に関わっています。ドイツの新政権が民意を汲み取りつつ、内政外交の両面でどのようなかじ取りをしていくか、「ドイツのための選択肢」が政治的、社会的にどのような影響を及ぼしていくかが注目されます。

                                       (福永美和子)