英語文学文化専攻

文学部教授 大田美和の新刊、思考集『世界の果てまでも』の書評が「週刊読書人」に掲載されました。

2020年06月23日

文学部教授 大田美和の新刊、思考[エッセイ]集『世界の果てまでも』北冬舎、2020年 の書評が「週刊読書人」6月19日号に掲載されました。「週刊読書人」は「図書新聞」と並ぶ日本の書評新聞です。

書評の執筆者は、詩人・映画監督・首都大学東京名誉教授の福間健二氏です。書評のタイトルは、「「外」へと向かう思考と感受性――啓蒙よりも希望を語る。謙虚に、しかし大きく出る。」となっています。

福間氏はまず、いま元気な表現者とはどういう人たちなのかと問いかけて、その指標の一つは、「外」へ向かう力をもっているかどうかだとします。「ジャンルの外、領域の外、既成の価値観の外、さらにはこの日本という国の外」を意識して仕事をしているかどうかということです。

そして、ジャンルの内側でしか通用しない権威におもねるような内向きの表現者たちを厳しく断罪した上で、「自分にも、世界にも、望むことと猶予すべきことをはっきりさせ」、「実作、研究、教育、人と社会への働きかけ」のどれもなおざりにせず、性急すぎない大田の表現者としての姿勢を高く評価します。

福間氏は、このエッセイ集には、「人との出会いから得たものを着実に活かしてきた」「ハツラツとした思考」が収められているとし、このような実践を支えるものは、師である歌人近藤芳美の姿勢の継承や、「地に足のついたフェミ二ズム」だけではなく、言葉も行動も瞬間的に把握するユニークな心の動き、感受性にあると述べています。

文中では大田美和の以下の3首の短歌が引用されています。

文学は冷たく広大なる渚ひっかいたあとを残して死にたい
何もかも手に入れたくてわたくしは一生懸命のんびりしてる
チョコレートの銀紙きらきら落ちて行く病棟の夜の青いバケツに

ポリフォニックな一冊の本を複数の引用によって立体的に論じ、現代日本の言語と社会の状況の中に位置づける優れた書評です。ぜひお読み下さい。

「週刊読書人」は書店またはオンラインでお求めになれます。全国のコンビニ(ファミマ&ローソン限定、マルチコピー機でe-SHINBUNから開始)で新聞プリントサービスもあります。また、中央大学図書館でも定期購読されています。

大田美和の思考集『世界の果てまでも』北冬舎 は、最寄りの書店では取次八木書店扱いで注文できます。インターネット書店でも購入できます。中央大学図書館にもまもなく配架されます。