学生サポート

性別違和があり、辛いことが多いと打ち明けてきた学生がいたら・・・

学生から「戸籍上の性に対して異なる性自認があり、授業や日常生活で辛いことが多い」と相談がありました。どのような接し方が大事でしょうか?

性や性別違和に関する話はとてもデリケートで、相談者は相手の反応に不安を抱えることも多く、聴き手を選びます。それでも相談してくるということは、悩みや困りごとを抱えきれなくなってのことでしょう。まずは「了解なしに他の人に伝えることはしないから、安心して。一緒に考えよう」と伝えてください。
彼らの中には、これまでの学校生活でのストレスや不安が原因で対人関係が難しくなったり抑うつ的になったりするなど、二次的な精神的不調を経験した人も少なくありません。落ち着いた環境の中でじっくり聴くようにしましょう。
相談を受ける際には、性別違和による生活場面での不自由さと、不安がもたらす精神面の不調は切り分けた方が良いでしょう。まずは本人の不自由さやストレスの原因を解消するアプローチを考える必要があります。その上で、あわせて精神面の不調に対するケアをおこなっていきます。
彼らはどのようなことにストレスを感じるのか、受け止める側は性別違和の基本的知識を持った上で、想像力を働かせる必要があります。学生相談室運営委員会がまとめた「性別違和あるいは性同一性障害を抱える学生への対応について(指針)」は、過去の事例をふまえていますが、これをそのまま適用するのではなく、相談に来た学生の具体的な困りごとに焦点を合わせるようにしましょう。
なお、人間関係の悩みの原因を性別違和に求める人や、発達障害としての生きづらさを性別違和と考える人など、厳密に「戸籍上の性と性自認の不一致」とは言い切れない人も多いので、その点は注意してください。
今後の環境改善に繋げるために協力してほしいという姿勢で聴けば、相談者も話しやすいかもしれません。今までにも(1)誰でもトイレはトイレのあるところすべてに作ってほしい、(2)各教員に事情を話して配慮を求めるのは現実的に難しいので、学部事務室で調整してほしい、(3)入学前に相談の機会を作ってほしい、などの要望が出たことがあります。性別違和を抱える人それぞれに異なる考え方や希望があるので「性別違和という言葉だけでわかった気にならないでほしい」という意見もありました。
指針の周知により体制や環境の整備が進められたとしても、彼らが少数派であることには変わりなく、生きづらさや精神的不調を感じずに済むことは期待しにくいです。その場合は、学生相談室のカウンセリングや専門的医療相談へ繋げるのが良いでしょう。学内の当事者グループの紹介をしてみても良いと思います。

【参考文献】
石丸径一郎「LGBTsとの共生:大学でできること」(東海大学教育支援センター『COMMUNICATION NEWS UP』第67号、2017年)pp.2-13