中央大学について

理事長挨拶

「Chuo Vision 2025」と中央大学の進むべき道

理事長 大村雅彦

大学の使命は、教育、研究、社会貢献といわれますが、歴史を振り返ってみると、中央大学は、教育、研究、社会貢献を踏まえた上での人材(人財)育成を最大の使命としてきたのではないかと私は思います。

138年を遡る昔、不平等条約の是正のために近代的な法制度を構築することを目指して都心の神田に創設された英吉利法律学校は、輝かしい歴史と実学の伝統を経て、今日の中央大学となりました。難関国家試験に強く、ことに日本の法曹界では本学卒業生がその大きな部分を占めてきました。これは誇るべきことです。しかし、ただ単に弁護士や公認会計士などの資格試験の合格者数が多いということだけが中央大学の特色ではありません。

そもそも創立者代表の増島六一郎は、明治初期にイギリスに留学し、英吉利法律学校を立ち上げ、その校長を退任した後は、外国にも自分の事務所を開き、アメリカの弁護士会とも交流するなど、国際的に法律業務を行う global lawyer でした。現在の本学の教員にも国際的に活躍しているグローバル・パーソンが数多くいます。私も、法務省・JICAの法整備支援事業でカンボディアの民事訴訟法典起草を支援する仕事を引き受けたのは、国際的な社会貢献への思いが基礎にあったからです。地雷で足を失った多くの人々がプノンペンの中央市場で物乞いをしている姿を目撃するたびに、自分の仕事が同国の発展に些かなりとも役立つ日が将来訪れることを願いました。学生諸君には、広い視野と国際的な目標を持っていただきたいと思います。そのために役立つ国際的なプログラムを、本学はすでに多数提供しています。

また、本学は気骨ある言論人、グローバル企業の経営者、政界のリーダー、国家・地方公務員として活躍されている方々、スポーツ界の一流選手たち、さらには芸術・文化関係の著名人などを多数輩出してきました。本学卒業生(学員)のこうした幅広い活躍をみれば、本学がこの国を支える多様な人材を各界に多数送り出すことのできる総合大学であることがわかります。こうした総合力の伝統は、他私大にはあまり見られない強みだといえます。

本学は、2016年度から「Chuo Vision 2025」という10年計画を遂行中です。その主要事業として、国際経営学部や国際情報学部の創設、多摩キャンパスでの多目的国際交流スペースであるグローバル・ゲートウェイや国際教育寮などの建設、新たな茗荷谷キャンパスへの法学部の移転、新駿河台キャンパスへのロースクールとビジネススクールの集約などをすでに実現しました。加えて、後楽園キャンパス1号館の建替えに着手し、グローバル化の推進、総合学園のあり方の探求、スポーツの振興などを進めています。コロナ禍を乗り越えて中央大学の魅力と競争力をさらに向上させ、世界に存在感のある大学にするために、教職員だけでなく、卒業生の協力も得て、「Chuo Vision 2025」を着実に遂行していく所存です。

2023年6月
学校法人 中央大学
理事長 大村 雅彦

1954年兵庫県生まれ。1977年中央大学法学部卒業。同大学院博士前期課程修了、1979年中央大学法学部助手、1990年教授、2004年法科大学院長。2012年中央大学国際センター所長、2014年常任理事。2017年5月理事長。2020年理事長再任。2021年中央大学名誉教授。2023年理事長再々任。このほか、テキサス大学・ケンブリッジ大学・カリフォルニア大学ヘイスティングス校等にて在外研究。1998年カンボディア法制度整備支援委員(JICA)、2002年文部科学省学校法人運営調査委員会委員、2003年文部科学省大学設置・学校法人審議会大学設置分科会専門委員、2013年大学基準協会法科大学院認証評価委員会委員長、2015年Vice President, International Association of Procedural Law (現在は名誉副会長)、2016年文部科学省私立大学等の振興に関する検討会議委員。博士(法学)。専門は民事訴訟法・民事司法制度。