研究

粗悪学術誌・学術集会に関する注意喚起

2024年2月27日

中央大学
副学長(研究・産官学連携推進担当)
加藤 俊一

粗悪学術誌・学術集会に関する注意喚起

粗悪学術誌・学術集会とは

 学問の発展ではなく利益の追求という動機に基づく粗悪な学術誌(いわゆるハゲタカジャーナル)や粗悪な学術集会は、ここ数年でより巧妙になり、その影響は全世界に広まっています。このような略奪的な学術活動は、研究活動の信頼性を損なうだけでなく、誤った情報が広がることで公共政策に悪影響を及ぼす可能性もあると、世界中の研究者が懸念を抱いています。

粗悪学術誌・学術集会での発表の悪影響

 粗悪な学術誌・学術集会は、査読が厳密でない、もしくは、査読がなされないために、ここで公開された成果は、実質と関係なく質が悪いと評価される可能性が高くなります。また、このような発表の場を選択したことで、研究者として不当に疑われる可能性があります。

 これに対し、科学、工学、医学の国際的ネットワークであるInter Academy Partnership (IAP)は、「粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」と題した研究プロジェクトの成果を公開しています。ここで行われたグローバルな調査では、回答者の14%が粗悪学術誌・学術集会での発表経験を認めたと報告されています。業績の水増しという悪意だけでなく、出版・参加の段階で気がつかなかったことも粗悪学術誌・学術集会利用の理由とされており、粗悪学術誌・学術集会を見抜いて利用しないことが、自身の研究キャリアを守るためにより重要となっています。

粗悪学術誌・学術集会を拒否して研究キャリアを守るには

 しかし、このような略奪的な学術活動はより巧妙に多様化を続けており、各所で公開されている粗悪学術誌・学術集会のリスト、質が担保された学術誌・学術集会のセーフリストであっても、利用時点で正しい内容であるか疑わしいのが現状です。そのため、投稿しようとする雑誌・学術集会は、下記の複数の観点で十分に検証する必要があります。

  • Web of Science ( https://www.webofscience.com/wos/woscc/basic-search ) やDOAJ ( https://doaj.org ) 等の一定の質が担保されたデータベースに収載されている学術誌か
  • 出版版倫理委員会 ( Committee on Publication Ethics : COPE ) (https://publicationethics.org/members)に所属して出版倫理 ( COPE Core Practices )に従う等、信頼に値する出版社か
  • クラリベイト社のインパクトファクター ( https://jcr.clarivate.com/jcr/home )等、学術誌として正式に評価されているか
  • スポンサーや学会等の資金提供・共催がある学術集会か
  • 他の研究者や指導教員から問題等が指摘されない学術誌・学術集会か
  • 上述のような信頼性を虚偽申告(インパクトファクターが付与されていないのに付与されていると示す等)している、編集委員会等に著名な研究者名が無断で記載されている、著名な学術誌を模倣している、投稿費用情報等が明記されていない等、サイト等に詐欺的要素がないか
  • 査読が行われていないか、極めて短期間の査読期間が提示される等、採択プロセスに疑問がないか

問い合わせ先

 上記の観点は一例ですが、学術誌・学術集会からの説明内容に少しでも疑念を感じた際は、適切な成果公開の場としてのご確認を今一度お願いいたします。

 ご判断がつかない際は、研究支援室にご相談ください。

※参考

Combatting Predatory Academic Journals and Conferences

報告書原文:https://www.interacademies.org/project/predatorypublishing

報告書要約日本語版:https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/Combatting-Predatory-Academic-Journals-and-Conferences-SummaryJapanese-translation-1.pdf