学生サポート

論文指導中に大学に来なくなってしまった学生がいたら・・・

指導学生が、修士論文作成中に大学に来なくなりました。他の学生に様子を見てきてもらったところ、研究が進まないことへの焦りと、卒業・就職への不安とで動けなくなったようです。最近は家にこもりきりで不眠も続いているようですが、どう対応すれば良いでしょうか?

大学院では学生同士や学生と教員との距離が近いため、学生の変調に気付くことができたのでしょう。身体の不調であれば周囲に助けを求めやすいのですが、研究や将来に対する不安が大きな要因になっている場合、まじめな学生は自分で解決すべき問題と考えてしまい、周囲に苦境を訴えることができないと想像されます。一人で抱え込まず相談してほしいこと、登校が難しければメールでの指導など、学生のやりやすい形での支援を惜しまないことを伝えてください。もし教員からの声かけに遠慮しがちな学生であれば、先輩などに間に立ってもらうことも考えられます。
一番気になるのは学生の精神状態です。受診が必要な程のうつ状態(眠れない、食べられない、悲観的な思いにとらわれ動けないなど)にないか、周囲に過度に敏感、被害的になるなどの精神的変調を来たしていないか、適切な支援が受けられているかを把握することが大事です。以前に同様の状態を経験したことがあるか、周囲に支えてくれる人、相談できる人がいるか確認しましょう。以前にも経験がありしばらく休むことで復帰できたとか、家族に相談できているのであれば、少し経過を見て良いと思われます。誰にも相談できない状況であれば、学生相談室のカウンセリングを利用して問題を整理するように勧めてください。「不眠などの身体的不調をそのままにしておくと悪循環になるので、手を付けやすいところから楽になろう」と精神科医の活用を促すのも、本人の状態をつかむ糸口になるかもしれません。ためらうようであれば初回は先生も同行してくだされば心強いでしょう。
連絡に返事がない場合は、緊急性を見極めるためにこれまでの関わりを振り返るとともに、学部の頃の様子を当時の指導教員に確認したり、家族と連絡をとることを検討します。「親は理解がない」と連絡を拒む学生もいるので慎重を期す必要もありますが、緊急度を優先すべきです。「死にたい」「大学をやめたい」「自分の存在が皆に迷惑をかけている」といった発言が繰り返されるような場合は、特に注意が必要です。
研究や論文に行き詰る学生の中には、計画を立てて物事を進めるのが苦手とか、ゴールや答えのはっきりしない問題にどう手を付けていいかわからない、優先順位が決められず、論点が広がってしまうなど、発達障害の傾向・特性を持っている可能性があることも、頭の片隅に置いておく必要があります。